〈Case6〉相談者プロフィール:ショウさん(仮名)
- 年齢:30歳
- 現在:オーストラリアのワイナリーで就労中。数か月後にビザが切れるので、帰国が迫っている
- 家族:独身
- 経歴:大学卒業後、食品メーカーに勤務。その後退職し、オーストラリアへワーキングホリデー
- 現地での経験:ワイナリーでの収穫作業、醸造補助、セラードアでの接客、イベント補助
- 好きなワイン:ヤラ・ヴァレーのピノ・ノワール、クレア・ヴァレーのリースリング
- 悩み:現地で出会ったワインの世界に魅力を感じ、日本でもワインに関わる仕事を続けたいと考えている
ワーキングホリデーで出会った、ワインのある暮らし
大学卒業後、食品メーカーで数年間働いていたショウさんは、二十代後半でオーストラリアへ渡りました。
最初は「一度、海外で暮らしてみたい」ぐらいの軽い気持ちでした。
英語にも自信はなく、ワインについても、好きではあっても詳しいわけではありませんでした。
転機になったのは、偶然見つけたワイナリーの求人です。
収穫の季節には、朝早くから畑に出てブドウを摘み、午後には醸造所の作業を手伝う。
休日には、同僚や近所の人たちとバーベキューを囲みながら、その土地のワインを楽しむ――。
そんな暮らしを続けるうちに、ショウさんは次第に、ワインそのものだけでなく、生産者の思いや土地の文化にも強く惹かれていきました。
その後、セラードアでの接客やイベントの手伝いを経験し、日本から訪れる観光客にワインを紹介する機会も増えていきます。
日本に帰ったら、何をしよう?
しかし、ワーキングホリデーには期限があります。
帰国を数か月後に控えたある日、ショウさんはふと考えました。
ショウさん日本に戻ったら、仕事どうしよう・・・
日本でもワインの仕事をできないかな。
お世話になっているワイナリーのオーナーに、『お前が日本でうちのワインを売ってくれよ』と冗談めかして言われたことも心のどこか引っかかっています。



いつか、このワインを日本でも広められたら・・・
でも、ワインの仕事って、具体的に何をすればいいんだろう。
とはいえ、いきなり自分でワインを輸入して販売するというのは、想像もつきません。
ワインの仕事に興味はある。でも、自分が本当にやりたいことは何なのか、まだはっきりとは見えていません。
ショウさんの悩み
- ワインの仕事といっても、自分は何をしたいんだろう?
- オーストラリアで学んだことを、日本で生かす方法はあるのだろうか?
- いつか、自分がオーストラリアで見つけたワインを輸入・販売できるようになりたい



そもそも、自分のような者でも、ワインをビジネスにするための「酒販免許」って取れるんでしょうか?



酒販免許の申請では、税務署は、申請者が酒類販売業を適正に行えるかどうかを、4つの要件に沿って審査します。
これらの要件をクリアできれば、経験が日本での経験か海外での経験かを問わず、また年齢が若くても、免許を取得することは可能です。
ここからは、ショウさんと一緒に確認してみましょう
ここで、審査の基準となる4つの要件を簡単にご紹介します。
- 人的要件
過去に酒類販売業の免許を取り消されたことがないか、一定の犯罪歴がないかなど、申請者自身に欠格事由がないかを確認するものです。 - 場所的要件
販売場所が、酒類販売に適した場所であるかを確認するものです。 - 経営基礎要件
ビジネスを始めて続けていける「資金力(財務)」があるか、お酒のビジネスを安定して続けていける「経験」があるかなど、経営の基礎がしっかりしているかを確認するものです。 - 需給調整要件
販売しようとする酒類の種類や免許の区分に応じて、一定の基準を満たしているかを確認するものです。
※ 各要件の詳しい内容は、タイトルのリンク先でご確認いただけます。
若くして免許取得を考える場合は、4つの要件の中でも、経営基礎要件がネックになる場合があります。
ここでは、ビジネスを始めて続けていける「資金力(財務)」があるかと、販売や経営など、お酒のビジネスを安定して続けていける「経験」があるかが審査されます。
海外のワイナリー経験は、酒販免許で評価される?



ワーホリ中、海外ワイナリーで働いていたことは、「経験」に評価されますか?



ただワイナリーで働いていただけでは、難しいかもしれません。そこで何をしていたかを具体的に説明できることが大切です。
酒販免許の審査では、単に「ワインに詳しい」「海外で働いたことがある」というだけでは、経営基礎要件を満たすとは限りません。
税務署が確認するのは、申請者が酒類販売業を適正に運営できる知識や経験を備えているかどうかです。
例えば、ワイナリーでの収穫作業や醸造補助の経験は、ワインへの理解を深めるうえでは大きな財産です。
しかし、それだけでは、酒類販売業の経験として直接評価されにくい場合もあります。
一方で、
- セラードアでワインの接客販売をしていた
- イベント運営や試飲会の準備に携わっていた
- 在庫管理や商品説明を担当していた
- 日本からの観光客や取引先とのやり取りをしていた
といった経験は、酒類販売業との関連性を説明しやすいでしょう。
もっとも、経営基礎要件は、これまでの職歴だけで判断されるものではありません。
酒類販売管理研修の受講状況や、今後どのような事業を行いたいのかという事業計画、販売場所や資金計画なども含めて、総合的に判断されます。



なるほど!
それならば、「経験」として書けることはたくさんありそうです。
ただ、「資金力」はちょっと心配かも・・・💦
帰国後は、何をしたらいい?
では、将来、オーストラリアからワインを輸入・販売したいショウさんは、帰国後、どのような道を選ぶのがよいのでしょうか。
もちろん、いきなり独立して輸入販売を始めることも不可能ではありません。しかし、資金的に不安があるのであれば、まず日本のワイン業界で経験を積むのも近道の一つです。
例えば、次のような選択肢があります。
インポーターで働く
海外のワイナリーで働いた経験や英語力を生かし、輸入会社に就職する方法です。
輸入実務や流通の仕組み、価格設定、営業などを学ぶことができ、将来自分で事業を始める際にも役立ちます。
場合によっては、その就職先のインポーターで、自分の見つけたワインを輸入する道も開かれるかもしれません。
ワインショップやレストランで働く
ワインショップや飲食店で、品出しや在庫管理、発注、接客や販売など、幅広い実務経験を積む道もあります。
現地で身につけた知識をお客様に伝えながら、日本の消費者がどのようなワインを求めているのかを知ることができます。こうした経歴は、酒販免許の申請時の「経営基礎要件」として評価されます。
なお、将来的に自分でワインを輸入・販売しようと考えている場合は、それが酒類販売業者向けの卸売なのか、一般消費者や飲食店向けの小売なのかによって、必要となる免許の区分が変わってきます。
ここで積んだ在庫管理や発注の実務は、そのどちらを目指すにしても役立つはずですが、実際にどちらの形態で進めるかは、また改めて考えるタイミングが来るかもしれません。
ワインの資格を取得する
ソムリエやワインエキスパート、WSETなどのワイン資格を取得することは、酒販免許の申請時の「経営基礎要件」を補足的に説明してくれるだけでなく、実際のワインビジネスの現場で役立ちます。帰国後、直接ワインに関わらない仕事に従事する場合は、こうした資格の勉強から始めてみてはどうでしょう。
体系的知識があると、いずれワイン説明資料を作成したり、生産者の通訳や商談サポートをしたりする際に自信をもって対応することができます。
まとめ:海外経験を、日本での仕事につなげるために
海外のワイナリーで働いた経験は、ワインビジネスを目指すうえでは大きな強みです。
ただし、「ワインが好きなこと」と、「酒類販売業を適正に運営できること」は、必ずしも同じではありません。
大切なのは、現地での経験を踏まえて、日本でさらに知識や実務経験を積み重ねていくこと。
いつか自分の手でワインを輸入し、日本の人たちにその魅力を伝えたい――。
そんな夢に向かって、今できる準備を一つずつ進めていくことが、将来のワインビジネスへの第一歩になるはずです。
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