〈Case13〉相談者プロフィール:リョウさん(仮名)
- 年齢:45歳
- 職業:大手書店チェーン 店舗開発部
- 仕事内容:新しい店舗づくりや複合型店舗の企画・開発
- 趣味:読書、美術館巡り、旅行
- このところの課題:リアル書店だからこそ提供できる新しい価値を考えている
本屋は「本を買う場所」のままでいいのだろうか?
「本を買う人が減っている。」
そんな言葉を耳にすることがあります。
でも、店舗開発部で新しい店づくりを考えるリョウさんは、少し違う感覚を抱いていました。
リョウさん本が必要なくなったわけじゃない。
本がどこでも買える時代になったからこそ、本屋へ行く理由が少し変わってきているんだ。
文具や雑貨、カフェの併設。
近年の書店は、本が並ぶだけの場所ではなくなってきました。
それでも、新しい店づくりを考えるたびに、こんな思いが頭をよぎります。



リアル書店だからこそ、できることって何だろう。
仕事帰りに、ふと立ち寄りたくなる場所にできないだろうか。
ニューヨークで見つけた、一軒の本屋
そんな思いを抱えていたある年。
休暇で訪れたニューヨークの街角で、小さな書店が目に留まりました。
中へ入ると、
- 本棚の間で静かにページをめくる人
- グラスワインを片手に友人と語り合う人
- 仕事帰りに立ち寄り、じっくりと一冊を選んでいる人
そこには、本を「買う」だけではない、豊かな時間が流れていました。



そうか、ここは本だけを売っているんじゃない。
“本のある時間”を提供しているんだ!
海外では、本屋とワインバーを組み合わせた「Books & Wine」というスタイルの店舗が少しずつ増えています。
本もワインも、それ自体が主役というより、「長く過ごしたくなる空間」をつくるための要素です。
その結果、お客様の滞在時間が長くなり、本や雑貨との新しい出会いも生まれています。
「本を売る場所」から、「過ごしたくなる場所」へ。
リョウさんは、日本でもこのアイデアを実現できないかと考え始めました。
「仕事帰りに寄りたくなる本屋」を目指して
帰国後。
店舗開発部の企画会議で、リョウさんは一枚のスライドを映しました。



今日は、新しい店舗企画の提案があります。
海外では、ワインを取り入れる本屋が少しずつ増えています。
その目的は、本と一緒にワインを販売することではありません。
本屋で過ごす時間そのものの価値を高めるためです。
すると、若手社員が手を挙げました。
「でも、日本で本屋とワインって結びつくんでしょうか?」



私も最初はそう思いました。
でも、仕事帰りに30分だけ立ち寄って、一冊の本を選びながらグラスワインを一杯楽しむ。
そんな時間って、意外と求められている気がしませんか?
別の社員も次々に口を開きます。
「そういえば最近、ワインを楽しみながらアートを体験できるスタジオが人気ですよね。」
「その時々の作品のテーマに合わせてワインが選ばれていて、ワインがその時間全体を演出しているんです。」
「文学をテーマにしたトークイベントで、ワインを楽しむ企画もあるそうですよ。」
「確かに……。ワインバーに入るのは少し構えるけど、ワインも飲める本屋なら入ってみたいかも。」
「ワイン片手に『本のある時間』を楽しむ場所……。なんか良さそうな気がします。」



そう考えると、本屋でも同じことができるかもしれない。



例えば、フランス文学フェアならフランスワイン、美術書や歴史書、ミステリーの特集なら、それぞれその世界観をイメージしたワインを提案する。
本を売るだけではなく、本の世界を体験できる空間をつくることができそうだ!
部長
「なるほど。ワインを売ることが目的じゃない。本屋で過ごす時間をデザインする、そのための一つの演出としてワインを取り入れるということか。」
「まずは一店舗、モデル店舗でやってみるか。」
「ただ、実際にお酒を扱うなら制度の確認が必要だな。レイアウトや許認可のこともある。一度専門家に相談してみよう。」
企画が動き出し、具体的な制度について専門家に相談することになりました。
ここからは、リョウさんと一緒に考えてみましょう



アイデアとしては、制度面を整理しながら実現方法を検討できそうですね。
ただ、店内でワインを飲んでもらうだけなのか、未開封のボトルも持ち帰り用に販売するのかで、確認すべき制度が変わります。
確認ポイント
- カフェスペース等で、ワインを店内で飲用に供する
酒類販売業免許とは別に、飲食店営業許可の要否など、飲食店としての取扱いを所轄の保健所に確認します。 - 店内で未開封のボトルワインを持ち帰り用に販売する
一般酒類小売業免許が必要になります。 - ECサイトなどを利用して、2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象に販売する
通信販売酒類小売業免許を検討します。
※ 通信販売で扱える酒類には一定の条件があります。
ポイントは、「本屋だから」「カフェだから」という業種ではありません。
ワインをどのような形で提供し、どのような相手を対象に販売するのか。
企画内容に応じて、その実現方法を制度面から整理しておくことが大切です。
まとめ:”本のある時間” は、リアル書店だからこそ生まれる
書店は、「本を買う場所」から「時間を過ごす場所」へ。
映画館が「映画を見る場所」から「その場でしか味わえない臨場感や没入感」を提供する場所へと変わっていったように、書店もまた、リアルだからこそ生み出せる価値が求められる時代になっているのかもしれません。
その時間をもう少し豊かにするものの一つとして、ワインがある。
今後は、そんな店舗が日本でも少しずつ増えていくのかもしれません。
そして、新しいアイデアを形にするときこそ、制度を正しく理解しておくことが、その企画を安心して実現する第一歩になります。
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