【Case12】「ここでワインも買えたらいいのに」―洋菓子店でワインは販売できる?

洋菓子店でワインも販売している様子
目次

〈Case12〉相談者プロフィール:アヤさん(仮名)

  • 年齢:46歳
  • 職業:洋菓子店オーナー(接客・販売担当)
  • 家族:夫(パティシエ)と二人で店を経営
  • 開業:14年
  • 店舗:住宅街にある小さな洋菓子店
  • 人気商品:季節のケーキ、焼き菓子、チーズケーキ、塩味のチーズサブレ
  • ご主人:フランスで修業経験があり、夫婦ともにワイン好き
  • 相談:お客様から「ワインも一緒に買えたらいいのに」と言われることが増えてきた

「ここでワインも買えたらいいのに。」

土曜日の午後。店内には、焼きたてのフィナンシェとバターの甘い香りが漂っています。

常連のお客様が焼き菓子を選びながら話しかけてきました。

お客様
「今日は友人のお宅でホームパーティーなんです。」

アヤさん

それでしたら、このチーズサブレもおすすめですよ。


お客様
「これ、ワインに合いそうですね。」

アヤさん

はい。もともとワイン好きの主人がお酒と一緒に楽しめるように作った焼き菓子なんです。

だから甘いものをあまり召し上がらない方への手土産にも喜ばれています。

お客様は嬉しそうに笑って言いました。

お客様
「だったら、ここでワインも一緒に買えたらいいのに!」
「友人がワイン好きだからワインも一緒に持っていきたいけど、正直、どのワインを買ったらいいのか分からないんですよね……」

その言葉は、アヤさんの心に強く残りました。

実は、同じようなことを言われたのは一度や二度ではありません。

手土産、ホームパーティー、誕生日のお祝い、クリスマス――。

店内のPOPに「ワインにぴったり!」と書いていることもあり、

「この焼き菓子にはどんなワインを合わせたらいいですか?」
「この近所には、ワインショップないですよね……」

そんな声を聞くたびに、アヤさんの脳裏にはこんな思いが巡ります。

アヤさん

主人はフランスで修業していたから、ワインに合うお菓子を作るのが得意。

アヤさん

私たち自身もワインが好きだから、おすすめしたいワインはたくさんある。

アヤさん

でも、洋菓子店でワインなんて販売できるのかな……?

休業日の夜。
店から持ち帰った焼き菓子とワインを楽しみながら、アヤさんは夫に話してみました。

「まぁ、洋菓子店でワイン売るなんてあまり聞いたことないけどね」とアヤさん。

「いや、でもフランスでは、ワインと焼き菓子は結構身近な感じだったよ。」
「うちの焼き菓子に合うワインを一緒に選んであげられたら、お客さんも絶対喜ぶと思うけどな」
「店の差別化って意味でも、一回考えてみてもいいんじゃない?」とご主人。

アヤさん「でもお酒を売るとなると、酒販免許が必要でしょ?洋菓子店じゃ取るの難しいんじゃない?」

気になったアヤさんは行政書士に相談してみることにしました。

ここからは、アヤさんと一緒に確認してみましょう

🍷行政書士

結論からお伝えすると、酒販免許取れますよ。 洋菓子店だから取得できない、ということはありません。

店頭でボトルワインを販売するのであれば「一般酒類小売業免許」の取得を検討することになります。

アヤさん

業種が違うから難しいのかと思っていました。

🍷行政書士

酒類販売業免許は、洋菓子店だから取得できないというものではありません。販売する場所や資金面、酒類販売を継続して行うための体制など、酒販免許の要件を満たしているかを確認していくことになります。

今のお店でワインを販売するのであれば、洋菓子の販売とあわせて、酒類を適切に管理できるようにしておくことが大切です。

🍷行政書士

ワインを置く棚は、店舗の一角でも構いません。
酒類とそれ以外の商品が分かるように陳列し、仕入れや在庫、売上なども適切に管理できるようにしておきましょう。

アヤさん

だったら、焼き菓子とワインを一緒に提案してもいいんですね?

🍷行政書士

もちろんです
お菓子とワインを一緒に箱へ詰めて、ギフトセットとして販売するのも面白いかもしれませんね。

アヤさんの頭に、さっそくいくつかの組み合わせが浮かびました。

アヤさん

うちのチーズサブレなら、キリっとした辛口の白ワインが合います。
黒コショウのサブレなら、スパイシーな赤にあわせても良いかも🍷
どちらも人気の焼き菓子なんです。

アヤさん

あとは、
・レアチーズケーキと爽やかな白ワイン
・ガトーショコラと深みのある赤ワイン
・イチゴのタルトとスパークリングワイン
とか・・・

🍷行政書士

ステキですね!
実際に焼き菓子を作って販売しているお店だからこそ、「このお菓子にはこのワイン」という提案ができます。
それは、実際に焼き菓子を作って販売しているお店ならではの、大きな魅力になりますよ。

アヤさん

でも、店に置くワインの本数はそんなに多くなくても大丈夫でしょうか……?

🍷行政書士

はい、全く問題ありません。

酒販免許に、「最低○本以上販売しなければならない」というような販売数量の下限があるわけではありません。

ですから、洋菓子店だからといって、最初からたくさんのワインを取り揃える必要はありませんよ。

ワインは”主役”でなくてもいい

洋菓子店に来るお客様が、ワイン「だけ」を目当てに来店することは少ないかもしれません。

でも、

「このチーズケーキには、この白ワインも合いますよ。」

そんな一言で、お客様のテーブルの風景はぐっと華やかになります。

  • ホームパーティーの手土産
  • 誕生日のお祝い
  • 家族で過ごす少し特別な夜

ワインは、お菓子を引き立て、お客様の特別な時間をより豊かにしてくれるパートナーになってくれます。

まとめ:その店ならではの提案が、新しい魅力になる

今回のアヤさんのケースでは、「ワインを売って売上を増やしたい」というより、「お客様にもっと楽しんでもらいたい」という想いが出発点でした。

ワイン自体は、今やスーパーやコンビニでも手軽に買える時代です。

だからこそ、

「このケーキには、このワインを。」
「この焼き菓子には、このワインを。」

という、そのお店だからできる、ストーリーある提案に価値が生まれます。

酒販免許は、単にお酒を売るためのものではありません。

お店のこだわりを深め、お客様との新しいつながりを生み出すための「きっかけ」であり、今あるお店の魅力を、もう一歩広げるための選択肢の一つなのです。

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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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