〈Case2〉相談者プロフィール:タカシさん(仮名)
- 年齢:46歳
- 職業:イタリアンレストラン経営(オーナーシェフ)
- 開業年数:8年
- 店舗:住宅街にある20席ほどの小さなレストラン
- 得意分野:イタリア各地の郷土料理とワインの提案
- 現在の仕入れ先:取引のある酒販店やワインインポーター
- 悩み: 常連客から「家でも飲みたい」と言われることが増え、店の新しい収益の柱としてワイン販売を検討している
- 将来の夢:今の店でワインの持ち帰り販売をできるようにしたい。再びイタリアを旅して、料理やワインのインスピレーションを得たい
飲食店でワインを販売できる?
住宅街で小さなイタリアンレストランを営むタカシさん。
料理とワインの相性を大切にしてきたこともあり、常連のお客様から、こんなことを聞かれるようになりました。
「このワイン、おいしいですね。家でも飲みたいので、一本買って帰れませんか?」
タカシさんは、飲食店の営業許可があり、日頃からワインを提供しているため、持ち帰り用の販売もできるのではないかと考えました。
幸い、店の入口近くには、ワインを数本並べられそうなスペースもあります。
タカシさん店で出しているワインを、お客様に一本販売するくらいなら、今の許可でもできますよね?



店内で飲んでもらうために提供する場合と、自宅など店外で飲むために持ち帰り販売する場合では、酒販免許の要否が異なります。
ここからは、タカシさんと一緒に確認してみましょう
① 飲食店の営業許可があれば販売できる?
飲食店では、料理と一緒にビールやワインなどのお酒を提供できます。ただし、これは基本的に、店内で飲食してもらうための提供です。
一方、お客様が自宅など店外で飲むためのワインを持ち帰り用として販売する場合は、「酒類の小売販売」に当たります。
そのため、飲食店の営業許可とは別に、原則として酒類小売業免許が必要です。



同じワインなのに、店内でボトル提供するのと、持ち帰り販売するのは違うのですか?



はい。飲食店の営業場内で飲んでもらうために提供する場合と、お客様が自宅など店外で飲むために販売する場合では、酒税法上の扱いが異なります。
飲食店が酒販を兼業すると、一つの事業者が「飲食店」と「酒類小売業者」という二つの立場を持つことになります。
そのため、販売スペースだけでなく、飲食用と販売用の酒類について、仕入れや在庫なども区分して管理する必要があります。
あわせて読みたい


② 飲食店でも酒販免許を取れる?



入口の横にワイン棚を置いて、そこで販売したいと思っています。



その場合は、販売場所や在庫の管理方法を整理しておくとよいでしょう。
飲食店を経営しながら、同じ店舗で酒販免許を取得することは不可能ではありません。
ただし、
- 店のどこを販売場とするのか
- 販売用のワインの保管場所は
- 飲食用の在庫とどのように区分するのか
といった点を整理しておく必要があります。
単にワイン棚を置けばよいというわけではなく、店舗内の配置や営業形態に応じて、販売方法を具体的に説明できるようにしておく必要があります。
飲食店と酒販店を同じ店舗で運営する場合の具体的な区分方法については、店舗の構造や運営方法によって個別に確認が必要になることがあります。
あわせて読みたい


③ 今の仕入先から、そのまま仕入れられる?
現在、飲食店で提供するために仕入れているワインを、酒販免許取得後もそのまま販売用の商品として仕入れられるとは限りません。
飲食店で提供する酒類は、これまでどおり酒類小売業者から仕入れることができます。
一方、一般酒類小売業免許を取得して、お客様に持ち帰り販売するための酒類は、原則として酒類卸売業免許を持つ事業者から仕入れる必要があります。
そのため、現在の取引先が飲食店向けにはワインを販売できても、酒販店向けの卸売には対応できない場合があります。



今まで仕入れてきたワインを、そのまま店頭で販売するつもりでした。



それができるとは限らないんです。
まずは現在の仕入先に、持ち帰り販売を始める予定であることを伝えて、販売用のワインも仕入れられるか確認してみましょう。



なるほど。今の取引先に確認してみます。
④ 飲食店だからこそできるワインの提案
飲食店の強みは、実際に料理と一緒にワインを味わってもらえることです。
お客様が店で飲んで気に入ったワインを、販売できるのは、飲食店ならではの強みです。



料理に合わせて提案したワインを気に入ってもらえると、嬉しいですね。それを買って帰ってもらえるなら、もっとワイン提案にも力入れていきたいです。



お店で食事と一緒に味わって、納得して買ってもらえる。
お客様も安心して買えますからね。
それは通販や酒販店には真似できない、飲食店ならではの強みですね。
まとめ:飲食店の営業許可と、酒類の販売は別のもの
飲食店でワインの持ち帰り販売を始めることは、不可能ではありません。
ただし、
- 店外で飲むためのワインを持ち帰り販売するには、酒類小売業免許が必要になること
- 現在の仕入先から販売用の商品を仕入れられるか確認すること
- 販売場所や在庫の管理方法を整理すること
- 飲食用と販売用の酒類を区分して管理できるようにすること
など、ワインを販売するには、事前に準備が必要です。
こうした準備を一つずつクリアしていけば、タカシさんの「お店でワインの持ち帰り販売をしたい」という願いも、現実的な計画として動き出します。
ワインの販売という新しい柱ができれば、売り上げの面でも、そしていつか実現したいイタリアへの旅にも、きっと近づいていくはずです。
あわせて読みたい


ワインを仕事にしたい人たち
会社員、飲食店、子育て世代、定年後─それぞれの立場から、ワインビジネスを考えるケース集です。
- 【Case1】会社員のまま副業でワイン販売はできる?―30代ユウキさんの場合
- 【Case2】飲食店でワインを持ち帰り販売できる?―オーナーシェフ、タカシさんの場合
- 【Case3】子育てをしながら、もう一度ワインを仕事にしたい―元ソムリエ、ミカさんの場合
- 【Case4】定年後に小さなワインショップを開きたい―57歳ケンジさんの場合
- 【Case5】デリバリーでワインも届けられる?―夫婦でビストロ経営のマリさんの場合
- 【Case6】ワーホリで出会ったワインを、日本で紹介したい―30歳ショウさんの場合
- 【Case7】花屋でワインを売ることはできる?―32歳ユキさんの場合
- 【Case8】故郷のワインを、パンと一緒に届けたい―48歳マルコさんの場合
- 【Case9】酒販免許は必要?―ガラス工芸作家が手掛ける「世界で一つのワインギフト」
- 【Case10】OEMでオリジナル缶ワインを作りたい―47歳タクミさんの場合
- 【Case11・前編】越境ECで日本ワインを海外へ―通信販売酒類小売業免許でできる?
- 【Case11・後編】個人向けなのに「輸出酒類卸売業免許」?―輸入との違いと越境ECの注意点
- 【Case12】「ここでワインも買えたらいいのに」―洋菓子店でワインは販売できる?
- 【Case13】本屋でワインは売れる?―「本を買う場所」から「過ごす場所」へ
- 【Case14】インポーターから独立して自分のワインビジネスを―酒販免許は何が必要?
酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。
当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。
\まずはお気軽にお問合せください/








