〈Case3〉相談者プロフィール:ミカさん(仮名)
- 年齢:38歳
- 家族:会社員の夫と、5歳・3歳の子どもの4人暮らし
- 職歴:20代の頃は、都内のフレンチレストランでソムリエとして勤務
- 現在:平日の昼間に短時間のパート勤務
- 性格:明るく人と話すことが好き
- 趣味:料理、ホームパーティー、SNS
- 好きなワイン:南仏のロゼ、シャンパーニュ
「ワインの仕事は、もうできないと思っていました」
ミカさん昔はレストランでソムリエをしていたんです。
ミカさんは、少し照れくさそうに笑います。
20代の頃、都内のフレンチレストランで働いていたミカさんにとって、ワインは単なる趣味ではありませんでした。
料理との相性を考え、お客様の好みを聞きながら一本を提案する。仕事の合間や休日には、あちこちのプロ向け試飲会へ出向き、仕入れと勉強を兼ねたテイスティングを重ねていました。
忙しい毎日でしたが、好きな仕事でした。
しかし、結婚、出産を機に生活は大きく変わります。
夜遅くまで働くレストランの仕事と子育てを両立することは難しく、退職を決意。
現在は、子どもたちを保育園に預け、平日の昼間だけパートとして働いています。
ただ、忙しい毎日の中で、ワインから完全に離れたわけではありません。
SNSで流れてくるワインの投稿を眺めたり、子どもたちが寝静まった後、夫と一緒にお気に入りのワインを開けたりする時間は、今でも大切なひとときです。
小さなワイン会から始まった新しい夢
数年前、近所のママ友に頼まれて、自宅で小さなワイン会を開きました。
- 家庭料理とのペアリング
- 白ブドウ5品種の飲み比べ
- スパークリングワインの違い
そんなテーマを決めて開催した会は思いのほか好評で、友人の紹介や口コミを通じて、少しずつ参加者が増えていきました。
今では、2~3か月に一度、自宅で小さなワイン会を開いています。
参加者の多くは同世代の女性たちです。
「ワインって難しそうだと思っていたけれど、楽しかった」
「今度、家族の誕生日におすすめの一本を選んでほしい」
そんな声を聞くたびに、ミカさんの中で、昔の気持ちが少しずつよみがえってきました。
「販売できたらいいのに」
ある日、ワイン会の帰り際、参加者の一人から尋ねられました。
「今日のワイン、とてもおいしかった。買うことはできないの?」
その言葉を聞いて、ミカさんはふと考えます。



もし自分で販売できたら、もっと喜んでもらえるし、私もまたワインを仕事にできるかも・・・
もちろん、子どもはまだ小さく、今すぐ店舗を開くつもりはありません。
けれど、かつてソムリエとして働いていた経験を、今の暮らしの中で生かせる方法があるのではないか――。
そんな思いから、酒販免許について調べ始めました。
ワインの仕事するにはどうしたらいい?
ミカさんの疑問
- ワイン会で紹介したワインを販売するには、どんな手続きが必要?
- ソムリエとして働いていた経験は生かせる?
- 子育てをしながら、小さく始めることはできる?
- いずれ、自分のワインショップを持つことはできる?



ワイン会に来てくれた方から、「このワインを買いたい」と言われることが増えてきたんです。
自分で仕入れて販売するには、やはり免許が必要ですよね?



はい。参加者に持ち帰り用のワインを継続して販売するのであれば、酒類販売業免許が必要です。
まずは、現在のワイン会運営と、これから始めたい販売を分けて整理してみましょう。



今すぐ、ちゃんとしたお店を持つのは難しいですが、今の生活に無理のない形でワイン販売を始められたらと思っています。



いいと思います。
これまでの経験を生かして、今できることから考えてみましょう。
ここからは、ミカさんと一緒に確認してみましょう
「昔の経験を生かして、もう一度ワインを仕事にしたい。」
ミカさんの場合、まったく経験のないところから始めるわけではありません。
ワインの知識も、接客経験も、人に楽しんでもらうための企画力もあります。
一方で、自分でワインを仕入れて販売するとなれば、ソムリエ時代とは違う準備も必要です。
ここからは、ミカさんが今の暮らしの中で、新しい一歩を踏み出すために確認しておきたいポイントを見ていきましょう。
① ワイン会とワインの販売は、分けて整理する
まず確認しておきたいのは、ワイン会を開くことと、持ち帰り用のワインを販売することは、分けて考える必要があるという点です。
ワイン会の参加者から、
「今日飲んだワインを家でも楽しみたい」
「家族へのプレゼント用に選んでほしい」
と頼まれ、ボトルの代金を受け取って継続的に販売するのであれば、酒類販売業免許が必要になります。
また、現在行っている会費制のワイン会についても、会の内容や会費の設定、開催方法などを一度整理しておくと安心です。



ワイン会の延長でそのまま販売するのではなく、販売事業としてきちんと分けて考えるということですね。



そうです。
これまでの活動を生かしながらも、どうやって販売するかを整理しておくことが、最初の一歩です。
② 届け方によって、必要な免許は変わる
ミカさんのワイン会は、これまで口コミで少しずつ広がってきました。
今は近所のママ友が中心ですが、SNSでの発信をきっかけに、遠方の知人から「送ってほしい」と頼まれる場面も今後は出てくるかもしれません。
こうしたとき、免許の種類は届け方によって変わります。
- 参加者に、自宅や会場で直接手渡す形で販売する場合
→ 一般酒類小売業免許 - ECサイト等で販売し、2つ以上の都道府県にまたがって、郵送や宅配で届ける場合
→ 通信販売酒類小売業免許(取り扱えるワインの種類にも一定の条件があります)
今はママ友中心の対面販売でも、活動の広がり方次第で、必要な免許が変わってくることがあります。
最初にどちらの形を軸にするかを決めておくと、後々の手続きがスムーズです。
③ ソムリエ経験は、ミカさんならではの強み
ミカさんには、フレンチレストランでソムリエとして働いてきた経験があります。
相手の好みを聞き、その人に合う一本を提案すること。難しくなりがちなワインの話を、料理や日常の場面に置き換えて伝えること。
こうした力は、ワインを販売するうえでも大きな強みになります。
ワイン会が口コミで広がってきたのも、単に知識があるからではなく、参加者が楽しめるテーマを考え、親しみやすく伝えることができたからでしょう。
一方で、自分で販売を始めるとなれば、仕入先の確保、販売価格の設定、在庫や代金の管理など、これまでとは違う仕事も加わります。
ソムリエとしての経験を土台にしながら、「選んで伝える仕事」から「仕入れて販売する仕事」へ、少しずつ準備の範囲を広げていく必要があります。
④ 今の暮らしに合う形から始める
ミカさんが目指しているのは、すぐに店舗を構え、毎日営業するワインショップではありません。
子どもたちとの生活を大切にしながら、自分の経験をもう一度仕事につなげていくことです。
例えば、最初はワイン会の参加者を中心に、予約を受けた商品を決めた日に引き渡す。少量から仕入れ、無理に多くの在庫を抱えない。
そのような始め方であれば、今の生活とのバランスを見ながら、少しずつ事業を育てていくこともできます。
子どもの成長とともに使える時間が増えれば、取扱商品を広げたり、ワイン会の回数を増やしたり、その先に小さな実店舗を考えたりすることもできるでしょう。
最初から将来の完成形を実現する必要はありません。
今できる規模から始め、その時々の暮らしに合わせて形を変えていくことも、一つの事業のつくり方です。



なお、自宅を販売場とする場合は、分譲マンションであれば管理規約、賃貸であれば契約上の使用目的の確認もあわせて必要です。
免許の審査でも、販売場として問題なく使えるかどうかが確認されます。
まとめ:好きだった仕事を、今の自分らしい形で
結婚や出産をきっかけに、一度は離れた仕事。
けれど、それまで積み重ねてきた経験や知識がなくなるわけではありません。
大切なのは、以前と同じ働き方に戻ることではなく、今の暮らしや家族との時間を大切にしながら、自分らしい形でその経験を生かしていくことなのかもしれません。
ミカさんにとっての夢は、いきなり大きなお店を開くことではありません。
まずは、自分が本当に好きだと思えるワインを、必要としてくれる人に少しずつ届けられるようになること。
そして、子どもたちがもう少し大きくなった頃には、地域の人がふらりと立ち寄れる、小さなワインショップを持つことです。
ワイン好きの人はもちろん、これまでワインにあまり親しみのなかった人でも、気軽に相談できるような場所。
ミカさんの夢は、今の自分だからできる、新しいワインの仕事をつくることなのです。
関連記事


ワインを仕事にしたい人たち
会社員、飲食店、子育て世代、定年後─それぞれの立場から、ワインビジネスを考えるケース集です。
- 【Case1】会社員のまま副業でワイン販売はできる?―30代ユウキさんの場合
- 【Case2】飲食店でワインを持ち帰り販売できる?―オーナーシェフ、タカシさんの場合
- 【Case3】子育てをしながら、もう一度ワインを仕事にしたい―元ソムリエ、ミカさんの場合
- 【Case4】定年後に小さなワインショップを開きたい―57歳ケンジさんの場合
- 【Case5】デリバリーでワインも届けられる?―夫婦でビストロ経営のマリさんの場合
- 【Case6】ワーホリで出会ったワインを、日本で紹介したい―30歳ショウさんの場合
- 【Case7】花屋でワインを売ることはできる?―32歳ユキさんの場合
- 【Case8】故郷のワインを、パンと一緒に届けたい―48歳マルコさんの場合
- 【Case9】酒販免許は必要?―ガラス工芸作家が手掛ける「世界で一つのワインギフト」
- 【Case10】OEMでオリジナル缶ワインを作りたい―47歳タクミさんの場合
- 【Case11・前編】越境ECで日本ワインを海外へ―通信販売酒類小売業免許でできる?
酒類販売業免許の手続きは、公的書類の収集をはじめ、要件を満たしているかどうかの税務署との事前確認、そして申請書一式の作成など、想像以上に時間と労力がかかります。
当事務所では、ワイン業界に詳しい行政書士が自ら、お客様が本業の準備に専念できるよう、面倒な行政手続きをトータルでサポートいたします。
\まずはお気軽にお問合せください/








