【ワインショップ開業】事業計画はどう作る?―売上から必要資金まで数字で考える

開店準備中のワインショップ店内イメージ
目次

はじめに

ワインショップを開業するとき、「事業計画を作りましょう」と言われても、何から考えればよいのか迷うかもしれません。

  • 売上はいくらにする?
  • ワインは何本売る?
  • 仕入れはいくら必要?
  • 在庫はどのくらい持つ?
  • 家賃やECの運営費などの経費はいくらかかる?

最初から年間売上や利益を決めようとすると、数字だけが先に走ってしまいがちです。

そこで今回は、まず「どんなワインショップにするのか」から、売上・仕入れ・在庫・経費を順番に数字へ置き換えていく方法を考えてみます。

考え方の基本は、実店舗でもECショップでも同じです。

ただし、具体的な数字がないと分かりにくいため、途中では「自宅+EC+一人経営」の小規模なワインショップを一つのモデルケースとして試算します。

実は、このように商売の姿を数字にしていく作業は、酒類販売業免許を申請するときの事業計画にも、そのままつながっていきます。

まず、ワインショップの商売を数字にしてみる

最初に「何を・誰に・どう売るか」を考える

事業計画というと、最初に売上高を決めたくなります。

でも、その前に考えたいのが、

「何を・誰に・どのように売るのか」

です。

たとえば、

実店舗を構えて近隣のお客様に販売するのか。

自宅を販売場としてECを中心に販売するのか。


店舗とECの両方を行うのか。

扱う商品についても、日常的に楽しめる価格帯を中心にするショップと、ファインワインを中心にするショップでは、平均単価も在庫の持ち方も変わります。

まずは、自分が考えているお店の姿を具体的にすることが、事業計画のスタートです。

まだお店の形が固まっていない場合は、こちらの記事で「誰に・何を・どのように売るのか」から整理しています。

また、実店舗にするかECショップにするかで迷っている場合は、店舗形態によって必要な資金や運営方法も変わります。

販売本数から、売上を考えてみる

ここからは、実際に数字を入れてみましょう。

今回は計算例として、以前の記事「ワインショップは何本売れば食べていける?」と比較できるように、

  • 平均販売単価 3,000円
  • 月間販売数量 400本
  • 平均粗利率 35%

と仮定します。

月400本というと、多く感じるかもしれません。

でも、400本 ÷ 30日 = 約13.3本 です。

1日平均にすると、約13本。

ECショップで、仮に1回の注文で6本購入していただくとすれば、1日2件程度の注文にもう少し上乗せできれば、月400本に届く計算です。

もちろん、ショップを開設すれば自動的に毎日注文が入るわけではありません。

それでも、「月400本」という数字だけを見るのと、

「1日平均13本くらい」まで分解してみるのとでは、少し印象が変わります。

事業計画では、大きな数字だけではなく、実際のお店の一日を想像できるところまで数字を小さくしてみることも大切です。

次に「仕入れ」と粗利を考える

平均粗利率を35%と仮定すると、

120万円 × 35% = 粗利42万円

です。

したがって、売上原価は約78万円になります。

実際の仕入額は、在庫の増減や仕入れのタイミングによって売上原価と一致するとは限りませんが、月400本を継続して販売するには、それに見合う商品の仕入れが必要になることが分かります。

ここで、

販売本数 → 売上 → 仕入れ・売上原価 → 粗利

という関係が見えてきます。

実際にワインショップを始める場合、どこから仕入れるかによって、取扱商品や仕入条件も変わります。

「売る商品」とは別に、店に置いておく在庫も考える

ワインショップでは、売れた分だけその都度仕入れればよいとは限りません。

ECショップなら、サイトに掲載している商品をある程度確保しておく必要があります。

実店舗なら、棚やセラーに商品がほとんどない状態ではお店になりません。

また、高価格帯の商品、季節商品、品揃えとして置いておきたい商品など、すぐに売れるとは限らない在庫もあります。

そのため、「毎月どのくらい仕入れるか」と、

「どのくらいの商品を在庫として持っておくか」は、分けて考えておきたいところです。

たとえば、月の売上原価が約78万円のショップで、ここでは試算上、単純化して2か月分程度の商品を在庫として持つと仮定すると、150万円前後の商品が棚やセラーに置かれているイメージです。

この分は、商品が売れて代金を回収するまで、在庫として資金が固定されることになります。

在庫を増やせば品揃えは充実しますが、その分だけ先に資金が必要になります。

ワインショップでは、在庫の持ち方そのものが事業計画の一部です。

毎月かかる経費を考える

次に、粗利から差し引く経費を考えます。

自宅ECであれば、ECサイトの利用料、自宅家賃や光熱費等の事業分、決済手数料、梱包費、広告費などが考えられます。

実店舗なら、店舗家賃、水道光熱費、店舗設備の維持費なども加わります。スタッフを雇えば、人件費も必要です。

ここでは既存記事と条件をそろえ、自宅ECのモデルケースとして事業経費を月13万円と仮定します。

先ほどの粗利42万円から差し引くと、

42万円 − 13万円 = 29万円

です。

つまり、このモデルでは、

月400本 → 月商120万円 → 粗利42万円 → 事業経費13万円 → 利益29万円

という収支になります。

実店舗なら、同じ400本でも数字は変わる

ここまでの計算例は、自宅ECを前提にしています。

では、実店舗ならどうでしょう。

販売本数400本、平均単価3,000円、粗利率35%が同じなら、粗利42万円までは変わりません。

変わるのは、その後です。

店舗家賃や水道光熱費などが増えれば、42万円から差し引く経費が大きくなります。

その結果、「月400本では十分な利益が残らない」のであれば、販売本数を増やすのか、平均単価を上げるのか、粗利率を見直すのか、あるいは固定費を抑えられる物件を探すのか。

もう一度、事業計画に戻って考えます。

つまり、月400本という数字そのものに正解があるわけではありません。

自分が考えている店舗形態や商品構成、経費に当てはめて、「この計画なら成り立つか」を考えるための材料です。

利益だけでは足りない―開業に必要な資金を考える

毎月黒字でも、それだけでは開業できない

ここまでのモデルでは、月29万円の利益が見込まれました。

では、「29万円黒字になる計画だから、29万円あれば開業できる」のでしょうか。

もちろん、そうではありません。

ワインショップを始めるには、最初の商品を仕入れ、一定の在庫を用意し、必要な設備をそろえるためのお金が必要です。

つまり、「この商売を続けたら利益が出そうか」を見る収支の計画と、「その商売を始めるために、いくら必要か」を見る資金の計画は、分けて考える必要があります。

また、開業したあとについても、お金が出ていくタイミングと入ってくるタイミングは、必ずしもそろいません。

ECの場合、クレジットカード決済やモール経由の売上では、売上が発生してから実際に入金されるまでに時間がかかる場合があります。

一方で仕入れのほうは、取引を始めたばかりの時期には前払いや現金でのお支払いをお願いされることもあります。

帳簿の上では利益が出ていても、手元の資金が一時的に足りなくなることが起こりえるため、開業時に必要な資金は、最初の仕入れや設備だけでなく、このズレを埋めるための分も含めて考えておきたいところです。

こうした資金繰りは、実際の事業計画として考えておきたい事項です。

なお、酒販免許申請の「所要資金」は、後述する国税庁の様式に沿って整理します。

仕入れ・在庫・設備にいくら必要?

たとえば開業時には、商品を仕入れる資金、最初に持っておく在庫、ワインセラー、商品棚、PC、プリンター、梱包・発送用品などが必要になります。

実店舗なら、さらに店舗什器やバックヤードの設備なども必要になるでしょう。

店舗レイアウトを考える場合にも、売場だけではなく、入荷・検品、在庫保管、梱包・発送など、実際の商品がどう動くかを考えておく必要があります。

また、EC、自宅開業、実店舗など、開業スタイルごとの初期在庫や設備費については、こちらの記事で詳しく試算しています。

ここで大切なのは、単に「設備費○万円」と数字を置くことではありません。

自分が予定している商売に、本当にその設備が必要なのか。

どのくらいの商品を在庫として持つ必要があるのか。

事業の内容から逆算して考えることです。

ここまで考えた数字を、酒販免許申請につなげる

ワインを売るには、酒販免許が必要

ここまで、ワインショップそのものの事業計画として考えてきました。

そして実際にワインなどの酒類を販売するには、原則として酒類販売業免許が必要です。

酒販免許の申請というと、販売場の図面や賃貸借契約書などをそろえて税務署へ提出するイメージが強いかもしれません。

しかし、確認されるのは場所や契約関係だけではありません。

申請する事業について、

  • どのような酒類を、どのような方法で販売するのか。
  • どのくらいの売上や仕入れを見込んでいるのか。
  • 経費を差し引いて収支はどうなるのか。
  • 事業を始めるために、どのくらいの資金が必要なのか。
  • その資金をどのように準備するのか。

といったことも申請書類の中で整理します。

国税庁の申請様式には、こうした内容を記載する書類として、

「収支の見込み」

「所要資金の額及び調達方法」

があります。

申請書本体に付随する書類で、様式上はそれぞれ「次葉4」「次葉5」と呼ばれています。

一般酒類小売業免許・通信販売酒類小売業免許のいずれの申請でも用意されている書類です。

「次葉」という名前だけを見ると少し難しそうですが、考える内容は、ここまでこの記事で見てきたこととつながっています。

「収支の見込み」では、商売の採算を見る

今回のモデルケースなら、

月400本販売する

月商120万円

売上原価約78万円


粗利42万円


経費13万円


利益29万円

という流れでした。

これを年間の事業計画として整理していけば、「収支の見込み」につながります。

国税庁のチェック表でも、「収支の見込み」については、申請する販売場に照らした合理的な収支見積りになっているかが確認事項とされています。

ですから、「最後の数字だけ黒字にすればよい」という話ではありません。

  • なぜ月400本なのか。
  • なぜ平均単価3,000円なのか。
  • その販売量なら、どのくらい仕入れるのか。
  • どんな経費がかかるのか。

予定している商売と数字がつながっていることが大切です。

「所要資金」では、開業時に必要なお金を見る

一方、「所要資金の額及び調達方法」では、酒類の仕入れや在庫、設備など、事業を始めるために必要となる資金を整理します。

現行の次葉5では、年間仕入見込額から月間仕入額を算出し、在庫や最初の月の所要資金、設備、所有資金などを記載する構成になっています。

つまり、先ほど考えた、

「このお店を始めるために、最初にいくら必要なのか」

が、そのまま申請準備につながってくるわけです。

収支上は黒字でも、その事業を始めるための資金を用意できなければ、計画は実行できません。

採算と資金は、両方から考える必要があります。

酒販免許のためだけの数字にしない

酒販免許申請のために、「この欄にはいくら入れればよいのだろう」と、申請書から事業計画を考え始めることもできます。

でも本来は逆ではないでしょうか。

  • どんなお店にするのか。
  • どんな商品を、誰に、どのくらい売るのか。
  • そのためにどのくらい仕入れ、在庫を持つのか。
  • 毎月どんな経費がかかるのか。
  • そして、いくら資金を用意する必要があるのか。

まず自分の商売を考える。

その結果として出てきた数字を、酒販免許申請の書類へ落とし込んでいく。

そう考えると、免許申請のために収支計画を作ること自体が、これから始めるワインショップを一度シミュレーションする機会になります。

事業として黒字になることと、「食べていける」ことは別

今回の自宅ECモデルでは、月400本を販売すると、事業として月29万円の利益が見込まれる計算になりました。

では、「月29万円の利益が出るなら、このワインショップだけで生活できる」ということでしょうか。

これは、また別の話です。

個人で開業する場合には、この利益から税金や社会保険料、そして生活費などを負担することになります。

つまり、「事業として採算が取れること」と、「その事業だけで自分の生活を支えられること」は同じではありません。

以前の記事では、今回とほぼ同じ条件を使い、今度は反対側から、「事業経費を差し引いた後に月30万円を残すには、ワインを何本売ればよいか」を逆算しました。

今回の記事が、予定する販売量 → 事業として採算が取れるかを見るものだとすれば、

こちらの記事は、必要な収入 → そのためには何本売る必要があるかを逆算するものです。

同じワインショップでも、数字を見る方向を変えると、見え方も少し変わります。

まとめ:申請書を書く前に、まず商売を数字で動かしてみる

事業計画というと、難しい書類を作ることのように感じるかもしれません。

でも、その前に考えることは、

  • 何を売る?
  • いくらで売る?
  • 月に何本くらい売る?
  • いくら仕入れる?
  • どのくらい在庫を持つ?
  • どんな経費がかかる?
  • 開業するときにいくら必要?

という、実際の商売そのものです。

これらを一つずつ数字に置き換えてみると、

販売計画 売上 仕入れ 在庫 経費 利益 必要資金

がつながってきます。

実店舗でもECショップでも、基本的な考え方は同じです。

ただし、家賃、設備、人件費、商品の価格帯、在庫の持ち方などによって、同じ販売本数でも結果は変わります。

だからこそ、誰かの事業計画をそのまま当てはめるのではなく、自分が始めようとしているワインショップを、自分の数字に置き換えてみることが大切です。

酒販免許申請で作成する収支や資金の計画も、その延長線上にあります。

申請書を埋めるために数字を作るのではなく、これから始める商売を一度数字の上で動かしてみて、その結果を申請書類へ落とし込む。

そんな順番で考えてみると、酒販免許申請のための事業計画も、少し違って見えてくるかもしれません。


もっとワインショップ開業について知りたい方はこちら

ワインショップを開業したい方に向けて、開業準備から仕入れ、販売、集客までを順番に解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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