【ワインショップ開業】「実店舗 vs ECショップ」― メリット・デメリット徹底比較 ―

左側はワインショップの実店舗、右側はECショップ
目次

はじめに:実店舗とECショップ、どちらを選ぶ?

ワインショップの開業を考えるとき、多くの方が最初に迷うのが、
「実店舗にするか、ECショップにするか」
という選択ではないでしょうか。

実店舗とECショップでは、必要な開業資金だけでなく、集客の方法、日々の業務、お客様との関係の築き方も大きく異なります。

タイトルには「メリット・デメリット」とありますが、どちらが優れているという話ではありません。大切なのは、自分のコンセプトやライフスタイル、資金状況に合ったスタイルを選ぶことです。

この記事では、実店舗とECショップそれぞれの特徴を、ワインショップならではの視点や酒販免許の違いも交えながら比較します。

実店舗とECショップでは、何が違う?

実店舗とECショップは、単に「リアルかオンラインか」の違いではありません。集客の仕組み、必要なスキル、初期投資、日々の業務内容、そのすべてが異なります

他方、両者に共通するワインショップ特有の事情として、商品の見せ方・伝え方が売上に直結するという点があります。

ワインは、購入前に味を確かめることが難しい商品です。

しかも同じ品種・同じ産地であっても、生産者が違えば味わいは変わります。さらに同じ生産者のワインでも、その年の気象条件などによって出来栄えは大きく変わります。

そうした背景をもふまえて、「このワインはこういう味わいです」と言葉で伝えられるかどうかが、お客様の購買判断を左右します。だからこそ「どう伝えるか」がどちらの形態においても勝負の分かれ目になるのです。

実店舗を構える場合

実店舗のメリット

① お客様と直接コミュニケーションができる

ワインショップの醍醐味のひとつは、お客様との会話です。「今日はどんな料理に合わせたいですか?」「予算はどのくらいですか?」といったやり取りを通じて、お客様一人ひとりに合ったワインを提案できるのは、実店舗ならではの強みです。

こうした体験の積み重ねがリピーターを生み、口コミにつながります。

② 幅広い種類の酒類を取り扱える

実店舗での販売に必要となる一般酒類小売業免許では、通信販売酒類小売業免許のような3,000キロリットル基準による制限はなく、国産ワインを含む幅広い酒類を販売できます。

大手メーカーのワインや日本酒、ウイスキーなど、幅広い商品を品揃えできることは、一般酒類小売業免許による店頭販売の大きな利点です

③ ワインを「体験」として売ることができる

店内の空間、ワインセラーの佇まい、グラスに注がれたときの色合い。実店舗は、ワインという商品をただ販売するだけでなく、文化や体験として届ける場所になります。

テイスティングイベントや産地別のワイン会、生産者来日イベントなども開催しやすく、コミュニティづくりにも発展します。

④ 信頼感・安心感がある

「ちゃんとお店がある」という事実は、初めてのお客様に対して大きな安心感を与えます。特に高額ワインや贈答用ワインを買う際、お客様は「信頼できるお店かどうか」を重視します。

実店舗のデメリット

① 初期費用・固定費が高い

実店舗は、物件取得費・内装工事費・設備費など、まとまった初期投資が必要です。さらに家賃・光熱費・保険料などの固定費が毎月かかります。

② 場所に縛られる

商圏が店舗の立地に限定されます。どれだけ良いワインを揃えていても、お客様が来店できる範囲にしかアプローチできません。立地選びが売上を大きく左右します。

③ 営業時間の制約がある

店を開けている間は基本的に店頭に立つ必要があります。一人で運営する場合、仕入れ・イベント準備・SNS発信などとの両立が体力的にきつくなることもあります。

④ ワインを保管するための設備維持・管理コストが必要

これはワインショップ特有のデメリットです。業務用ワインセラーや空調管理は、設置して終わりではなく、維持・管理のコストが継続的にかかります。夏場の電気代は特に注意が必要です。

※ 実店舗の開業に必要な費用については、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

ECショップの場合

ECショップのメリット

① 初期費用を抑えてスタートできる

店舗の内装費や家賃がかからない分、オンラインショップは比較的少ない資金でスタートできます。在宅で運営できるため、固定費も抑えやすいです。

② 全国・24時間販売できる

地理的な制約がなく、全国のワイン好きにアプローチできます。お客様が自分の都合の良い時間に注文できるのもECショップならではの強みです。

③ 在庫リスクをコントロールしやすい

実店舗では、売場の見栄えやお客様の選択肢を確保するため、ある程度の在庫量が必要になります。

一方、ECショップでは、常時保有する商品と、注文を受けてから仕入れる商品を分けることで、在庫負担を抑えながら商品ラインナップを広げることも可能です。

ただし、注文後に仕入れる商品については、仕入先の在庫切れや納期の遅れを適切に管理する必要があります。

④ ウェブデザイナーでなくても開業できる

「ECサイトを作るのは難しそう」と感じる方も多いですが、現在はノーコードで使えるプラットフォームが充実しています。代表的なものをご紹介します。

BASE(ベイス)は、デザインの知識がなくてもテンプレートを選ぶだけでショップページが完成します。
月額費用のかからないプランも用意されているため、初期費用を抑えて始めたい方の選択肢になります。

Shopify(ショッピファイ)は、世界中で使われているECプラットフォームで、デザインの自由度が高く、機能も豊富です。ある程度使いこなすまでに習得コストはかかりますが、本格的なECショップを目指すなら選択肢に入ります。

楽天市場・Amazonは集客力が圧倒的ですが、出店費用や手数料が高く、競合も多いため、価格競争に巻き込まれやすい点は注意が必要です。また、独自のブランドイメージを構築しにくいという側面もあります。
ワイン専門店として独自の世界観や顧客との関係づくりを重視する場合は、自社ECサイトとの役割分担を考えることが大切です。

ワインショップのEC運用としては、自社ECサイトを「本店」とし、楽天市場やAmazonなどのモール、自社SNSなどを認知度向上や新規顧客との接点として活用する方法も考えられます。

自社サイトで顧客との関係を構築しながら、それぞれの媒体の特徴に応じて役割を分けていくイメージです。

ECショップのデメリット

① 集客を自分で作らなければならない

実店舗であれば通りがかりのお客様が入ってくることもありますが、ECショップはサイトへの流入を自分で作る必要があります。SNS運用、SEO対策、広告など、継続的な情報発信が必要です。

開業直後は特に認知度がゼロからのスタートになるため、売上が安定するまでの期間は覚悟が必要です。

② お客様との関係構築に工夫が必要

一度購入していただいても、二度目につながるとは限りません。実店舗のような対面接客ができない分、お客様との信頼関係を築くには意識的な工夫が必要です。

商品ページの読み物としての充実度、メルマガでの産地や生産者ストーリーの発信、SNSでの日常的なワイン情報の共有など、画面越しでも「このお店から買いたい」と思っていただける関係を丁寧に積み上げていくことが、ECショップを長く運営していくための鍵になります。

ワインを「伝える力」が重要になる

実店舗なら会話で補えることも、ECではテキストと画像だけで伝えなければなりません。ここが、ワインECを運営するうえでの大きな難しさです。

ワインの産地、生産者のこだわり、味わいの特徴、合わせる料理の提案…これらを魅力的に文章で表現する力が、オンラインショップの売上を左右します。

ワインの知識があることは前提として、デザインや文章力、表現力など、対面販売とは違うセンスやスキルが問われます

④ 商品画像の「質」も問われる

ワインは見た目の美しさも購買動機のひとつです。
ECショップでは、ボトル画像のクオリティも、お客様の購買判断に大きく影響します。

ここで重要になるのが、仕入先から鮮明なボトル画像を入手できるかどうかです。
インポーターによっては、高解像度の商品画像データをホームページからダウンロードできるようにしているところもありますが、そうでないところも少なくありません。また、すべての商品を随時ホームページに掲載しているとは限りません。

さらに、ホームページに画像が掲載されていても、ヴィンテージが異なっていたり、ラベルデザインが微妙に変わっていたりすることは往々にしてあります。そのたびに実際に商品を仕入れてからボトル撮影を行い、ボトル形に切り抜いて…となると、時間も手間もかかるうえ、商品ページ全体のクオリティにもばらつきが出てしまいます。生産者から高画質の画像を取り寄せているかどうかを確認しておくといいかもしれません。

また、仕入先が生産者情報やワイン情報(土壌・ブドウ品種・醸造方法など)を充実させているかどうかも、ECショップ運営における重要な選定ポイントです。情報が豊富なインポーターと取引することで商品説明ページのコンテンツが充実し、ワイン好きのお客様の購買意欲を刺激しやすくなります。

⑤ 配送・梱包の手間がかかる

注文ごとに梱包・発送対応が必要です。ワインは割れ物なので、梱包には特に気を使う必要があります。

特に夏場はクール便対応も必要になり、送料・資材費が増加します。注文が増えるほど作業量も増えるため、注文が増えた場合の発送体制も、早めに考えておくとよいでしょう。

酒類販売免許の観点から見た違い

行政書士として一点補足すると、実店舗とECショップでは、販売方法や販売対象地域によって必要となる酒販免許が異なります。

店頭で酒類を販売する場合は、一般酒類小売業免許が必要です。一方、インターネットなどを利用して、2都道府県以上の広範な地域の消費者を対象に酒類を販売する場合は、通信販売酒類小売業免許が必要になります。

ただし、インターネットで注文を受ける場合であっても、一般的に販売場の近隣エリア、いわゆる商圏を対象とする販売であれば、一般酒類小売業免許で対応できる場合があります。

実店舗での店頭販売と、全国を対象とする通信販売の両方を行いたい場合は、一般酒類小売業免許に加えて、通信販売を行える免許の範囲を確保する必要があります。すでに一般酒類小売業免許を持っている場合には、免許条件の緩和手続によって対応することもあります。

また、通信販売酒類小売業免許で販売できる国産酒類には制限があります。原則として、前会計年度における酒類の品目ごとの課税移出数量が、すべて3,000キロリットル未満である製造者が製造・販売する酒類などに限られます。

国産ワインを通信販売する場合は、原則として、ワイナリーから「通信販売の対象となる酒類である旨の証明書」を発行してもらい、免許申請時に提出します。

この基準を満たさない製造者の国産ワインは、通信販売酒類小売業免許では取り扱えないため、品揃えを考える際は注意が必要です。

※ インターネット上では、大手メーカーの国産ワインやビールが販売されているのを見かけます。しかし、その理由の一つとして、酒類販売業免許制度の変遷により、現在では新規取得できない内容の免許を保有している酒販店が存在することが挙げられます。

そのため、既存の酒販店が販売できている酒類であっても、新たに通信販売酒類小売業免許を取得する場合には、同じように取り扱えるとは限りません。開業時には「他のお店が販売しているから大丈夫」と考えず、自分の免許で取り扱える範囲を確認することが大切です。

結局どちらを選ぶ?

ここまで見てきたように、一概にどちらが良いとは言えませんが、一応の判断の目安をお伝えします。

実店舗が向いている方

  • お客様との直接のやり取りにやりがいを感じる
  • 地域に根ざしたコミュニティを作りたい
  • ある程度の開業資金を確保できている
  • 立地条件の良い物件を見つけられた

ECショップが向いている方

  • まずリスクを抑えてスタートしたい
  • 文章を書くこと・情報発信が好き
  • 全国のワイン好きにアプローチしたい
  • 輸入ワインを中心に品揃えしたい

また、最初はECショップでスタートして、ブランドと資金が育ってきたタイミングで実店舗を出すという順番も、リスク管理の観点からは合理的な選択です。

まとめ:大切なのは、自分に合う販売スタイルを選ぶこと

実店舗とECショップには、それぞれ異なる魅力と課題があります。

実店舗は、お客様と直接会話をしながらワインを提案し、地域とのつながりを育てられることが大きな強みです。一方、ECショップは、初期費用を抑えながら全国のお客様に販売できる反面、文章や画像による情報発信、集客、梱包・発送などの力が求められます。

大切なのは、「どちらが流行っているか」ではなく、自分のコンセプト、得意なこと、資金状況、生活との両立を踏まえて、無理なく続けられるスタイルを選ぶことです。

また、実店舗とECショップでは必要となる酒販免許が異なります。開業後になって「予定していた販売方法が免許の範囲に含まれていなかった」と気づくことのないよう、事業計画を具体化する段階で、必要な免許も確認しておきましょう。

もっとワインショップ開業について知りたい方はこちら

ワインショップを開業したい方に向けて、開業準備から仕入れ、販売、集客までを順番に解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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