ワインショップを開業しようと考えたとき、多くの方が気になるのが「どこからワインを仕入れるのか」という点です。
ワインは、青果や鮮魚のように卸売市場へ行って仕入れる商品ではありません。また、「必ず大手卸売業者から仕入れなければならない」というものでもありません。
実は、ワインショップの仕入れ方法にはいくつかの選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
この記事では、日本の酒類流通の仕組みも踏まえながら、ワインショップの代表的な仕入れ方法をご紹介します。
日本のお酒の流通、まず基本を押さえよう
ワインの仕入れ先を考えるとき、まず知っておきたいのが日本の酒類流通の仕組みです。
一般的な輸入ワインは、

という多段階の構造で流通しています。これは酒税の確実な徴収や流通秩序の維持を目的として形成された歴史的な流通構造によるもので、かつては「生産者/輸入業者 → 卸売業者 → 小売店」という三層構造が基本とされていました。
ただし、現在は規制緩和が進んでおり、インポーターが卸売機能を兼ねている場合もありますし、後述するように小売店がインポーターや生産者から直接仕入れることも可能になっています。
ワインショップの場合、この流通経路のどこから商品を仕入れるかによって、品揃えや利益率、在庫リスクなどが変わってきます。
ワインショップの仕入れ先、4つの選択肢
インポーター(輸入元)から直接仕入れる
もっともシンプルな方法が、輸入ワインを扱うインポーターと直接取引する方法です。
卸売業者を介さないため、以下のようなメリットが考えられます。
- 卸売業者を介さないため、仕入価格を抑えやすい
- 詳細な生産者情報(商品情報、ボトル画像、テイスティングコメント)、販促用グッズを入手しやすい
- 最新の在庫状況や入荷予定を把握しやすい
- 流通経路が短く、商品の保管履歴や流通経路を把握しやすい
一方で、インポーターごとにブランドや取扱い品目が異なるため、品揃えを広げようとすると、複数社と取引する必要が出てきます。
複数のインポーターと取引を始めると、
- 発注先が増えるため、請求書や支払い管理が煩雑になる
- 送料や最低発注金額の関係で、必要以上に買って在庫過多に陥る傾向がある
- インポーターによっては、ケース単位の発注だと割安だが、バラ注文だとピッキング料を取られて割高になる場合がある
など、見落とされがちな実務上の負担もあります。
卸売業者を利用する
開業当初の小規模なワインショップは、卸売業者を活用するケースが少なくありません。
この場合のメリットは、少量から発注できることや、支払い先を一本化できる点が第一に挙げられます。
さらに、「1社とのやり取りで、複数のインポーターの商品をまとめて仕入れられる」という利便性があります。在庫リスクを抑えながら、フランス、イタリア、スペイン、ニューワールドなど幅広い産地のワインを取り揃えることができます。また、ワインに強い卸売業者と取引することで、例えばブルゴーニュの同じ産地・同じ品種のワインを、ドメーヌ違いで1本ずつ取り揃えることも容易になります。
特に開業初期は、「どの商品が売れるか分からない」状態です。そのため、まずは小ロットで幅広く試しながら売れ筋を探るという意味で、卸売業者の存在は大きな助けになります。
さらに見落とされがちですが、卸売業者から仕入れるメリットは商品そのものだけではありません。
長年ワインを販売してきた経験から、
- 「この価格帯はよく動く」
- 「これからの季節はこの商品が売れ筋」
- 「この生産者は固定ファンが多い」
- 「このワインは飲食店受けは良いが、小売では苦戦する」
といったワイン市場全体の動向を踏まえた情報を得られることもあります。
また、ワインショップでは「いつもの商品がない」状態が続くと顧客離れにつながることがあります。
複数インポーターの商品を扱う卸売業者であれば、定番で仕入れていた商品が欠品した場合に、すぐに他社の同産地の同価格帯ワインに切り替えて客離れを防ぐなどの対応がしやすいです。
海外から直輸入する
ワインショップならではの魅力を出したい場合、海外の生産者から直輸入するという方法もあります。
意外に思われるかもしれませんが、自店で販売するためにワインを輸入するのであれば、必ずしも「輸入酒類卸売業免許」は必要ではありません。
自ら輸入し、自ら小売(店頭販売)するのであれば、酒販免許上は「一般酒類小売業免許」で取り扱うことが可能なのです。
ただし、自社輸入の場合は、次のような手続きや費用が掛かります。
- 最低発注ロット(ケース単位、場合によってはパレット単位)
- 輸送コスト
- 食品衛生法に基づく輸入届出、関税・酒税の手続
- 通関手数料、保税倉庫代、海上保険料
- 日本語表示に関する確認やラベル貼付対応
- 検品・品質管理
さらに、自社輸入の場合はこれらの輸入実務を自ら行う必要があります。また、代行業者へ依頼する場合は別途、輸入代行手数料が発生します。その負担は大きく、現実的には一定の販売量が見込める段階になってから検討するのが現実的でしょう。
通信販売酒類小売業免許について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

国内ワイナリーから直接仕入れる
近年は日本ワイン専門店として、日本ワインに力を入れるショップも増えています。
国内ワイナリーと直接取引することで、
- 希少な限定ワインを扱える
- 生産者との関係を築ける
- 他店との差別化につながる
といったメリットがあります。
特に小規模ワイナリーでは、実際に現地を訪問して取引が始まるケースも少なくありません。
日本ワインを中心に扱うのであれば、各地のワイナリー訪問そのものが重要な仕入活動になるでしょう。
仕入先はどこで見つける?
気になるインポーター(生産者)に直接問い合わせる
レストランで飲んで気に入ったワイン、ワインショップで見かけて気になった銘柄。
「このインポーターの商品が好きだ」
と思ったら、その会社へ直接問い合わせるのが一番早い方法です。開業予定であることを伝えれば、担当営業からほぼ直接連絡をもらえます。最近ではインポーター各社のホームページに業務用取引の問い合わせ窓口が設けられていることも珍しくありません。
また、日本ワインを扱いたい場合は、直接ワイナリーへ連絡するという方法もあります。実際に現地を訪問し、生産者との関係づくりから取引が始まるケースも少なくありません。
もっとも、日本ワインには輸入ワインとは異なる独特の流通事情があります。日本ワインならではの流通や取引の特徴については、こちらの記事で詳しく解説しています。

プロ向け試飲会に参加する
仕入れ先探しで最も効率的な方法のひとつが、インポーター各社が出展するプロ向け試飲会への参加です。東京や大阪では年間を通じてさまざまな試飲会が開催されており、その多くは業界関係者であれば無料で参加できます。
1つの会場で複数のインポーターのワインを比較試飲でき、場合によっては海外の生産者本人と直接話せる機会もあります。試飲会ではワインの味わいを確認できるだけでなく、担当営業との人脈づくりや、今後の取引条件の相談ができることもあります。
開業準備中の段階から参加してみるのもおすすめです。まだお店がない「開業準備中」の段階でも、事前に主催者へ相談したり、準備中の名刺を用意したりすることで参加できるケースがほとんどです。
試飲会での出会いが、お店のラインナップや方向性を決定づけることも珍しくありません。
仕入れ先を選ぶ際に確認したいポイント
価格だけで仕入先を選ぶのはおすすめできません。
継続的な取引を考えるなら、次のような点も確認しておきましょう。
- 品質管理
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ワインは温度変化に敏感です。輸送中・保管中の温度管理がどのように行われているか確認することは、商品品質を守るうえで欠かせません。
- ショップの方向性との相性
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取り扱うワインの味わいの方向性が、自分のお店のコンセプトと合っているかどうかも大切な視点です。価格帯、スタイル、産地のバランスを意識しながら選びましょう。
- 商品情報や画像提供
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ECサイトや販促物に使用するための商品説明文や画像を提供してもらえるかどうかも確認を。特にEC販売においては、充実した商品情報がそのまま売上に直結します。
- 在庫切れリスク
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人気商品ほど欠品になりやすいものです。補充のリードタイムや、代替品の提案対応があるかも事前に確認しておくと安心です。
- 発注ロット・納期・送料
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最低発注数量(ケース単位か1本単位か)、注文から届くまでの日数、送料の体系(クール便加算、遠隔地への追加料金など)は、資金繰りや販売計画にも影響します。開業前に細かく確認しておきましょう。
まとめ:「どこから仕入れるか」は、理想と現実的な実務のバランスが鍵
ここまで見てきたように、ワインショップの仕入れは、「必ず問屋を通さなければならない」というわけではなく、インポーター直取引、卸売業者経由、直輸入、国内ワイナリーからの仕入れなど、さまざまな選択肢があります。
どの方法が正解かは、お店のコンセプトや規模感によって異なります。開業当初は卸売業者を活用して品揃えの幅を確保しながら、徐々にお気に入りのインポーターやワイナリーとの直取引の関係を築いていくというアプローチが、現実的な一歩かもしれません。
大切なのは、「どこから安く仕入れるか」だけでなく、「どんなワインを、どんなストーリーとともにお客様へ届けるか」という視点です。同じフランスワインを扱う店でも、どのインポーターと取引するかによって、お店の顔ぶれは大きく変わります。また、インポーターごとに得意とする産地や味わいの傾向も異なります。仕入れ先選びは、単なる商品調達ではなく、ワインショップの個性そのものを作る作業なのかもしれません。
もっとワインショップ開業について知りたい方はこちら
ワインショップを開業したい方に向けて、開業準備から仕入れ、販売、集客までを順番に解説しています。
酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。
当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。
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