はじめに―売場だけではワインショップは回らない
ワインショップの店舗を考えるとき、まず思い浮かぶのは、ワインを並べる棚やワインセラー、レジカウンターなどではないでしょうか。
もちろん、お客様が商品を見やすく、気持ちよく買い物ができる売場をつくることは大切です。
ただ、実際に営業が始まると、店内ではお客様から見える「販売」以外にも、さまざまな作業が発生します。
商品がケースで入荷し、開梱して検品する。
商品を店頭やバックヤードに移し、空いたカートンを片付ける。
注文が入れば商品をピッキングして梱包し、配送会社の集荷まで保管する。
その合間には、
仕入先への発注
商品登録
在庫確認
売上管理などの事務作業
もあります。
きれいな売場をつくるだけでなく、商品・お客様・店員が実際にどう動くのかをイメージして店舗全体を考えておくと、開業後の営業がしやすくなります。
店舗レイアウトは「3つの動線」から考える
店舗レイアウトを考えるときには、大きく3つの動線に分けてみると分かりやすくなります。
商品の動線
搬入 → 検品 → 保管 → 陳列 → ピッキング → 梱包 → 出荷
お客様の動線
入口 → 売場 → レジ → 出口
店員の動線
接客・レジ ↔ パソコン作業 ↔ バックヤード ↔ 検品・梱包・出荷作業
この3つは、それぞれ独立しているわけではありません。
商品を搬入している横をお客様が通ることもあれば、店員が接客の合間に商品を補充したり、パソコンで発注作業をしたりすることもあります。
特に小規模な店舗では、限られたスペースを複数の用途に使うことも多いでしょう。
そこで、まずはそれぞれの動線から店舗を見てみます。
商品の動線―ワインが入荷してから出ていくまで
ワインショップには、商品が継続的に入ってきます。
一般的には、
搬入 → 一時保管 → 開梱・検品 → 保管 → 店頭陳列 → 販売
という流れがあります。
発送を行う店舗なら、さらに、
在庫からピッキング → 梱包 → 出荷待ち → 配送会社へ引渡し
という流れも加わります。
店舗レイアウトを考えるときには、この一連の流れを実際の店舗の中に当てはめてみます。
たとえば、
- 配送会社からケースで商品が届いたとき、どこに一時的に置くか。
- 台車でバックヤードへ運ぶのであれば、途中に大きな段差はないか。
- 通路の幅は十分か。
- 検品した商品を店頭へ補充するときには、お客様の通路を何度も横切ることにならないか。
「商品をどこに置くか」だけでなく、そこまでどう運ぶかも一緒に考えておきたいところです。
搬入と集荷は「店の外」まで考える
商品の動線は店内だけでは終わりません。
- 配送会社のトラックはどこに停車するのか。
- そこから店舗まで台車を使えるのか。
- 入口に段差はないか。
- 上階ならエレベーターを利用できるか。
発送を行うのであれば、集荷時に梱包済みの商品をどこから渡すのかも考える必要があります。
お客様が来店している時間帯に入荷や集荷が重なることもあります。
店舗の入口しか搬入口がない場合には、ケースや台車がお客様の動線と交差することも考えられます。
物件を選ぶ段階では、店内の広さや内装だけでなく、商品が道路から店舗へ入り、再び店舗から出ていくところまでイメージしておくとよいでしょう。
バックヤードは「在庫を置くだけの場所」ではない
商品の動線を考えると、バックヤードに必要なのは在庫を置くスペースだけではないことが分かります。
実際の営業では、たとえば次のようなものがあります。
- 入荷したばかりの商品
- 検品途中の商品
- 店頭補充用のケース在庫
- 空いたカートン
- 発送用のカートンや緩衝材
- 梱包済みで集荷を待っている商品
- 台車
- 包装用品
- 清掃用品
- 破損や返品などで通常在庫と分けておきたい商品
特にワインはケースで入荷することが多く、空いたカートンもそれなりのスペースを取ります。
発送を行う場合には、梱包前の商品だけでなく、梱包済みの商品を配送会社が来るまで置いておく場所も必要です。
こうしたスペースを考えずに売場を広く取ってしまうと、営業が始まってから、入荷したケースや発送待ちの商品がお客様の通路に出てしまうことも考えられます。
売場面積だけでなく、日々の作業に使う面積も考えておくことが大切です。
お客様の動線―商品や台車が邪魔にならない売場に
次に考えたいのが、お客様の動線です。
入口から店内に入り、商品を見て、レジで会計をして店を出る。
その間に、入荷したケース、台車、発送待ちの商品などが通路を塞がないようにする必要があります。
商品を見るお客様と、商品を運ぶ店員や配送会社。
それぞれがどこを通るのかを一度図面上でたどってみると、問題になりそうな場所を見つけやすくなります。
また、車で来店するお客様が想定される店舗なら、お客様用の駐車場も検討することになります。
物流を優先するあまり、お客様が買い物をしにくい店舗になってしまっては本末転倒です。
商品を動かしやすいことと、お客様がゆっくり商品を見られること。
その両方から売場を考える必要があります。
店員の動線―接客しながら日々の作業をどうする?
ワインショップの仕事は、接客やレジだけではありません。
商品の検品や補充
ピッキング
梱包
といった作業に加えて、
商品の登録や価格変更
在庫確認
仕入先への発注
納品処理
売上管理
取引先との連絡
などもあります。
ECを併用する場合には、商品ページの登録、受注処理、発送手配なども加わります。
「全部バックヤードで作業する」でもよい?
十分な広さと人員がある店舗なら、検品や梱包などをバックヤードで行うこともできます。
一方、小規模なワインショップでは、一人または少人数で店頭を担当することもあるでしょう。
その場合、梱包や事務作業のたびにバックヤードへ入ってしまうと、店頭の様子が見えなくなることがあります。
反対に、売場の中で梱包作業をすれば、カートンや台車がお客様の通行を妨げたり、せっかく整えた売場が雑然として見えたりすることもあります。
バックヤードをどの程度確保するかだけでなく、どこで日常の作業をするのか、その場所から店頭を確認できるかまで考えてみると、実際の営業をイメージしやすくなります。
店番をしながらパソコン作業ができる場所も考える
パソコンやプリンターを置けることだけでなく、店内や入口の様子を確認しながら、ある程度落ち着いて作業できる場所があるかも考えておきたいところです。
- レジカウンターですべての事務作業をするのか、近くに小さなデスクを設けるのか。
- プリンターや伝票、書類をどこに置くのか。
- お客様からパソコンの画面や書類が見えすぎないか。
小さなことのようですが、毎日行う作業だからこそ、店舗レイアウトによって使い勝手が変わります。
3つの動線を踏まえて、必要な設備を考える
商品、お客様、店員の動きをイメージすると、必要な設備や置き場所も考えやすくなります。
一般的なワインショップであれば、たとえば次のようなものが考えられます。
- ワインラック・商品棚
- ワインセラー・冷蔵設備
- レジ・POS
- キャッシュレス決済端末
- パソコン・プリンター
- 包装台・包装用品
- ギフト箱・手提げ袋
- 値札や商品説明などの表示用品
すべての店舗に同じ設備が必要という意味ではありません。
高額なワインを多く扱う店舗と、デイリーワインを中心に扱う店舗では、保管方法や陳列方法も違ってきます。
自分の店で何を、どのように販売するのかから必要な設備を考える方が自然です。
電源・通信・空調なども忘れずに
設備そのものだけでなく、それを使用するための店舗インフラも確認しておきたいところです。
ワインセラー、冷蔵設備、エアコン、POS、パソコン、プリンターなどを使用するのであれば、コンセントの位置や数、電気容量も関係します。
POSやキャッシュレス決済、クラウド型の在庫管理システムなどを利用する場合には、通信環境も必要です。
また、ワインを扱う店舗では、セラーだけでなく店内の日射や室温、空調なども考えておきたいところです。
特に後から工事が必要になるものは、什器を購入するより前の段階で確認しておく方がよい場合があります。
将来やりたいことも、レイアウトの段階で少し考える
開業時に必要な設備だけでなく、将来予定している事業があれば、その可能性も少し考えておくとよいでしょう。
飲食店などへの配達を考えている場合
開業当初は店頭販売だけでも、将来、近隣のレストランなどへの販売を考えているのであれば、ケース単位で商品を運び出す機会が増えるかもしれません。
自社で配送するのであれば、車両や駐車場所、商品を積み込む場所なども必要になります。
今すぐ車を用意しなくても、将来そうした営業方法を取り入れられる店舗なのかという視点は持っておいてもよいでしょう。
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ECや地方発送を考えている場合
ECを始めれば、商品を販売するだけでなく、ピッキング、梱包、送り状の作成、出荷待ち商品の保管といった作業が増えます。
発送件数が増えるほど、梱包スペースや資材置場の重要性も高くなります。
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角打ちを考えている場合
将来、店内でワインを提供することを考えている場合には、単にテーブルやカウンターを置けばよいとは限りません。
提供方法によっては飲食店営業許可などの検討が必要になり、給排水や洗浄設備など、後から変更しにくい設備が関係する場合があります。
開業時には物販だけであっても、将来の計画があるのであれば、物件や内装を決める段階から確認しておく意味があります。
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酒販免許申請の図面にもつながる
酒類販売業免許を申請するときには、販売場の建物の配置や内部の区画などを図面で示します。
ただ、図面は免許申請のためだけに考えるものではありません。
その前に、
- どこで商品を受け取るのか
- どこに保管するのか
- どこで販売するのか
- どこで店員が作業するのか
といった実際の営業をイメージしておけば、販売場の使い方そのものが整理されます。
特に、飲食店など他の営業と同じ建物内で酒類を販売する場合には、酒販部分との区分についても検討が必要になります。
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まとめ―「売場」ではなく「営業する場所」として考える
ワインショップの店舗づくりでは、どうしてもお客様から見える売場に目が向きます。
しかし、営業が始まれば、ワインは入荷し、保管され、店頭へ移され、販売され、ときには再び箱に入って出荷されます。
その間に、店員は接客だけでなく、発注、商品登録、在庫管理、梱包などの仕事も行います。
すべての設備を開業時から揃える必要はありません。
ただし、後から簡単に追加できる備品と、電源、給排水、バックヤード、搬入経路など後から変更しにくいものは分けて考えておくとよいでしょう。
商品・お客様・店員がどう動くのか。
この3つの動線を重ねながら実際の一日を思い浮かべてみると、必要な売場の広さやバックヤード、作業場所、設備なども具体的になってきます。
店舗を「商品を並べる場所」ではなく、実際に営業する場所として考えることが、使いやすいレイアウトを考える第一歩になります。
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