はじめに―ネットで注文を受けたら「通販免許」が必要?
お酒をインターネットで販売する場合、「通信販売酒類小売業免許が必要」と思われるかもしれません。
たしかに、全国のお客様を対象にECサイトで注文を受け、宅配便で酒類を発送するような販売では、通信販売酒類小売業免許を検討することになります。
しかし、インターネットを使って注文を受けたからといって、すべてが酒販免許上の「通信販売」になるわけではありません。
最近では、飲食店のテーブルにあるQRコードをスマートフォンで読み取って注文したり、Webサイトやアプリから近隣のお店の商品を注文して配達してもらったりすることも珍しくなくなりました。
このように、インターネットを介して注文する仕組みは、さまざまな場面で使われています。
では、酒販免許上の「通信販売」は、どのように考えればよいのでしょうか。
一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の境界は、単に「ネットを使ったかどうか」だけでは決まりません。
今回は、具体的な事例を見ながら、その違いを整理します。
酒販免許上の「通信販売」とは?
酒販免許上の「通信販売」は、インターネットを利用した販売だけを意味するものではありません。
通信販売酒類小売業免許では、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、商品の内容や販売価格などの条件をインターネットやカタログ等で提示し、郵便、電話その他の通信手段によって購入の申込みを受け、その条件に従って販売することが前提となっています。
ここでいう通信手段には、電話やFAXなども含まれます。
つまり、「ネットで注文を受ける=通信販売」ではなく、反対に「ネットを使わなければ通信販売ではない」というわけでもありません。
一方、一般酒類小売業免許は、販売場において原則としてすべての品目の酒類を小売することができる免許ですが、この「通信販売」は除かれています。
また、通信販売酒類小売業免許は、国内の消費者等を対象とした通信販売についての免許です。
海外の消費者へ酒類を販売する場合は、通信販売酒類小売業免許とは別に考える必要があります。
両者の違いを考えるときは、注文にインターネットを使ったかどうかだけではなく、どの地域のお客様を対象として、どのような方法で販売するのかを見る必要があります。
事例① 店内のQRコードからボトルワインを注文
たとえば、飲食店のテーブルにあるQRコードを読み取り、スマートフォンからボトルワインを注文したとします。
注文にはインターネットを利用していますが、お客様はその飲食店の中で注文し、店内でそのワインを飲んでいます。
これは、インターネットを使ったという理由だけで、通信販売酒類小売業免許の問題になるものではありません。
店内で飲用するために酒類を提供するのであれば、基本的には飲食店としての酒類提供の場面です。
大切なのは、注文に使った道具がスマートフォンか、紙のメニューか、店員への口頭注文かではなく、実際にどのような販売・提供が行われているかという点です。
事例② ネットで注文を受け、近隣のお客様へ配達
では、酒販店がWebサイトで注文を受け、近隣のお客様の自宅へワインを届ける場合はどうでしょうか。
こちらも注文にはインターネットを利用しています。
しかし、一つの都道府県の消費者等のみを対象として小売する場合は、一般酒類小売業免許の対象となります。
また、県境に近い店舗では、普段の商圏が隣県にまたがることもあります。
このような場合も、2都道府県にまたがったという事実だけで、直ちに通信販売になるわけではありません。
販売場の所在する市町村の近隣にある市町村のお客様から注文を受け、そのお客様へ配達する方法による販売については、一般酒類小売業免許として取り扱われます。
たとえば、県境近くの酒販店が、日頃から商圏としている近隣地域のお客様からネットで注文を受けて配達するような場合です。
このように、一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許の境界を考えるときには、単純に都道府県の数だけを見るのではなく、販売場から見た商圏や実際の販売方法を確認することが大切です。
配達を外部の事業者に頼んだら「通信販売」になる?
近隣のお客様への配達は、必ずしも販売者自身が車で届けなければならないという意味ではありません。
国税庁の取扱いでは、近隣のお客様に「自ら配達」する場合について、酒類の配達や引渡しを他の事業者に委託する場合も含むとされています。
そのため、配送を外部の事業者に委託したという理由だけで、通信販売酒類小売業免許が必要になるわけではありません。
ただし、ここで委託しているのは、あくまで酒類の配達や引渡しです。
商品を運ぶ事業者と、酒類を販売する事業者は分けて考える必要があります。
外部の配送サービスなどを利用するときも、誰が酒類の販売主体となり、どの販売場で酒類を販売しているのかを整理しておくことが大切です。
また、外部倉庫から商品を発送する場合などは、販売場とは別に、酒類をどこで保管し、どこから出荷するのかという問題も出てきます。
この点については、別の記事で「販売場」と「蔵置所」の違いを整理しています。
事例③ 飲食店が料理と一緒にワインを届ける
では、飲食店がWebサイトやアプリを通じて料理の注文を受け、一緒にボトルワインも販売して近隣のお客様へ届ける場合はどうでしょうか。
ここでは、まず一つ注意が必要です。
飲食店が店内でお客様にワインを提供することと、持ち帰りや配達用としてボトルワインを販売することは、酒販免許上は同じではありません。
店外で飲用するための酒類を販売するのであれば、酒類小売業免許を検討する必要があります。
そのうえで、販売場の近隣のお客様を対象としたデリバリーであれば、注文をWebサイトやアプリで受けているという理由だけで通信販売酒類小売業免許になるわけではありません。
どの地域のお客様を対象としているのか、どのような方法で注文を受け、商品を届けるのかなど、実際の販売方法から考えることになります。
事例④ ECサイトで全国のお客様から注文を受ける
これに対して、ECサイトに商品と価格を掲載し、全国のお客様から注文を受けて宅配便で発送する場合はどうでしょうか。
この場合は、2都道府県以上の広範な地域の消費者等を対象として、インターネットで販売条件を提示し、通信手段によって購入の申込みを受けることになります。
これは、典型的な酒販免許上の「通信販売」です。
一般酒類小売業免許を持っているからといって、そのまま全国向けのネット通販ができるわけではありません。
すでに一般酒類小売業免許を受けている販売場で、新たに広範な地域を対象とした通信販売を始める場合には、販売方法に関する免許条件の緩和を受ける手続が必要となります。
判断のポイントは「ネットを使ったか」ではない
ここまでの事例を並べると、同じようにスマートフォンやインターネットを使って注文していても、酒販免許上の取扱いが異なることが分かります。
店内のQR注文、近隣へのネット注文・配達、全国を対象としたEC販売。
いずれもデジタルの仕組みを使うことはできますが、それだけで必要な免許が決まるわけではありません。
また、電話やFAXなどで注文を受ける場合も、販売の仕組みによっては酒販免許上の通信販売に該当します。
酒販免許を考えるときは、
- 誰を対象に販売するのか
- どの地域を販売対象とするのか
- どのように商品や価格を提示するのか
- どのように注文を受けるのか
- どのように商品を引き渡すのか
といった、販売の仕組み全体を整理することが大切です。
国税庁も、インターネットを利用した酒類販売については、酒類の受発注の態様等により個々に判断するとしています。
実際の販売方法が一般酒類小売業免許と通信販売酒類小売業免許のどちらに該当するのか判断しにくい場合には、具体的な販売方法を整理したうえで確認することが必要です。
まとめ
「ネットで注文を受ける=通信販売酒類小売業免許」とは限りません。
一つの都道府県内のお客様のみを対象とする販売や、販売場の近隣地域のお客様を対象とした販売であれば、Webサイトやアプリを利用して注文を受けていても、一般酒類小売業免許の範囲となる場合があります。
一方、2都道府県以上の広範な地域を対象として、ECサイトなどで販売条件を提示し、通信手段によって注文を受ける場合には、通信販売酒類小売業免許を検討することになります。
まずは「ネットを使うか」ではなく、どこまでの地域のお客様に、どのような仕組みで販売するのかから考えてみましょう。
そして、通信販売酒類小売業免許では、販売できる酒類にも一定の範囲が定められています。
通信販売酒類小売業免許で「何を売ることができるのか」、国産酒類の3,000kL基準や輸入酒類の取扱いについては、こちらの記事で解説しています。

また、実際にECサイトで酒類を販売する場合には、20歳未満の者への販売防止のための表示や年齢確認、酒類販売管理者標識など、酒類通販特有の表示ルールもあります。

酒販免許の種類や取得要件について知りたい方はこちら
酒類販売を始めたい方に向けて、酒販免許の種類や選び方、取得要件、申請手続きなどを分かりやすく解説しています。
酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。
当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。
\まずはお気軽にお問合せください/

