【ワインショップ開業】「日本ワインを扱う場合のポイント」― ワイナリーとの関係づくりが仕入れを左右する ―

日本のワイナリーにワインショップ開業予定者が訪問

近年、品質の向上とともに人気が高まっている「日本ワイン」。

「新しくオープンするワインショップで、日本ワインをメインに扱いたい」「既存の店舗に日本ワインのコーナーを新設したい」と考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、実際に仕入れを検討してみると、輸入ワインとはまったく異なる「壁」にぶつかることがあります。

  • 欲しいワインがそもそも仕入れられない
  • アプローチしても、新規の取引を断られてしまう
  • 人気のワイナリーでは、すでに取引先ごとの割り当て販売になっていた

一言でいえば、日本ワインは「思ったようには仕入れられない」ことが少なくありません。

今回は、日本ワインを扱ううえで必ず押さえておきたい流通事情や、具体的な仕入れのポイントを解説します。

目次

日本ワインは「生産量」が圧倒的に少ない

まず大前提として押さえておきたいのが、日本ワインの生産量の少なさです。

日本のワイン市場全体で見ると、国内で消費されるワインの大半は輸入ワイン(フランス、イタリア、チリ、スペインなど)であり、これらは大量に安定して流通しています。

一方、日本国内のワイナリーは増加傾向にあるものの、その多くは小規模な家族経営や農家ワイナリーです。
年間生産量が限られている小規模ワイナリーも多く、大手インポーターが扱うような商品とは根本的にスケールが異なります。

そのため、人気ワイナリーのアイテムともなれば、リリースと同時に即完売してしまうことも珍しくありません。

日本ワインの仕入れは、「欲しいから買う」というよりも、生産者から「分けてもらう」という感覚に近いのが現実です。「欲しいワインを、欲しい時に、欲しいだけ買えるわけではない」という現実が、すべてのスタートラインになります。

確かに人気ワイナリーからの調達は競争が激しいですが、新たなワイナリーも次々と誕生しています。後発ワイナリーとの関係づくりは、新規開業店にとって大きなチャンスになる場合もあります。

「日本ワイン」と、一般にいう「国産ワイン」は別物

ここで、実務上の前提として、「日本ワイン」と「国産ワイン」の違いを整理しておきましょう。

一般に「国産ワイン」と呼ばれてきたものの中には、海外から輸入した濃縮果汁や原料ワインを使用し、国内で製造したワインも含まれます。現在の表示基準では、こうしたものを含め、国内で製造されたワインは「国内製造ワイン」として整理されています。

これに対して「日本ワイン」とは、国内で収穫されたぶどうだけを使って、国内で醸造したワインを指します。

国税庁が2015年に定め、2018年から適用された「果実酒等の製法品質表示基準」によって、ラベルの表示ルールが整備されています。現在、「日本ワイン」と表示できるのは、この基準を満たすものに限られます。

これはお店のコンセプトに関わる部分でもありますので、混同しないよう注意が必要です。

日本ワインを仕入れる「2つの現実的ルート」

比較的多くの商品から選択しやすい輸入ワインに対し、日本ワインの仕入れでは、生産量や既存取引先との関係から、希望する商品をすぐに仕入れられないことがあります。

主なルートは以下の2つです。

ワイナリーとの直接取引

生産量が少ない日本ワインは、ワイナリーとの直取引が一般的なルートの一つです。

しかし、すでに既存の販売先で生産分が埋まっているワイナリーは、新規取引に極めて慎重です。

「どんなお店で、どんなお客様に、どう届けたいのか」という熱意やコンセプトを丁寧に伝え、生産者との信頼関係を築くことが第一歩になります。

日本ワイン専門の卸売業者(問屋)の活用

近年は、日本ワインに特化した卸売業者も増えてきました。こうした業者を挟むことで、複数のワイナリーのワインをまとめて発注できる場合があります。

ただし、希少な小規模ワイナリーの限定品などは、卸売業者を通じて流通しないことも多く、これだけで差別化を図るにはラインナップに限界があります。

どちらのルートにも共通しているのは、「開業前から計画的に動く必要がある」という点です。

開店直前に連絡しても間に合いません。開業前から以下のような機会を活かし、現地に出向いて積極的に関係を築いていく姿勢が求められます。

  • ワイナリーへの現地訪問
  • ワインイベントへの参加
  • 専門の試飲会での生産者との交流

人気ワイナリーでは「新規取引停止」「本数制限」「割り当て制」が当たり前に行われているため、「仕入れルートの確保=開業準備の最重要課題」と言えます。

日本ワインは通信販売との相性も良い

日本ワインを中心に扱うショップを考えている方の中には、実店舗だけでなくECショップ(ネット通販)も併用したいと考えている方も多いでしょう。

日本ワインは、免許制度上、通信販売の対象となり得る商品が比較的多いという特徴があります。

その理由のひとつが、酒税法上の「3,000キロリットル基準」です。

通信販売酒類小売業免許で販売できる国産酒類には、製造者の前会計年度における品目ごとの課税移出数量が3,000キロリットル未満であることなど、一定の制限があります。

日本のワイナリーの多くは、この基準を満たす小規模・中規模の生産者です。そのため、日本ワイン専門店や日本ワインに力を入れるショップでは、通信販売酒類小売業免許を活用して全国のお客様へ販売するというビジネスモデルが取りやすいのです。

もっとも、実際に通信販売を行うためには、仕入先のワイナリーから、通信販売の対象となる酒類であることを確認するための証明書を取得するなど、一定の実務対応が必要になります。

こうした手続きがあることからも、日本ワインの販売では単なる仕入先としてではなく、ワイナリーと継続的な関係を築いていくことが重要になるのです。

日本ワイン専門店の強みと、関係性構築の核心

安定供給が難しい反面、日本ワインには輸入ワインにはない強力な魅力と専門店の強みがあります。

  • 地域性や生産者のストーリーをダイレクトに伝えられる(言語の壁がない)
  • 生産者を招いたイベントやワイナリーツアーなど、ファン作りの仕掛けがしやすい
  • 「誰でも簡単に同じ品揃えを作れない」ため、他店との差別化につながりやすい

輸入ワインの場合、インポーターや卸売業者との取引は、基本的に「客であるお店が商品を選んで仕入れる関係」です。

しかし日本ワインの場合は、生産者と直接つながる機会が多いため、生産者側に「自分が造ったワインをどのように販売してくれるお店か」まで評価されやすいです。

そのため、ワイナリーを単なる「仕入先」としてではなく「ビジネスパートナー」として捉える感覚が必要になってきます。

それが後発の新しいワイナリーであれば、取引のハードルは低くとも、「共にそのワイナリーのファンを育てていく」という伴走の姿勢も求められます。

  • 自店がどんな客層に届けたいのか
  • どのような形で紹介・販売するのか(店頭での説明、SNS発信、試飲イベントなど)
  • 適切な温度管理など、ワインの品質への誠実な姿勢があるか

これらを生産者に示し、信頼されるパートナーになることこそが、日本ワイン専門店を続けていくための核心と言えます。

まとめ:仕入れの難しさが、差別化の武器になる

日本ワインを扱うビジネスには、「安定した仕入れが難しい」という高いハードルが存在します。しかしそれは裏を返せば、「簡単に真似できない独自の魅力的な棚を作れる」ということでもあります。

  • 現地へ足を運び、生産者と対話しながらワインを選ぶ
  • ワイナリーとの絆を深め、共に成長していく

それこそが、日本ワインを扱う最大の面白さであり、最終的にお客様を惹きつけるお店独自の強みになるはずです。

もっとワインショップ開業について知りたい方はこちら

ワインショップを開業したい方に向けて、開業準備から仕入れ、販売、集客までを順番に解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


\まずはお気軽にお問合せください/

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

⇩ 事務所の詳細はこちらから

目次