【Case15・第7話】どんなワインショップにする?―客層・価格帯・品揃えから考える〈会社設立編〉

お弁当・お惣菜やさん店頭イメージ
目次

〈Case15-⑦〉登場人物と二人の計画

アキさん

・46歳、メーカー勤務(事務職)
・事務やWeb作業が得意
・実家は元洋食店で、現在は父が弁当・惣菜の販売を続けている
・かつての客席スペースは、現在ほぼ物置になっている
・土日休み

リエさん

・46歳、中学時代からのアキさんの友人
・飲食店勤務
・ソムリエ資格あり
・ワインの商品知識や飲食業界での経験がある
・土日は仕事だが、平日に休みを取れることが多い

アキさんの父

・自宅で長く洋食店を営んできた
・現在は洋食店は閉め、店頭で弁当と惣菜の持ち帰り販売をしている
・販売場となる建物の所有者

二人の計画

・本業を続けながら、副業でワイン販売を始めたい
・資金は二人で出す予定
・商品選定や仕入れはリエさん、Webや事務はアキさんが中心
・販売場は、アキさんの親が所有する元洋食店の客席スペースを使う予定

どんなワインショップにする?

第6話では、アキさんとリエさんの会社の形も決まり、お父さんの元洋食店を販売場として使う方向性も見えてきました。

通販だけでなく、店頭でもワインを販売する。

アキさんとリエさんが考えていたワインショップは、少しずつ現実の形に近づいています。

残っている大きな問題の一つが、会社の資本金です。

アキさん

そろそろ、資本金をいくらにするか決めないとね。

アキさんがそう言うと、リエさんもうなずきました。

けれど、いざ金額を考えようとすると、すぐに手が止まりました。

アキさん

最初にワインって、何本くらい仕入れる?

リエさん

それは、どんなワインを揃えるかにもよるかな。

アキさん

じゃあ、どんなワインを揃える?

二人は顔を見合わせました。

考えてみれば、まだ肝心なことを決めていません。

自分たちは、どんなワインショップをつくりたいのか。

どんなワインを売りたい?

リエさんには、以前から漠然としたイメージがありました。

せっかく自分たちでワインショップを始めるなら、価格の安さや品数の多さで競う店にはしたくありません。

小さな生産者のワインや、あまり知られていない産地のワイン、日本ワインなども含めて、自分が実際に飲んで「人に薦めたい」と思えるワインを扱いたい。

中心になる価格帯も、2,000円台後半から4,000円台くらいをイメージしていました。

リエさん

せっかくなら、スーパーや大きな通販サイトで簡単に見つかるものじゃなくて、ちょっと面白いワインを紹介したいんだよね。

アキさんも、その考えには賛成です。

実家が洋食店だったこともあり、資格こそ持っていませんが、ワインは昔から身近な存在でした。

ただ、アキさんには別の疑問もありました。

アキさん

でも、3,000円とか4,000円のワインを、知らない通販サイトで買ってもらうって、結構難しくない?

確かに、良いワインを揃えるだけでは、お客さんがこの店を選んでくれる理由にはなりません。

店頭では、1,000円台のワインも欲しい

そこへお父さんが口を挟みました。

アキさんの父

うちの店で売るなら、もう少し安めの価格帯もあった方がいいんじゃないか?

弁当屋で販売しているのは、ハンバーグやコロッケ、ポテトサラダなど、昔の洋食店の味を生かした弁当や惣菜です。

夕食のおかずを買いに来たお客さんが、その場でワインも一本買って帰る。

そんな売り方を考えるなら、1,000円台のワインもあった方がよさそうです。

リエさん

それはそうかも。
ハンバーグと一緒に気軽に一本なら、せめて、1,500円とか1,800円ぐらいまでのワインじゃないと。

アキさん

だったら、通販も1,000円台中心にする?

それも少し違うように思えました。

通販では送料もかかります。

何より、小さなワインショップが大手の通販サイトと価格や品数で競うのは簡単ではありません。

店頭で求められるワインと、通販でわざわざこの店を選んで買ってもらうワインは、少し違うのではないか。

そんな問題が見えてきました。

価格帯を分けたら、別々の店になってしまう?

店頭には、1,000円台のデイリーワイン。

通販では、2,000円台後半から4,000円台を中心に、リエさんが選ぶ少し個性的なワイン。

さらに、特別な日のための少し上の価格帯も置く。

商品構成としては、それでもよさそうです。

けれど、アキさんにはもう一つ気になることがありました。

アキさん

値段によって全然違うワインを置いていったら、結局、何が特徴のお店なのか分からなくならない?

安いワインから高いワインまであります。

輸入ワインも日本ワインもあります。

それだけでは、「何でもある小さなワインショップ」になってしまいます。

三人は、また考え込みました。

誰に買ってほしい?

今度は、商品ではなくお客さんから考えてみることにしました。

ワインについて詳しい愛好家だけを対象にしたいわけではありません。

かといって、とにかく安いワインを探している人を相手に、大手量販店と価格競争をするつもりもありません。

アキさん

ワインは好きだけど、お店でずらっと並んでると、どれを買ったらいいか分からない人って多いよね。

これは、アキさん自身にも分かる感覚でした。

産地や品種、生産者の名前だけを見て、すぐに味わいまで想像できる人ばかりではありません。

リエさん

そういう人に、ワインの味わいやタイプを分かりやすく説明してお薦めするの、けっこう得意かも。

でも、それだけなら「ソムリエおすすめのワインショップ」です。

もう一つ、この店ならではのものが欲しいところです。

「料理が決まっていたら、ワインは選びやすい」

しばらく二人の話を聞いていたお父さんが言いました。

アキさんの父

昔の店じゃ、ワインを先に決めるお客さんばかりじゃなかったぞ。
むしろ料理を決めてから、「これには何が合う?」って聞く人が多かったな。

長く洋食店を営んできたお父さんにとって、ワインは料理と切り離されたものではありませんでした。

リエさん

料理が決まってたら、私もお薦めしやすいよ。
ワインは、ソースや付け合わせでも変わってくるから。

その言葉を聞いて、アキさんが思いつきました。

アキさん

だったら、お父さんの料理を使えばいいんじゃない?

アキさんの父

俺の料理?

元洋食店のレシピとワインを組み合わせる

お父さんが洋食店で作っていた料理は、ハンバーグだけではありません。

肉料理、魚料理、煮込み料理、グラタン――。

その中から、家庭でも作りやすいものを選び、レシピとして紹介する。

お父さんには、店の料理を家庭向けにアレンジしてもらいます。

アキさんが料理を撮影し、材料や作り方をECサイトで見やすくまとめる。

そして、その料理に合うワインをリエさんが選びます。

例えば、煮込みハンバーグ。

完成した料理の写真と、家庭で作れるレシピを掲載する。

その下には、

「普段の夕食なら、このデイリーワイン」

「週末に少しゆっくり楽しむなら、こちらの一本」

と、価格帯の違うワインを提案することもできます。

リエさん

それなら、1,000円台と3,000円台のワインが一緒にあっても変じゃないね。値段じゃなくて、料理やシチュエーションに合わせて選んでるんだから。

アキさん

ワインから探すんじゃなくて、作りたい料理、食べたい料理から探してもらう。ペアリングも間違いないし、何より、ワインを美味しく楽しんでもらえそうだね。

三人が考えていたものが、少しずつ一つにつながってきました。

三人だからできるワインショップ

お父さんには、長年洋食店を営んできた経験があります。

リエさんには、ソムリエとしてワインを選び、料理との組み合わせを考える知識があります。

アキさんには、会社でホームページの更新をしてきた経験があります。

お父さんが料理を考え、

リエさんがワインを選び、


アキさんが写真や文章を使ってECサイトで伝える。

アキさん

それって、うちにしかできないワインショップになるんじゃない?

単にワインを並べて販売するのではなく、

「料理からワインを選べるワインショップ」

三人の店のコンセプトが、ようやく見えてきました。

コンセプトが決まると、数字も見えてくる

  • どんなお客さんに来てほしいのか。
  • どんなワインを揃えるのか。
  • どのくらいの価格帯を中心にするのか。
  • そして、何を理由にこの店を選んでもらうのか。

こうしたことが決まらなければ、必要な資金も計算できません。

  • 店頭用のデイリーワインは、何種類揃えるのか。
  • 通販の中心になるワインはいくらくらいで、何種類必要なのか。
  • 最初に何本仕入れるのか。
  • ワインセラーや棚、梱包資材にはいくらかかるのか。

ECサイトの運営費や、当面の運転資金も必要です。

「資本金をいくらにする?」

そんな話から始まったはずが、その前に考えなければならないことが、たくさんありました。

けれど今度は、計算するための土台があります。

どんな店をつくるのかが決まったからです。

次に三人が考えるのは、このワインショップを実際に始めるための「数字」です。

売上、仕入れ、在庫、経費、そして必要な開業資金。

それらを一つずつ積み上げながら、三人はようやく、会社にいくらのお金を用意するのかを考えていくことになります。


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当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワイン輸入会社で輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面から酒販免許取得をサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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