【Case15・第8話】ワインショップはいくらあれば始められる?―必要資金と資本金を考える〈会社設立編〉

ワインショップの方向性を二人で話し合っている
目次

〈Case15-⑧〉登場人物と二人の計画

アキさん

・46歳、メーカー勤務(事務職)
・事務やWeb作業が得意
・実家は元洋食店で、現在は父が弁当・惣菜の販売を続けている
・かつての客席スペースは、現在ほぼ物置になっている
・土日休み

リエさん

・46歳、中学時代からのアキさんの友人
・飲食店勤務
・ソムリエ資格あり
・ワインの商品知識や飲食業界での経験がある
・土日は仕事だが、平日に休みを取れることが多い

アキさんの父

・自宅で長く洋食店を営んできた
・現在は洋食店は閉め、店頭で弁当と惣菜の持ち帰り販売をしている
・販売場となる建物の所有者

二人の計画

・本業を続けながら、副業でワイン販売を始めたい
・資金は二人で出す予定
・商品選定や仕入れはリエさん、Webや事務はアキさんが中心
・販売場は、アキさんの親が所有する元洋食店の客席スペースを使う予定

今度こそ、お金の話をしよう

第7話で、「料理からワインを選べるワインショップ」という店の方向性が決まったアキさんとリエさん。

お父さんの元店舗を活用し、リエさんがワインを選び、アキさんがECサイトやコンテンツ制作を担当する。
お父さんの料理も、ワインを紹介する大切な材料になりそうです。

アキさん

なんか、すごくいいお店になりそうじゃない?

リエさん

うん。……で、結局、いくらあればできるのかな?

アキさん

…………

アキさんの父

やっと商売の話になったな(笑)

二人が出せるのは、それぞれ100万円まで

二人とも会社員として働いています。

副業として始める以上、最初から大きな借入れをするつもりはありません。

話し合った結果、

「自分たちが出すお金は、一人100万円まで」

と決めました。

ただし、これは最初から資本金を200万円にする、という意味ではありません。

まず、

この事業を始めるために、いくら必要なのか。

そこから考えてみることにしました。

開業時に必要なお金を洗い出してみる

二人が考えた主な支出は、次のようなものでした。

項目概算
ワインの保管設備15万円
棚など3万円
梱包・発送用品6万円
ECサイトの初期費用5万円
撮影・照明用品2万円
その他の備品など5万円
会社設立・酒販免許取得関係40万円
初回のワイン仕入れ35万円
合計111万円

もっとも、すべて新品で揃える必要はありません。

お父さんが以前使っていた店舗には、まだ利用できそうな棚や什器があります。

アキさんの父

使えるものまで買い直す必要はないぞ。
商売始める前に金を使うなんて、一番安易なことだからな。

一方、ワインの保管設備については、古いものをそのまま使ってよいか、温度管理なども含めて確認することにしました。

在庫は、多ければよいわけではない

次に二人が考えたのが、ワインの在庫です。

品揃えをよく見せようとすると、つい多く仕入れたくなります。

しかしリエさんは、仕入先ごとに最低発注数量、納期、送料、再発注のしやすさなどを確認していきました。

いつでも補充できる商品なら、最初から何本も持つ必要はありません。

反対に、入荷が不安定な商品や、店の中心にしたい商品なら、ある程度在庫を持つ意味があります。

「何本置きたいか」ではなく、「どのくらいの期間で補充できるか」も見ながら在庫を決める。

初回仕入れは35万円程度を目安にすることにしました。

開業費用だけではなく、開業後のお金も必要

ここでお父さんがもう一つ指摘しました。

アキさんの父

111万円で店を開けるとして、そのあと会社に金が残ってなかったらどうするんだ?

ECサイトの利用料、電気代、通信費、広告費。

ワインが売れなくても、毎月出ていくお金があります。

お父さんは当初、店舗スペースを無償で使ってよいと言ってくれていました。

しかし、二人は会社として事業を始める以上、場所の使用関係や費用負担は明確にしておきたいと考えました。

そこで、店舗スペースの使用料として月1万円、ワインの温度管理などに必要な電気代として月2万円を、お父さんに支払うことにしました。通信回線は会社で契約します。

こうした費用も含め、二人は毎月の固定的な支出を見積もってみました。

項目月額
店舗スペース使用料(父へ支払い)1万円
EC関連費1.5万円
電気代(父へ支払い)2万円
通信費(会社で契約)0.5万円
クラウド等0.5万円
経理・銀行・事務関係0.5万円
広告・SNS等1万円
その他1万円
合計8万円

※Case15の事業を想定した概算です。
これとは別に、決済手数料、梱包資材、送料負担など、売上に伴って増える費用もあります。

粗利は30%程度で考えてみる

リエさんは、実際に扱いたいワインについて、仕入先や取引条件を確認してみました。

商品ごとの仕入条件には幅があります。

そこで今回は、予定する品揃えをもとに、全体では平均30%程度の粗利を見込んで試算することにしました。

これは「ワインショップの粗利率は30%」という意味ではありません。

あくまで、この店が予定している商品構成と仕入条件をもとに置いた数字です。

店頭販売は、最初から順調とは考えない

お父さんの惣菜店にはすでにお客さんがいます。

だからといって、ワインを置けば毎月順調に販売本数が増えるとは限りません。

開業当初は、物珍しさから買ってくれる人がいるかもしれませんが、それが継続するとも限りません。

しかも最初の数か月、アキさんはECサイトの商品ページや写真、発送体制を整える仕事で忙しくなります。

そこで、最初の3か月はECショップの立ち上げを優先し、4か月目ごろからアキさんが週末の夕方に店頭に立つことにしました。

お父さんの料理とワインを組み合わせて紹介するのも、この頃から少しずつ始めます。

店頭販売は、年間300本弱程度を一つの目安にします。

12か月目でも月40本程度。

週末を中心に月8日ほど店頭に立つとすれば、1日5本ほどです。

ECも、最初から大きく売れるとは考えない

ECでは、平均購入単価を、3本で9,000円程度と仮定しました。

最初は月8件程度の注文から始まり、商品ページや料理とのペアリング記事、SNSなどを少しずつ充実させながら、徐々に注文が増えていく計画です。

一方、店頭販売は、平均単価を1本1,800円程度、年間の販売本数を300本弱と見込むと、売上は約54万円になります。

ECについては、年間350件程度の注文を目標とすると、売上は約315万円。

両方を合わせると、初年度の売上見込みは約370万円になります。

売上に対して30%程度の粗利を見込み、そこから決済手数料や梱包・配送関係の変動費、月々の固定費を差し引くと、利益はほとんど残らない試算です。

アキさん

思ったより余裕ないね

リエさん

でも、数字を合わせるために売れることにするのも違うよね。

アキさんの父

そういうことだ。
売上は願望じゃなくて、どうやって売るかまで考えて数字にするんだ。

「手元のお金」と「利益」は同じではない

ここまで二人は、開業に必要な資金と、開業後の売上・利益について考えてきました。

しかし、ここでもう一つ整理しておきたいことがあります。

お金が出ていくことと、その金額がそのまま経費になることは、必ずしも同じではないということです。

例えば、開業時に20万円のワインセラーを購入すれば、手元の現金は20万円減ります。

しかし、一定の設備は購入した年に全額を経費にするのではなく、固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却します。

また、最初に35万円分のワインを仕入れた場合も、現金は35万円減りますが、売れずに残っているワインは在庫として計上されます。仕入れた35万円が、そのまま初年度の売上原価になるわけではありません。

反対に、売上が増えて帳簿上は利益が出ていても、仕入代金や経費の支払いが先行すれば、手元の現金が不足することもあります。

つまり、考えるべきことは二つあります。

  • 資金計画:開業時にいくら必要で、その後も支払いを続けられるだけのお金があるか。
  • 収支計画:売上に対してどのくらいの費用がかかり、利益を出せる見込みがあるか。

酒販免許申請でも、事業を継続するための資金を確保できているか、事業として採算が取れる計画になっているか、両方の視点が大切になります。

では、資本金はいくらにする?

開業時に必要となる資金は約111万円。

さらに、売上が計画どおりにならない場合にも、しばらく事業を続けられるだけの運転資金を残しておきたいところです。

仮に資本金を200万円とすれば、単純計算では、開業時の支出後にも90万円近い資金が残ります。

ただし、会社設立前後の支払時期や会計処理、実際の仕入条件などは、もう少し詰める必要があります。

二人が出せる金額は、それぞれ100万円まで。

そして、以前からアキさんのお父さんも、二人の事業を資金面などで支えたいと申し出てくれています。

ただ、お父さんに加わってもらうとしても、二人が対等に経営するという当初の希望は大切にしたいところです。

お父さんには、どのような形で会社に関わってもらうのか。

次は、合同会社の仕組みを確認しながら、出資と経営のルールを具体的に考えていくことになりました。


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当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワイン輸入会社で輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面から酒販免許取得をサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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