【Case15・第2話】二人で始めるワイン通販―どちらか一人の個人事業で始められる?〈会社設立編〉

友達と副業で通販ワインショップ開店を計画中のイメージ
目次

〈Case15-②〉登場人物と二人の計画

アキさん

・46歳、メーカー勤務(事務職)
・事務やWeb作業が得意
・実家は元洋食店で、現在は父が弁当・惣菜の販売を続けている
・かつての客席スペースは、現在ほぼ物置になっている
・土日休み

リエさん

・46歳、中学時代からのアキさんの友人
・飲食店勤務
・ソムリエ資格あり
・ワインの商品知識や飲食業界での経験がある
・土日は仕事だが、平日に休みを取れることが多い

アキさんの父

・自宅で長く洋食店を営んできた
・現在は洋食店は閉め、店頭で弁当と惣菜の持ち帰り販売をしている
・販売場となる建物の所有者

二人の計画

・本業を続けながら、副業でワインのネット販売を始めたい
・資金は二人で出す予定
・商品選定や仕入れはリエさん、Webや事務はアキさんが中心
・販売場は、アキさんの親が所有する元洋食店の客席スペースを使う予定

第1話では、副業でワイン通販を始めようと考えたアキさんとリエさんが、酒販免許について行政書士に相談しました。二人で対等に資金を出し合い、経営方針を考え、仕事を分担し、利益を分けるつもりです。

ところが、個人事業で始める場合、一つの酒販免許を「個人二人の共同名義」にできないことが分かりました。

「だったら、アキの個人事業で始める?」

リエさん

だったら、アキが個人事業で始めるのが一番簡単じゃない? 

事務もアキの方が得意だし、販売場もアキの実家なんだから。

アキさん

私が自分の名前で酒販免許を取るってこと?

リエさん

そう。それで私はワインを選んだり、仕入れをしたりする。

最初は小さく始めて、軌道に乗ってきた時点で二人の法人にすればよくない?

🍷行政書士

そういう始め方も可能ではあります。

ただ注意しておきたいのが、その場合は、単に酒販免許をアキさんの名前にする、ということではなく、制度上は、ワイン通販事業そのものを、アキさんの事業として行うという形になります。

リエさん

酒販免許の名義だけアキ、ではなく?

🍷行政書士

はい、その事業を行う主体がアキさん、ということになります。

仕入れをするのはリエさん。でも、誰の仕入れ?

リエさん

でも、ワインの仕入れは私がやってもいいんですよね? 
今の店でもワインの発注をしていますし。

🍷行政書士

もちろん、リエさんが商品を選んだり、発注業務をしていただいて構いません。

ただ、このやり方だと、「アキさんの事業のための仕入れ」として行うことになります。

リエさん

なるほど……。
自分たちのワインショップのために私が発注する、じゃないんですね
。

🍷行政書士

そういう整理ですね。

ところで、仕入先はもう考えていらっしゃいますか?

リエさん

今働いているお店にワインを納めてくれている酒屋さんがあります。

私もよく知っているので、まずはそこにお願いしようと思ってました。

🍷行政書士

ちなみに、その酒屋さんが酒類の卸売業免許も持っているかはご存じですか?

リエさん

え? 酒屋さんですよ。

うちの店にも卸しているし、普通に卸売免許も持っているんじゃないんですか?

🍷行政書士

酒販店から飲食店への販売は、実際の取引の現場では『業務卸』などと呼ばれることがありますが、酒販免許上は『小売』に当たります。

なので、その酒屋さんがアキさんたちのような酒類販売業者にワインを販売するには、その酒販店が、卸売業免許を持っていることが必要になります。

リエさん

え~、どこの酒屋さんからでも仕入れられると思ってました……

「半分出すお金」は、何になる?

アキさん

話を戻して、開業資金について聞きたいのですが、仮に私が事業を行う主体になるとしても、予定どおり二人で半分ずつ出す形にはできますよね?

🍷行政書士

そこも整理が必要です。

アキさん一人の個人事業として始めるのに、リエさんがお金を出すのであれば、そのお金をどういう性質のものとして扱うのかを決めておく必要があります。

リエさん

二人のショップだから、普通に半分出すつもりだったんですけど……

アキさん

会社だったら『出資』って言いますよね。
個人事業でも同じじゃないんですか?

🍷行政書士

そこが、会社と個人事業では違ってくるところです。

少なくとも「二人が半分ずつ出資したから、アキさんの個人事業を二人で半分ずつ所有する」と単純には考えられません。

リエさん

じゃあ私が出すお金は?

🍷行政書士

例えばですが、貸付けとして整理することも考えられます。

ただ、税務上・契約上どう整理するかは、実際の形を決めたうえで必要に応じて税理士などにも確認した方がいいでしょう。

リエさん

 『二人で半分ずつ』って思っていたより難しそうですね・・・

利益も半分ずつ……でいい?

リエさん

でも、利益は半分ずつでいいですよね?

🍷行政書士

そこも同じです。

アキさんの個人事業にするのであれば、リエさんがどのような立場で仕事をするのかを決めないまま、単純に『利益の半分を渡す』とは考えない方がいいでしょう。

アキさん

リエを従業員にするってことですか?

🍷行政書士

従業員として働く形もあれば、仕事の内容によっては別の契約関係を考えることもあります。

ただ、お二人が最初におっしゃっていたのは、どちらかが経営者で、もう一人がその仕事を手伝う、というイメージではないですよね?

二人は顔を見合わせました。

リエさん

うん。私がアキのショップを手伝う、というのはちょっと違うかも。

アキさん

そう。二人で一緒にやりたいんだよね。

副業として始めるなら、本業との関係も確認

🍷行政書士

ところで、お二人が副業することには、問題なさそうですか?

アキさん

うちの会社は副業している人もいるので、多分大丈夫だと思います。

🍷行政書士

副業が認められていても、会社を設立して役員になる場合は、別途確認が必要なことがあります。その点も含めて、勤務先の就業規則を確認しておきましょう。

リエさん

私のところも副業そのものは禁止されてないです。

🍷行政書士

リエさんの場合は、現在のお仕事とワイン通販の仕事が近いので、勤務先の業務で知りえた情報の取扱いには気を付けてくださいね。

リエさん

お店の仕入価格や条件を、そのまま自分たちの商売に持ってくるようなことはしない、ということ?

🍷行政書士

そうですね。
勤務先で扱っているワインを自分たちのお店でも販売するかもしれないことは、念のため確認しておくと安心ですね。

販売場になる実家を見てみると……

後日、アキさんはリエさんと一緒に実家へ行きました。

以前はここでアキさんのお父さんが洋食屋を営んでいましたが、今は規模を縮小し、持ち帰り専門で弁当や総菜、オードブルなどを販売しています。

かつての洋食屋の客席部分には、使わなくなった椅子や棚、段ボール箱などが置かれています。

アキさんは、奥の厨房で働くお父さんに声を掛けました。

アキさん

お父さん、この前話したワイン通販なんだけど、この場所を片付けて使っていい?

アキさんの父

ああ、いいよ。
俺はもう厨房と弁当を渡すところさえあれば足りるから。


リエちゃんとやるんだろ?

リエさん

思ってたよりいい場所だね♪

アキさんの父

ただし、商売するならちゃんとやれよ。

友達同士だからって、お金のことを曖昧にするなよ。

アキさん

今まさに、それをどうするかで悩んでるところ!(笑)

「じゃあ、最初から会社にする?」

再び行政書士との相談です。

アキさん

父も場所は使っていいと言っています。

でも、考えれば考えるほど、私一人の個人事業にするのは違う気がしてきました。

リエさん

私も。
アキの事業を手伝うんじゃなくて、二人のワインショップにしたいです。

少し考えて、リエさんが言いました。

リエさん

だったら、最初から二人で会社を作った方がいいですか?

アキさん

でも副業なのに、いきなり会社って大げさじゃない?

リエさん

じゃあ最初はアキの個人事業で始めて、軌道に乗ってきたあたりで法人化する?

🍷行政書士

それも一つの考え方です。

ただ、酒販免許が絡む事業の場合、「まず個人で酒販免許を取って、あとで会社にした時に、その免許をそのまま使う」ことができないのです。

アキさん

えっ?
法人にしたら免許はどうなるんですか?

二人は、「とりあえず一人の個人事業で始めれば簡単」と考えていました。

しかし、一人の個人事業として始めるのであれば、事業も仕入れもその人が主体になります。

もう一人が出す資金や、仕事に対する対価についても整理が必要です。

二人が思い描いていた「二人で経営するワインショップ」とは、少し違う形が見えてきました。

そこで出てきたのが、最初から会社を作るという選択肢です。

一方で、副業として小さく始めたい二人にとって、法人設立には費用や手続、設立後の負担もあります。

そして、「まず個人で始めて、後から法人にする」という方法にも、酒販免許との関係で考えておかなければならないことがあります。

次回は、二人が「個人で始めて後から法人化する」のか、「最初から二人で会社を作る」のかを考えていきます。


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酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワイン輸入会社で輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面から酒販免許取得をサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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