【酒販免許】収支計画はどう考える? ― 売上を大きく書けば有利、ではありません ―

行政書士が収支計画書を作成している
目次

はじめに

酒類販売業免許を申請する際には、事業計画書の一部として収支計画書を提出します。

「売上は大きく書いた方が印象がいいのでは?」
「利益が出る計画にしないと不利?」

そう考える方も少なくありません。

しかし、税務署が収支計画を見る目的は、単純に売上や利益の大小を比べることではありません。

大切なのは、その事業計画に現実性があり、継続して事業を営めるだけの経営基盤があるかどうかです。

今回は、酒販免許申請で提出する収支計画書を題材に、「どのように考えればよいのか」、そして「税務署は何を見ているのか」という視点から解説します。

なぜ収支計画を提出するのか

酒販免許は、「免許を取得したら終わり」ではありません。

継続して適正に酒類販売業を営めることが前提となります。

そのため税務署では、

  • どのような事業を考えているのか
  • 売上はどのように見込んでいるのか
  • 必要な資金は確保できているのか

などを、収支計画を通じて確認します。

これは酒類販売業免許の審査で見られる「経営基礎要件」と呼ばれる基準の一部でもあります。

経営基礎要件では、継続して事業を営めるだけの資金力や経営の安定性などが確認されます。

収支計画書は、その裏付けとなる具体的な数字を示す書類という位置づけです。

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税務署は「利益の大きさ」を見ているわけではない

ここで誤解されやすいのですが、税務署は「利益が大きい事業だから許可する」という考え方ではありません。

むしろ、その数字に無理がないかという点を重視します。

例えば、

  • 開業初月から毎月500万円売れる計画
  • 仕入れや経費が極端に少ない計画
  • 根拠のない急成長を前提にした計画

こうした数字は、かえって現実性に疑問を持たれる可能性があります。

売上を大きく書けば有利、ではありません

「売上は大きいほど良い」

そう考えたくなる気持ちは分かります。

しかし、売上金額が増えれば、

  • 仕入れも増える
  • 在庫も増える
  • 必要資金も増える

ということになります。

つまり、売上金額だけを大きくしても、事業全体との整合性が取れなければ意味がありません。

収支計画は、数字同士のつながりを見る書類でもあります。

「継続して事業を営めるか」という視点

税務署が確認したいのは、この申請者は、

継続して酒類販売業を営めそうか

ということです。

例えば、

  • 自己資金は十分か
  • 開業後しばらく売上が伸びなくても耐えられるか
  • 販売方法は現実的か
  • 事業規模は資金に見合っているか

こうした点は、収支計画だけでなく、提出書類全体から総合的に判断されます。

現実的な収支計画を作るポイント

収支計画を作るときは、「理想」ではなく、「現実」から考えることが大切です。

例えば、

  • 販売ターゲットとチャネル
    誰に、どうやって(店舗・ECなど)売るのか
  • 売上の根拠
    平均販売単価と想定販売本数から、現実的な売上になっているか
  • 原価と経費
    仕入れコストだけでなく、家賃・保管料・送料・決済手数料などの経費を漏れなく計上しているか

こうした数字を一つひとつ積み上げていく方が、説得力のある計画になります。

ワインショップ開業の収支シミュレーションとの違い

以前の記事、【ワインショップ開業⑩】「ワインショップは何本売れば食べていける?」 では、

「生活できる売上」という視点からシミュレーションを行いました。

具体的には、「平均販売単価×想定販売本数」で月の売上を積み上げ、そこから仕入原価率をもとに粗利を出し、家賃や人件費などの固定費を差し引いて手元にいくら残るかを確認する、という順番で組み立てました。

一方、酒販免許申請で提出する収支計画は、「税務署へ提出する事業計画」です。

目的は少し異なりますが、売上や経費を現実的に考えるという意味では、考え方の土台は共通しています。

例えば、ワインショップ開業ガイド では、

「平均単価3,000円のワインを月410本販売する」

というシミュレーションをご紹介しました。

この数字をそのまま申請書へ記載するという意味ではありませんが、税務署が知りたいのは、「月410本」という数字そのものではありません。

なぜ、その数字になると考えたのか。

その根拠を説明できる事業計画になっているかどうかです。

実際には、

  • ECサイトを中心に販売するのか
  • 実店舗も併設するのか
  • 飲食店向け販売も行うのか
  • 既に取引先や見込み顧客がいるのか

によって、現実的な売上の見込みは変わってきます。

収支計画は、単に数字を書くだけの書類ではありません。

その数字に至った考え方や事業内容と整合しているかという点も重要になります。

行政書士が収支計画を作成する際も、単に数字を表へ当てはめるのではなく、その事業内容や販売方法と矛盾がないかを確認しながら組み立てていきます。

酒販免許申請書の収支見込み(次葉4)では、どの項目に記載する?

酒販免許申請書の「収支の見込み(次葉4)」には、売上だけでなく、売上原価や販売費・一般管理費などを記載します。

例えば、ワインショップ開業シリーズ⑩ で紹介したシミュレーションを当てはめると、おおむね次のようなイメージになります。

ワインショップ開業⑩の項目次葉4の項目
売上高売上(収入)
ワインの仕入れ売上原価
家賃(事業分)販売費・一般管理費
通信費販売費・一般管理費
EC利用料販売費・一般管理費
広告宣伝費販売費・一般管理費
荷造運賃販売費・一般管理費
消耗品費販売費・一般管理費

このように、まず売上から売上原価を差し引いて粗利(売上総利益)を算出し、その後に販売費・一般管理費を差し引いて最終的な利益の見込みを組み立てていきます。

実際の申請では、事業内容によって必要となる経費項目は異なります。次葉4は数字を埋めることが目的ではなく、事業計画と整合した収支になっていることが大切です。

まとめ:収支計画は「夢を書く書類」ではありません

収支計画は、「こうなったらいいな」を書く書類ではありません。

また、「大きな数字を書けば有利」というものでもありません。

大切なのは、

  • 現実的な販売計画
  • 無理のない資金計画
  • 継続して事業を営めると判断できる根拠

を、数字で示すことです。

収支計画を丁寧に作ることは、酒販免許申請のためだけではありません。

開業後の経営を考えるうえでも、自分自身の事業を客観的に見つめ直す良い機会になるでしょう。


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酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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