【酒販免許】免許を取った後も税務署への手続がある?―酒類販売業者の届出・報告を整理

ワインショップのバックオフィスで仕入れ・販売の管理をしているイメージ画像
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はじめに:酒販免許は、取得したら手続が終わるわけではない

酒類販売業免許を取得して、いよいよお酒の販売をスタート。

ここまでくれば、税務署への手続はひとまず終了――と思うかもしれません。

しかし、酒類販売業者には、免許取得後もさまざまな義務があります。

日々の仕入れや販売について帳簿を付けるほか、毎年提出する報告書もあります。また、会社名や役員、販売場の名称などに変更があった場合や、販売場を移転する場合などには、それぞれ必要な手続を行わなければなりません。

手続によって、

  • 販売を始める際に行うもの
  • 日常的に行うもの
  • 毎年行うもの
  • 変更があったときに行うもの
  • あらかじめ許可を受けなければならないもの

があり、すべて同じではありません。

今回は、酒販免許を取得した後に必要となる主な手続や報告について、全体像を整理します。

日々必要になるのは、仕入れ・販売の記帳

まず、免許を取得して酒類の販売を始めると、日々の取引について帳簿を付ける必要があります。

酒類販売業者には、酒類の仕入れや販売について、酒類の品目、数量、価格、取引年月日、取引先など、所定の事項を記帳する義務があります。

もっとも、小売販売の場合には、一般の消費者一人ひとりの氏名や住所を記録するということではありません。
一定の要件を満たす小売販売については、3か月を超えない期間の合計数量をまとめて記帳できる取扱いもあります。

帳簿は販売場ごとに備え付け、帳簿を閉鎖した後も5年間保存する必要があります。

こうした日々の記録は、単に「帳簿を付けるため」だけのものではありません。
毎年提出する販売数量の報告にもつながっていきます。

毎年4月30日までに提出する「酒類の販売数量等報告書」

酒類販売業者が毎年行う代表的な手続が、「酒類の販売数量等報告書」の提出です。

酒類販売業免許を受けている事業者は、毎年度(4月1日から翌年3月31日まで)に販売した酒類の数量や、3月31日時点で保有している酒類の数量などを、翌年度の4月30日までに税務署へ報告します。

ここで報告するのは、単純な「ワインを○本販売した」という本数ではありません。

酒税法上の品目ごとに、販売数量などをリットル単位で整理します。

たとえば、750ml入りのワインを100本販売した場合には、

750ml × 100本 = 75,000ml = 75ℓ

となります。

普段のお店では、「赤ワイン」「白ワイン」「スパークリングワイン」など独自の商品分類で管理していることも多いと思いますが、税務署への報告では、酒税法上の品目に沿って整理する必要があります。

そのため、年度末になってから一年分を数え直すのではなく、日頃から販売数量や在庫数量を把握できるようにしておくことが大切です。

なお、その年度に酒類の販売実績がなかったからといって、免許を受けている以上、報告そのものが不要になるわけではありません。

※ 飲食店が酒販を始める場合の販売数量や在庫、POSを使った管理の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

小売業者には、もう一つ毎年の報告がある

酒類の小売販売を行う事業者には、もう一つ毎年提出する報告書があります。

正式名称は、「『二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準』の実施状況等報告書」です。

こちらも原則として毎年4月30日までに提出します。

名前だけを見ると、「20歳未満の人に販売していないことを報告する書類?」と思うかもしれませんが、そうではありません。

酒類販売管理者や酒類販売管理研修、20歳未満の者の飲酒防止に関する表示などの実施状況に加え、店舗の業態や営業時間など、販売場に関する事項を報告するものです。

酒類販売管理者は、選任して終わりではありません。
酒類販売管理者を選任したときは、選任した日から2週間以内に「酒類販売管理者選任(解任)届出書」を所轄税務署へ提出する必要があります。

また、免許取得後も研修の受講や標識の掲示などが必要となり、その販売管理の状況が毎年の報告にもつながっています。

なお、この報告書は酒類の小売販売を行う事業者が対象です。卸売のみを行う事業者が、販売数量等報告書とあわせて必ず2種類提出するという意味ではありません。

※ 酒類販売管理者制度については、こちらの記事で詳しく解説しています。

会社名や役員などが変わったときは「異動申告」

毎年の報告とは別に、免許を取得した後に変更が生じた場合にも手続が必要です。

たとえば、

  • 法人の名称が変わった
  • 役員に変更があった
  • 販売場の名称を変更した
  • 区画整理などによって販売場所在地の地名や地番の呼称が変わった

といった場合です。

こうした変更については、「異動申告書」を提出します。

ここで少し分かりにくいのが、「異動」と「移転」の違いです。

「異動」と「移転」は似ているけれど、手続は違う

「異動」と「移転」は、日常の言葉ではよく似ています。

しかし、酒販免許では区別して考える必要があります。

簡単に整理すると、

異動
法人名や役員、販売場の名称、区画整理などによる所在地の表示など、免許取得後に一定の事項が変わった場合

移転

酒類を販売する店舗や事務所そのものを、別の場所へ移す場合

という違いがあります。

たとえば、区画整理によって「○○町1番地」という地番の呼び方が変わっても、実際のお店が動いたわけではありません。この場合は「異動」です。

一方、現在の店舗を閉めて、別の建物へ酒販店を移す場合は「販売場の移転」になります。

こちらは、住所変更の届出をすればよいというものではありません。

酒販免許は販売場を単位として付与されるため、販売場そのものを移す場合には、移転する前に税務署長の許可を受ける必要があります。

「会社は同じだから、所在地だけ変更すればよい」と考えないよう注意が必要です。

販売を休止・再開するときにも申告が必要

事業を一時的に休止する場合や、休止していた酒類販売業を再開する場合にも申告が必要です。

酒販免許を取得したまま、長期間まったく販売を行わないケースも考えられます。

「販売していないから税務署への手続も何もない」というわけではなく、事業の状況に応じた手続が必要になることは覚えておきましょう。

販売場とは別に倉庫を設ける場合は「蔵置所」の報告

事業が始まり、取扱量が増えてくると、販売場だけでは商品を保管しきれず、外部に倉庫を借りることもあります。

酒類販売業者が、販売場とは別の場所に酒類を保管する「蔵置所」を設ける場合には、あらかじめ税務署へ報告します。

ただし、蔵置所はあくまで酒類を保管する場所であり、酒類販売業免許を受けた「販売場」ではありません。そのため、蔵置所で注文を受けるなどの販売行為を行うことはできません。

また、外部倉庫を利用すればすべて蔵置所に該当する、という単純なものでもありません。利用形態によって検討が必要になります。

※ 販売場と蔵置所の違い、外部倉庫を利用する場合の考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

事業を広げるときにも、酒販免許の確認を

酒販免許を取得した後、事業を続けていくなかで、新しい販売方法を考えることもあるでしょう。

たとえば、

  • 普段の販売場とは別の場所で、お酒を販売したい
  • イベントや催事に出店して、ボトルを販売したい
  • 新しい店舗を出したい
  • これまで小売だけをしていたが、通販や酒類販売業者への卸売も始めたい

といったケースです。

このような場合、すでに酒販免許を持っているからといって、そのまま新しい場所や販売方法で酒類を販売できるとは限りません。

酒販免許は販売場ごとに受けるのが原則であり、別の場所で販売する場合には、その販売方法や期間などに応じて、新たな免許や期限付酒類小売業免許などの手続が必要になることがあります。また、現在受けている免許の内容によっては、免許条件の緩和などの手続が必要になる場合もあります。

「今持っている免許で、新しく始めたい販売ができるのか」

事業内容を変更したり、販売する場所を増やしたりするときには、実際に販売を始める前に確認しておくことが大切です。

毎年の報告はe-Taxでも提出できる

ここまで紹介した手続のうち、毎年提出する「酒類の販売数量等報告書」と「『二十歳未満の者の飲酒防止に関する表示基準』の実施状況等報告書」は、e-Taxでも提出することができます。

国税庁では、この2つの報告書について、e-Taxで提出するための作成用ツールや操作方法も案内しています。

免許取得後は毎年必要になる手続ですので、日頃の販売・在庫管理とあわせて、どのような方法で報告するかも確認しておくとよいでしょう。

まとめ:免許取得後の管理まで考えて準備しておこう

酒類販売業免許を取得すると、そこで税務署との手続がすべて終わるわけではありません。

日々の仕入れや販売について帳簿を付け、毎年必要な報告を行うほか、会社や販売場、事業内容などに変更が生じたときには、その内容に応じた手続が必要になります。

なかでも、販売数量等報告書は、日々の販売・在庫管理の積み重ねがそのまま基礎になります。

免許取得後になって慌てないためにも、これから酒販ビジネスを始める段階で、「どのように仕入れ・販売・在庫を管理していくか」まで考えておくことが大切です。

また、販売場を移す場合のように、変更後の届出ではなく、事前に許可を受ける必要がある手続もあります。

免許取得後に事業内容を変更したり、新しい場所や方法で酒類の販売を始めたりするときは、「免許はもう取っているから大丈夫」と考えず、現在の免許で予定している販売ができるのか、あらかじめ確認しておきましょう。


酒販免許の種類や取得要件について知りたい方はこちら

酒類販売を始めたい方に向けて、酒販免許の種類や選び方、取得要件、申請手続きなどを分かりやすく解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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