【ワイン輸入①】ワイン輸入の全体像を解説

ブルゴーニュのテイスティングルーム
目次

はじめに:海外で出会ったワインを輸入して販売したい!

旅先のテイスティングルームで出会った一本のワイン。

「このワイン、日本で売ったら面白いのに。」

そう思ったことのある方は、少なくないのではないでしょうか。

「自分でワインを輸入して販売したい」と思うのは、ワイン好きにとってはごく自然なことだと思います。

ただ、実際に輸入ビジネスを始めようとすると、「何から手をつければいいのか」がなかなか分かりません。ネットで調べても、断片的な情報ばかりで、全体像が見えてこないことも少なくありません。

この記事では、ワインを輸入して販売するまでの全体の流れを、順を追ってご紹介します。

その後の記事では、酒販免許、ワイナリーとの商談、輸送、通関など、それぞれの工程について詳しく解説していきます。

まず確認したいこと―「生産者は日本に輸出したいか?」

輸入手続きの話に入る前に、まず大前提を押さえておきましょう。

それは、「そのワイナリーが日本への輸出に前向きかどうか」です。

小規模な生産者の中には、

  • 地元や国内での販売だけで手一杯
  • 輸出の手続きや書類が煩雑で対応できない

というケースがあります。

また、すでに日本の輸入業者と独占契約(エクスクルーシブ契約)を結んでいたり、現地の販売エージェントを通じた取引しか行っていないため、生産者と直接取引を開始できない場合もあります。

せっかくビジネスプランを練り始めても、後から「日本への輸出は考えていない」「直接取引はできない」と分かっては元も子もありません。まずは早い段階で、生産者の輸出方針や取引条件を確認しておくことをおすすめします。

輸入したいワイナリーが見つかったときに、最初に確認しておきたいポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

まずは全体の流れを順番に見ていきましょう。

誰に売るかを決める(販売先・販売方法の検討)

生産者側に輸出の意思があることを確認できたら、次はいよいよ日本側の準備です。

最初に決めるべきことは、「誰に、どのような形で販売するか」です。

ただし、これはビジネス戦略の話ではなく、取得しなければならない「酒販免許の種類」の話です。

輸入の場合の酒類販売業免許は、「輸入酒類卸売業免許」が必要と思われるかもしれませんが、実際はそうではありません。販売先や販売方法によって取得する酒販免許は異なります

  • 自社の実店舗で一般消費者向けに販売
    一般酒類小売業免許
  • 自社のECサイトで通信販売
    通信販売酒類小売業免許
  • 飲食店へ販売(店内で提供するための販売)
    一般酒類小売業免許
  • 酒類販売業者(酒販店など)へ販売
    輸入酒類卸売業免許

なお、酒販免許を持っていて、すでにワインショップを経営されている方は、既存の酒販免許(小売・通販)の販売可能先の範囲内で、自らワインを直輸入して販売することができます。

ただし、この機会に販路を広げて、他の酒類販売業者(酒販店など)に卸売もしたいという場合は、別途、輸入酒類卸売業免許が必要になります。

※ 飲食店は酒類販売業者ではないため、飲食店への販売は小売販売として扱われ、「一般酒類小売業免許」で販売できます。ただし、輸入したワインを酒販店(卸売業者・小売業者)を通じて飲食店に納品する場合は、販売先が酒類販売業者となるため、「輸入酒類卸売業免許」が必要になり、注意が必要です。

お酒の販売に関しては、「とりあえず仕入れてから売り先を考える」とか「免許を取ってから売り先を考える」という順番はできません。

誰に売るかが決まらないと、免許の種類が決まらず、税務署に免許の申請ができません。最初にここを固めることが、手続きの第一歩になります。

輸入ワインを販売するときに、どの酒販免許が必要になるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

法人を設立する(必要な場合)

個人事業主として始めることも可能ですが、取引規模・取引先・信用面を考慮すると、法人格を取得して取引する方が好ましい場合もあります。海外のワイナリーとの契約や、小売店等への卸売展開を考えている場合はなおさらです。

法人設立で押さえておくべきポイントは、定款の目的欄に「酒類の輸入、販売及び卸売」に関する記載を入れることです。また、登記内容と酒販免許申請の内容が整合している必要があります。法人設立と酒販免許申請は別の手続きですが、酒販免許申請では税務署の審査対象にもなるため、一緒に進めたほうがスムーズです。

個人事業主として始めるか、それとも最初から法人を設立するかについては、こちらで考察しています。

法人を設立する際の注意点は、こちらで解説しています。

酒販免許を申請する

輸入したワインを国内で販売するには、販売方法や販売先に応じた酒類販売業免許が必要です。

酒類販売業免許の標準処理期間は原則として2か月ですが、申請前には必要書類の収集や販売場、事業計画などの準備も必要になります。実際に事業を開始する時期から逆算して、余裕をもって準備を進めておきましょう。

「免許が下りてから輸入準備を始めよう」と考えていると、大幅に時間をロスします。
税務署の審査期間中を有効に使い、ワイナリーとの商談や輸送手配など、並行して進められる準備を進めておくといいでしょう。

新たに酒販免許を申請する際の注意点などは、こちらで解説しています。

ワイナリーとの商談

ワイナリーとは、次のような内容を確認・合意しましょう。

  • サンプルの取り寄せ(試飲・品質確認)
  • 価格(出荷価格・建値)
  • MOQ(Minimum Order Quantity:最低発注数量)
  • 支払条件(前払い・後払いなど)
  • エクスクルーシブ(独占輸入)契約の有無 ※
  • 現地ラベルの表示内容の確認
  • 発注内容(正式な発注書を出す前に注文内容を確認します)

ワイナリーとの商談で具体的に何を確認するのかについては、実務経験をもとにこちらの記事で詳しく解説しています。

エクスクルーシブ契約は、日本市場での独占的な輸入権を持てる一方で、発注量の確約が求められることが多く、小規模スタートでは慎重な判断が必要です。

輸送業者の選定

発注することが確定したら、輸送業者を決めます。

ヨーロッパの生産者は、取引条件(建値)として、EXW(営業所渡し/ワイン業界では「Ex-cellar(セラー渡し)」とも呼ばれます)を提示するケースが比較的多い傾向があります。
なお、新世界(チリ・オーストラリア・アメリカなど)はFOB(本船渡し)が多い傾向があります。

この建値によって、輸送費の負担区分や責任負担の範囲が変わってきます。
EXWの場合は、日本でフォワーダーを選任して、ワイナリーへの集荷から手配する必要があります。

ワインの輸送では温度管理が重要なため、フォワーダー選びは品質管理の観点からも非常に重要なステップです。

発注書

正式な発注書(Purchase Order:PO)を作成し、責任者が署名して輸出者へ送信します。
輸出者からは、注文内容を確認するためのProforma Invoice(プロフォーマ・インボイス)が返信されるのが一般的です。

発注したら、インコタームズ(建値:取引条件)に応じて、必要な場合は海上保険も手配します。

実際には、オーダーを出した後から船が到着するまでにも、輸入者側で進めておく準備が数多くあります。
必要書類や通関準備についてはこちらで詳しく解説しています。

海外送金

当初の契約で決めた期日で商品代金を支払います。

輸入・通関・食品検査

ワインが日本に到着する前から、通関の手配を進めます。

輸出業者からインボイス、パッキングリスト、成分分析表、船荷証券(B/L)、原産地証明書などを入手し、内容を精査したうえで、通関業者(通関や港での手続きを代行する業者。いわゆる「乙仲」)に輸入通関を依頼します。

一般的な通関・輸入許可までの流れは次のとおりです。

  • 食品衛生法に基づく届出(厚生労働省) 
  • 輸入食品の検査(必要に応じて) 
  • 税関への輸入申告
  • 酒税・関税・消費税の納付
  • 輸入許可
  • 保税倉庫から貨物を搬出

この一連の手続きの間に、コンテナを港から保税倉庫へ搬入するための手配や、輸送業者への運賃・各種費用の支払いが行われます。

晴れて輸入許可が下りると、それまで「外国貨物」として保税管理されていた貨物は、国内流通できる「内貨(ないか)」となります。日本語の「輸入者ラベル」の貼付が整い次第、いよいよ出荷可能になります。

輸入後の検品や商品情報の作成、販売・販促については、このあとの記事で順番に解説しています。

まとめ:売り先により、ワインの輸入に必要な免許は変わる

今回は、ワインを輸入し、販売できる状態になるまでの大まかな流れを整理しました。

「輸入酒類卸売業免許」という名称から、「酒類を輸入する人は全員この免許が必要」と思われがちですが、実際はそうではありません。酒類の販売先によって必要な免許が変わることを理解しておくことが、ワイン輸入を始める第一歩になります。

ただし、酒販免許の取得は、一連のプロジェクトの一部にすぎず、輸入手続きだけでもかなりの手続きが必要になります。

輸送、保険、通関、倉庫、ラベル、資金計画、販売計画など、多岐にわたる要素を同時進行で考えていく必要があります。初回はお試しで少量輸入で小さく始める場合でも、販売目的で輸入する場合は、これらの工程を免れることはできません。

また通関費用などは、輸入数量に関わらず定額でかかるものが多く、1本あたりのコストが割高になりがちです。だからこそ、最初に全体の流れを理解し、計画的に準備を進めることが成功への近道です。

次回以降は、酒販免許やワイナリーとの商談、輸送、通関など、それぞれの工程を詳しく解説していきます。


もっとワイン輸入について知りたい方はこちら

海外で見つけたワインを日本へ輸入・販売したい方に向けて、ワイナリー探しから商談、国際輸送、通関、日本語ラベル、販売準備まで、ワイン輸入の実務を順番に解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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