はじめに
海外から輸入したワインは、誰に、どのような価格で販売するのでしょうか。
価格は輸入者が自由に決められると思われがちですが、実際には、インポーターは、酒販店・飲食店・一般消費者など、それぞれの販売ルートを意識しながら価格体系を設計しています。
今回は、インポーターがどのような販売ルートを持ち、それぞれの販売先にどのような考え方で価格を設定しているのか、その全体像をご紹介します。
希望小売価格が、価格設計の出発点
輸入ワインの場合、海外のワイナリーが日本国内での販売価格まで指定してくることはほとんどありません。
ワイナリーが決めるのは、あくまで「輸入者へ販売する価格(EXWやFOBなど)」までです。そこから先、日本国内での「希望小売価格」を決めるのはインポーターの役割です。
シリーズ第5回 でもご紹介したように、輸送費、関税、酒税、保管費などを積み上げて算出する方法もあれば、市場での競争力や一定の利益率を考慮して組み立てる方法もあります。
こうして決まった希望小売価格が、その後の販売価格を設計する際の基準となります。
販売先によって、適用する価格は異なる
希望小売価格が決まった後、インポーターは販売先に応じて適用する価格を設定します。
例えば、
- 酒類卸売業者(問屋)への卸価格
- 酒販店(小売店)への仕切価格
- 飲食店への直接販売(業務用)価格
- 一般消費者への直販価格(自社EC、アンテナショップなど)
これらは一律ではなく、取引数量や決済条件、販売形態などに応じて複数の価格区分が設けている会社もあります。
その考え方や運用方法は、インポーターごとの販売戦略が色濃く表れる部分です。
酒販店との関係を重視した価格設計
インポーターにとって酒販店は、自社の商品を広く販売してくれる重要な販売パートナーです。
そのため、多くの会社では、酒販店との継続的な取引を意識した価格設計を行っています。
例えば、飲食店への直接販売(業務用販売)を行う場合でも、卸先の酒販店の利益を圧迫しないよう、価格差に配慮する会社は少なくありません。
一方で、最初から飲食店向け販売を主力事業とするインポーターもあり、どの販売ルートを重視するかによって、価格体系も変わります。
つまり、「これが業界共通のルール」というものがあるわけではなく、それぞれの会社が販売戦略に合わせて価格設計を行っているというのが実態です。
このように、価格は単に利益率だけで決められるものではなく、どの販売チャネルをどのように育てていくかという経営判断も反映されています。
なお、飲食店向け販売では、インポーターが直接納品するケースだけでなく、飲食店が普段から取引している酒販店を通じて商品を供給する「帳合(ちょうあい)」の仕組みもよく利用されます(詳しくは シリーズ第2回 をご覧ください)。
こうした流通形態も、インポーターが販売戦略を考える上で重要な要素の一つとなっています。
自社ECでも価格を崩さない理由
近年は、自社ECショップを運営するインポーターも珍しくありません。
以前は酒販店への配慮からBtoCの直接販売を行わない会社もありましたが、現在ではごく一般的になっています。
しかし、自社ECだからといって、大幅な値引き販売を行うことは基本的にありません。
既存の酒販店や飲食店との信頼関係を守るため、「希望小売価格での販売」を原則としているケースがほとんどです。
自社ECで販促キャンペーンを行う場合でも、単純な値下げではなく、会員限定クーポン、ポイント付与、限定セット販売などを組み合わせ、「希望小売価格を維持しながら、購入しやすくする」工夫をしています。
また、ECショップ限定ワインをラインナップすることで、卸売先とバッティングしないようチャネルごとの役割を分けているインポーターもあります。
まとめ:価格表には、その会社の販売戦略が表れている
輸入ワインの価格は、インポーターが自ら設計するものです。しかし、その数字は単にコストと利益の計算だけから決められるものではありません。
- どの販売ルートを主戦場にするのか
- 酒販店とどのようなパートナーシップを築くのか
- 市場競争力はあるか
- 自社ECをどのような位置付けにするのか
こうした販売戦略を踏まえながら、価格体系は組み立てられています。
輸入ワインは、海外から仕入れて販売すれば終わりではありません。誰に届けるのか、どの販売ルートを育てるのかという販売戦略があって初めて、その価格が決まります。
インポーターの価格表は、単なる数字の一覧ではなく、その会社がどのような販売を目指しているのかを映し出す一枚の資料とも言えるでしょう。
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