【ワイン輸入シリーズ⑫】 輸入実務を任せるという選択肢― 自分が見つけたワインを日本で販売するために ―

ワインのインポーターとお客さんが代行輸入の商談中
目次

はじめに

これまで本シリーズでは、ワイナリー探しから、商談、発注、輸送、通関、ラベル表示、そして販売に至るまで、ワイン輸入の一連の流れを紹介してきました。

ここまで読んで、「思ったよりハードルが高そうだ…」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ビジネスの現場では、必ずしもすべてを自社だけで行わなければならない、というわけではありません。

実際、海外で気に入ったワインを見つけたけど、自社輸入のハードルの高さから諦めてしまうのではなく、周囲の力を借りてそのワインを日本に仕入れる道を探る人たちがいます。

今回は、「輸入実務を経験のあるインポーターに任せる」という、少し視点を変えた選択肢をご紹介します。

実際にはさまざまな進め方がある

例えば、海外で魅力的なワインに出会ったとしても、その後のプロセスには多大な労力が伴います。

  • ワイナリーとの商談
  • フォワーダー(輸送業者)の手配
  • 通関依頼
  • 倉庫会社との調整
  • 日本語ラベルの手配

特に輸入実務が初めての場合、時間も手間もコストもそれなりにかかるものです。

そのため、ワインショップやレストランのオーナーが、すでに経験のあるインポーター(輸入業者)に相談し、その協力を得ながらワインを取り扱うケースもあります。

ここでは、私自身が実際に経験した「自社直輸入以外の方法」をご紹介します。

気に入った海外ワインを扱うための3つの選択肢

ケース1:取引のあるインポーターに「通常商品としての輸入」を相談する

海外で飲んで気に入ったワインを自分の店で扱いたいけれど、自社での輸入は難しいという場合です。

すでに取引のあるインポーターへ相談し、「もし輸入してもらえるなら、自店の定番として月に〇〇ケースは確実に購入します」と確約します。そして、残りの数量はそのインポーターの通常ラインナップとして、他のお客様へ自由に販売してもらうという方法です。

インポーター側としても、あらかじめ一定の販売先が確保された状態での発注になるため、比較的相談に応じやすいケースと言えるでしょう。

ケース2:取引のあるインポーターに「輸入実務」を依頼する

ケース1とは異なり、「そのワインを自店だけの専売商品(オリジナル商品)として扱いたい」という場合もあります。

この場合はインポーターに相談し、仕入れてもらった分を全量一括で買い取ることを前提に、輸入実務を担ってもらう形になります。

ケース3:海外のワイナリーから、取引のある日本のインポーターに依頼が入る

ケース2と少し似ていますが、進め方の順番が異なる、やや珍しいケースもあります。

ショップ側が自分で日本のインポーターを探すのではなく、気に入った海外のワイナリーへ直接相談したことがきっかけで始まったケースです。

その相談を受けたワイナリーから、普段取引のある日本のインポーターへ「その店の分も一緒に船積みできないか?」と問い合わせが入り、インポーターが輸入実務を引き受けることになった、という例です。

いずれも、インポーターとワイナリーの間に既に取引関係があったからこそ実現したケースです。

こうした方法は一般的なサービスではなく、既存の信頼関係や、双方にとってのメリットが噛み合って初めて成り立つものと言えるでしょう。

「輸入実務」を依頼する場合の「条件」の考え方

ケース2・ケース3のような場合の取引価格は、

  • 通常のインポーター仕入れと同じように、一定の掛け率で卸してもらう
  • 輸入に実際にかかった実費に、一定の「輸入代行手数料」を上乗せして清算する

といった形が考えられます。どちらになるかは、インポーターとの個別の話し合いで決まることになるでしょう。

3つのケースに共通する条件と留意点

これらの方法を利用するにあたっては、いくつか理解しておくべき共通の条件があります。

  • コンテナのスペース確保が前提
    インポーターが自社の定期発注を行う際、そのコンテナ内に1〜数パレット分の枠(スペース)を融通してもらう形になります。
  • スケジュールはインポーター次第
    輸入の時期は、インポーター側の発注スケジュールに合わせる必要があります。
  • 全量引き取りが基本
    ケース1のような特例を除き、輸入された商品は依頼者側が全量一括で引き取るのが基本です。

「頼めばいつでもすぐにやってもらえる」という一般的なサービスではなく、引き受けるインポーター側がメイン業務の傍らで、細かな調整をして例外的に引き受ける業務である点は、依頼する側としても心に留めておきたいポイントです。

事務負担は大きいが「保税転売」という方法も

もう一つ、さらに実務的に踏み込んだ選択肢として「保税転売」という仕組みもあります。

これは、貨物が日本に到着した後、通関(輸入申告)を迎える前に売買契約を行い、保税地域の中で商品の所有権を移転させる方法です。その後、所有権を譲り受けた依頼者(ショップなどの購入者)が自らの名義で輸入申告を行います。

この方法のメリットの一つは、商品のバックラベルに記載される「輸入者名」を、実務を代行したインポーターではなく、依頼者(購入者)の名義にできる点にあります。

ただし、この手続きを進めるには、通関業者や倉庫会社を巻き込んだ事前の個別契約が必要となるほか、税関のシステムへの登録、日本語ラベルの手配など、煩雑な事務作業が発生します。

そのため、単発(スポット)の取引というよりは、将来的な継続取引を前提として選択されるのが一般的です。

大切なのは「目的に合った方法を選ぶこと」

海外で見つけた素晴らしいワインを日本に届けたいと考えたとき、自社ですべて手配して直輸入することだけが選択肢ではありません。既存のインポーターとの信頼関係やネットワークを活かし、その協力を得ながら進めるのも賢明な方法です。

一方で、もしそのワインを今後何年も継続して大量に輸入する見込みがあるならば、将来的には自社で輸入実務を行える体制を整えていく意味は大きいでしょう。

まずはできるところからスタートし、少しずつノウハウを蓄積していくのも、立派な戦略のひとつです。

まとめ:ワインを届ける形はひとつではない

本シリーズを通じて、「ワイン輸入=自社直輸入」というイメージを持たれた方も多かったかもしれません。

しかし実際のワインビジネスでは、さまざまな段階でいくつもの事業者同士が協力し合って、ワインが日本へ届けられています。

輸入実務に関しても、信頼できるインポーターに委託することは、双方にとってメリットのある関係を生み出します。

  • インポーター側
    実務経験やネットワークを活かして、在庫リスクを抑えながら収益を得られる
  • 依頼する側
    不慣れな手続きによるリスクやトラブルを回避し、本業に集中しながら欲しいワインを仕入れられる

ただし、こうしたイレギュラーな対応を受け付けるかどうかは、各インポーターの経営判断によります。

決して「一般的なサービス」として広く提供されているわけではありません。あくまで、これまでの取引で築いてきた信頼関係や、お互いのビジネス上のメリットが合致したときに初めて成り立つ選択肢です。

すべてのインポーターが対応しているわけではありませんが、自社での直輸入に不安がある場合は、取引先へ相談してみることで、新たな道が開けることもあるかもしれません。


ワイン輸入実務ガイド

海外で見つけたワインを日本へ輸入・販売したい方に向けて、ワイナリー探しから商談、国際輸送、通関、日本語ラベル、販売準備まで、ワイン輸入の実務を順番に解説しています。



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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務など幅広く経験し、その現場経験を活かして、ワインビジネスを実務と法律の両面からサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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