はじめに:発注の前に押さえておきたい「フォワーダー」の存在
シリーズ第5回 では、価格表とサンプルをもとに輸入原価を試算し、「売れるかどうか」を判断するまでの流れをご紹介しました。
輸入の判断がつき、条件面でワイナリーと合意ができれば、いよいよ発注です。
ただし、発注書(PO)を送る前に、もう一つ決めておきたい重要事項があります。それが「フォワーダー」です。
今回は、国際輸送の実務を支えるフォワーダーの役割と、ワイン輸入ならではの注意点についてご紹介します。
フォワーダーとは?
フォワーダーとは、国際輸送を専門に手配する会社のことです。特に、ワイナリーへ商品を引き取りに行く必要のあるヨーロッパからのワイン輸入では、欠かせない存在といえます。
ワイナリーへ発注書を送ると、いよいよ輸送の準備が始まります。ここから活躍するのがフォワーダーです。
フォワーダーが担う主な業務
次のような国際輸送の実務を担うのが、フォワーダーの役割です。
- 各ワイナリーの出庫可能日(cargo ready)の確認
- ワイナリーからの集荷手配
- 各ワイナリーから集荷した貨物の取りまとめ
- 海上輸送・コンテナの手配
- 船積みスケジュールの管理
- B/Lなど輸送書類の管理
発注すると、フォワーダーも動き始める
ワイナリーへ発注書を送る際は、ワイナリーだけでなく、フォワーダーもCCに入れて送ります。
これが「この案件が始まりました」という合図となり、ここから輸送スケジュールの調整がスタートします。
その後は、フォワーダーが直接ワイナリーへ連絡を取り、
- 出庫可能日
- 集荷日
- 本船ブッキング
- 必要書類
- スケジュール
などを確認しながら、輸送に向けた準備を進めてくれます。
コンテナをどう組むか ― FCLとLCL
複数の生産地・生産者をまとめてFCLに(Buyer’s Consolidation)
例えば、フランスでボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなど、複数の生産地・生産者のワインを合計10パレット分発注したとします。
この場合、フォワーダーは各生産者に「いつ引き取れるか(cargo ready)」の予定日を確認し、集荷スケジュールを組みます。集荷した貨物は一旦一か所の倉庫に集められ、1×20ftコンテナなどにまとめられます。
このように、1本のコンテナを自社の貨物で仕立てる輸送形態をFCL(Full Container Load)といいます。そして複数の生産者から集めた貨物を1本のコンテナにまとめることを「買い手側による混載(Buyer’s Consolidation)」と呼びます。自社で発注した複数の貨物をまとめて一つのコンテナに仕立てる方法です。
少量の場合はLCLで他社と混載
一方、オーダーを合わせても数パレット分しかない場合は、他社の同じ仕向地(例えば東京・横浜)向けの貨物と混載してコンテナに積載します。
これがLCL(Less than Container Load)です。
他社貨物と一緒にコンテナへ積載されるため、FCLに比べて積み替えや仕分けの工程が増えるという特徴があります。
ワインならではの荷崩れ対策と温度管理
荷崩れを防ぐ工夫
ワインは重量があり、かつ割れ物です。輸送中の荷崩れを防ぐため、
- パレット
- 緩衝材
- 固定用の資材
といった対策に加え、必要に応じて断熱材や温度計を設置してもらうこともできます。
リーファーコンテナかドライコンテナか
ワイン輸送で特に注意が必要なのが、温度管理の方法です。
リーファーコンテナは庫内の温度管理ができ、品質面では理想的な選択肢です。ただし、費用は高く、使えるコンテナの数にも限りがあります。
一方、ドライコンテナに断熱材を組み合わせて輸送するケースもあります。どちらを選ぶかは、「品質」と「コスト」のバランスであり、扱う商材のタイプや輸入者の考え方により違いが表れる部分でもあります。
ドライコンテナを使用する場合は、フォワーダーに積載場所についてリクエストすることもあります。
例えば、
Please load the container under deck, far from engine room.
(コンテナを船のデッキ下で、機関室から離れた場所に積載してください。)
といった依頼です。
もちろん、船会社の積載計画によるため、「リクエストとして承りますが、保証はできません」という回答になるのが一般的です。
それでも、少しでも高温になるリスクを減らすため、できる限りの配慮をお願いしたい・・・。そうした荷主の要望を船会社へ伝え、調整してくれるのもフォワーダーの大切な役割です。
輸入条件によって、フォワーダーとの関わり方が変わることも
ここまでの例は、輸入者自身がフォワーダーを選び、集荷から依頼するケースを前提にしていました。
インコタームズがFOB(本船渡し)の場合、輸出港で本船に積み込まれるまでは売主(生産者)の負担、そこから先の輸送手配は買主(輸入者)の役割とされています。つまり、本来はフォワーダーを選ぶのも輸入者自身、というのが基本のルールです。
ただ実務では、輸出国の物流事情に詳しくない場合など、輸送手配自体は生産者側が代わりに行い、費用だけを買主(輸入者)に請求するケースもあるようです。 いずれのパターンでも、輸送を任されたフォワーダーが果たす役割そのものは変わりません。
輸送中のトラブルにも対応してくれる、心強いパートナー
輸送中には、
- 船の遅延
- 港の混雑
- 中継地での積み残し
- 書類の修正
- スケジュールの変更
など、予定どおりに進まないことも少なくありません。
ヨーロッパからの船は、シンガポールや香港、釜山などアジアの港で積み替えになることが多く、そのスケジュール管理もフォワーダーの重要な仕事です。積み替え港で予定していた船に積み替えできなかった場合は、次便まで1週間前後待つこともあります。そのため、急ぎの貨物については積み残しされないようリクエストを入れてくれることもあります。
また、フォワーダーにも国ごとの得意・不得意があり、輸入者によっては産地ごとに使い分けているケースもあります。
こうした対応力を見ていると、フォワーダーは単なる運送会社というより、「物流面のパートナー」と呼ぶべき存在だと感じます。
まとめ:フォワーダーは、生産者と並ぶ「輸入の要」
フォワーダーは、単に船を手配するだけの会社ではありません。
ワイナリーごとの集荷日を調整し、貨物を集め、コンテナを組み、世界中の港を経由して日本まで届ける ― その一連のプロセスを支えています。
ワイン輸入において、信頼できるフォワーダーとの連携は、生産者との関係と同じくらい重要だといえるでしょう。
ワイン輸入実務ガイド
海外で見つけたワインを日本へ輸入・販売したい方に向けて、ワイナリー探しから商談、国際輸送、通関、日本語ラベル、販売準備まで、ワイン輸入の実務を順番に解説しています。
- ワイン輸入の全体像を解説
- 「輸入酒類卸売業免許」は本当に必要? 販売先から考える酒販免許の選び方
- 輸入したいワイナリーが見つかったら、最初に確認したいポイント
- ワイナリーとの商談で確認したい9つのポイント(実務編)
- このワインは本当に売れる? ― 価格表から始まる輸入判断
- 「フォワーダーとは?」― 国際輸送を支える物流のパートナー ―
- オーダー後こそ輸入者は忙しい ― 船が着く前に進める通関準備と必要書類 ―
- 輸入ワインの検品とは? ― 入荷時に確認すべきポイント ―
- 輸入ワインの商品情報はどう作る? ― ワインの魅力を伝えるために ―
- ワインは誰に、どう売る? ― インポーターの販売戦略と価格設計の考え方 ―
- 輸入したワインを知ってもらうには? ― インポーターの販促活動 ―
- 輸入実務を任せるという選択肢― 自分が見つけたワインを日本で販売するために ―
- 「リーファーか、ドライか?」― 輸入ワイン輸送の品質管理 ―
- 輸入できなかったノンアルコールワイン ― SO2基準の改正で変わったこと ―
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