【酒販免許】販売場を契約する前に登記を確認したい理由―地目が「田」「畑」だったら?

郊外のロードサイドにある空き店舗
目次

はじめに:普通の店舗なのに、登記を見たら「田」?

酒販免許を取得してワインショップなどを始める場合、まず必要になるのが「販売場」です。

店舗を借りるときには、立地や賃料、広さ、設備など、さまざまな条件を確認するでしょう。

不動産会社から「店舗として利用できます」と説明を受け、実際に以前から店舗として使われている物件であれば、「ここなら問題なく営業できるだろう」と思うのが普通かもしれません。

ところが、酒販免許の申請準備では、販売場について土地・建物の登記事項証明書を確認します。

そこで土地の登記を見てみると、現況は店舗なのに、地目が「田」や「畑」のままになっているということがあります。

「店舗が建っているのに、なぜ田なの?」と思うかもしれません。

しかし、土地の現在の利用状況と、登記に記録されている地目は、必ずしも一致しているとは限りません。

では、このような物件を酒販免許の販売場として利用することはできるのでしょうか。

今回は、販売場を契約する前に確認しておきたい「土地の地目」について考えてみます。

そもそも「地目」とは?

土地の登記事項証明書には、「地目(ちもく)」という項目があります。

地目とは、その土地がどのような用途に使われている土地なのかを、登記上の種類として表したものです。

例えば、

  • 宅地
  • 山林
  • 原野
  • 雑種地

などがあります。

一般的な店舗や事務所が建っている土地であれば、「宅地」となっていることが多いでしょう。

ところが、現在は店舗や駐車場として利用されているにもかかわらず、登記上の地目が昔の「田」「畑」のまま残っていることがあります。

ここで注意したいのは、登記上の地目が「田」「畑」であるという事実だけで、現在も農地法上の農地である、あるいは違法な状態であると判断することはできないということです。

まずは、なぜ現在の利用状況と登記地目が異なっているのかを確認する必要があります。

なぜ店舗なのに「田」「畑」のままなの?

もともと農地だった土地を、店舗や住宅、駐車場などとして利用する場合には、「農地転用」という手続が関係します。

農地を農地以外の用途に利用する場合、原則として農地法に基づく許可が必要です。

ただし、市街化区域内の農地については、許可ではなく、あらかじめ農業委員会への届出を行う仕組みになっています。

一方、農地転用の手続と、法務局で行う土地の「地目変更登記」は別の手続です。

そのため、過去に必要な農地転用の手続が行われ、実際には店舗などとして利用されていても、法務局で地目変更登記が行われていなければ、登記上は「田」「畑」のまま残っていることがあります。

農林水産省も、農地に該当しないと判断された土地について地目変更登記を進めるための取扱いを設けています。

つまり、現況が店舗だから、登記も当然「宅地」になっているとは限らないのです。

「田」「畑」だったら、酒販免許は取れない?

では、販売場候補の土地登記を確認したところ、地目が「田」や「畑」だった場合、酒販免許は取得できないのでしょうか。

地目が「田」「畑」であるというだけで、直ちに酒販免許を取得できないと判断することはできません。

重要なのは、その土地が現在どのような状態にあり、過去に必要な農地転用の手続が行われているのかなど、その経緯を確認することです。

例えば、過去に農地転用の届出が適切に行われているものの、地目変更登記だけが行われていないという場合も考えられます。

一方で、「もう何年も店舗として使われているのだから、当然、昔に農地転用も済んでいるだろう」と決めつけることもできません。

農林水産省では、必要な許可や届出を行わずに農地を建物敷地や駐車場などとして利用することを「違反転用」としており、実際にこうした事例があることも示しています。

したがって、登記地目が「田」「畑」だった場合には、現況だけで判断せず、その土地の経緯を確認することが大切です。

では、何を確認すればいい?

販売場候補の土地が「田」「畑」だった場合には、まず物件の所有者や仲介する不動産会社などに、土地の利用経緯を確認してみることになるでしょう。

例えば、

  • 過去に農地転用の許可を受けているのか
  • 市街化区域内の農地として届出が行われているのか
  • その手続を確認できる資料が残っているのか

といった点です。

市街化区域内の農地転用については、農地の所在する市町村の農業委員会へ届出を行う仕組みになっています。

過去の手続が分からない場合などには、土地の所在地を管轄する農業委員会や自治体の担当部署への確認が必要になることがあります。

なお、自治体によっては、過去の転用手続や、現在農地ではないことについて証明等を行う制度が設けられている場合もあります。

ただし、どのような資料を取得できるのか、また酒販免許申請でどのような資料が必要になるのかは、土地の状況や過去の経緯によって異なります。

「田・畑ならこの証明書を取れば大丈夫」という全国一律の対応ではないことには注意が必要です。

農地転用だけでなく、ほかの土地利用規制が関係することも

土地を店舗として利用できるかどうかは、登記地目だけで決まるものではありません。
例えば、農業振興地域制度や都市計画法など、別の土地利用規制が関係する場合もあります。

特に農用地区域内の農地については、農地転用に厳しい制限があり、転用するには農用地区域からの除外が必要となる場合があります。

また、市街化調整区域では、建物の建築や用途変更などについて都市計画法上の制限が問題になる場合があります。

そのため、「地目が宅地なら何でもできる」あるいは、「地目が田なら何もできない」という単純なものではありません。

本記事では酒販免許申請の際に気付きやすい「登記地目が田・畑だった場合」を取り上げていますが、実際の物件では、その土地に関係する規制を個別に確認する必要があります。

賃貸物件では、借主だけでは解決できないことも

この問題で特に注意したいのが、販売場を借りる場合です。

酒販免許を申請する人は、その土地の所有者ではないため、土地の利用経緯について追加資料が必要になったり、土地所有者側で何らかの対応が必要になったりした場合、借主側で解決できない問題も生じえます。

例えば、

店舗を契約する

内装工事や開業準備を進める

酒販免許申請のために土地登記を確認する

地目が「田」だったことが分かる

過去の農地転用手続について確認が必要になる

という順番になってしまうと、すでに物件の契約や開業準備を進めているだけに、影響が大きくなります。

土地所有者の協力が必要になったところで、すぐに対応してもらえるとも限りません。

だからこそ、酒販免許を取得する予定の物件では、できれば契約前、少なくとも開業準備の早い段階で土地・建物の登記を確認しておくことが大切です。

土地や建物の登記情報は、法務局の窓口で確認するほか、インターネットから確認することもできます。

事前に登記内容を確認するだけであれば、登記情報提供サービス」を利用して、自宅や事務所のパソコンから土地・建物の登記情報を確認できます。なお、このサービスで取得できる登記情報は、登記所が保有する登記情報と同じ内容ですが、証明文や公印は付かないため、「登記事項証明書」そのものではありません。

また、登記事項証明書が必要な場合も、オンラインで交付請求し、郵送で受け取ることができます。

普通の店舗として使われているから大丈夫、とは限らない

この点は、少し意外に感じるかもしれません。

例えば、以前から何年も店舗として使われてきた物件であれば、「今まで普通にお店として営業していたのだから、土地についても特に問題はないだろう」と考えるのが自然です。

しかし、酒販免許の申請では、販売場の土地・建物について登記事項証明書を提出します。

国税庁の手引では、申請販売場の土地・建物について登記事項の全部を証明した全部事項証明書を添付し、建物が複数の地番にまたがっている場合には、そのすべての土地について登記事項証明書を提出することとされています。

そのため、これまで店舗として使われていた物件でも、酒販免許申請のために登記を確認したことをきっかけに、現況と登記の違いが初めて分かることがあります。

これは、「酒販免許だけ農地について特別に厳しい」という意味ではありません。
農地法上の問題は、酒販免許とは別の法律上の問題です。

ただ、酒販免許では販売場について土地登記を確認するため、そこで問題に気付くことがある、ということです。

物件を決める前に、一度登記を見ておく

ワインショップなどの物件を探すときに、最初から土地の地目まで確認する方は、それほど多くないでしょう。

普通は、場所、賃料、広さ、設備などを見て物件を選びます。

しかし、酒販免許を取得して営業するのであれば、申請時には土地・建物の登記を確認することになります。

それなら、契約した後に初めて確認するのではなく、候補物件が絞られた段階で一度確認しておくという考え方もできます。

特に、郊外のロードサイド店舗や、周囲に田畑が残る地域の物件、広い駐車場を備えた店舗などでは、現在の店舗ができる前の土地利用や、農地転用の経緯が分からないこともあります。

また、店舗と駐車場が別の土地に分かれているなど、一つの店舗でも複数の土地から構成されている場合があります。

こうした物件だから問題があるということではありませんが、酒販免許の販売場として利用するのであれば、候補物件が決まった段階で土地登記を確認しておくと安心です。

地目が「田」「畑」だったからといって、すぐにその物件を諦める必要はありません。

まずは、「なぜ現在は店舗なのに、登記は田・畑なのか」を確認することが第一歩です。

まとめ:店舗として借りられることと、酒販免許の販売場として準備できることは別

店舗物件を探していると、どうしても立地や賃料、広さなどに目が向きます。

もちろん、それらは大切な条件です。

しかし、酒販免許を取得して事業を始めるのであれば、その場所について免許申請に必要な確認ができるかという視点も、物件選びの段階から持っておきたいところです。

現況が店舗であっても、土地登記の地目が「田」「畑」のままになっていることがあります。

それだけで直ちに問題があるとは限りませんが、過去の農地転用手続などについて確認が必要になることがあります。

そして賃貸物件の場合、その確認や対応には土地所有者の協力が必要になることもあります。

契約や内装工事を済ませてから初めて問題に気付くのではなく、販売場の候補が決まった段階で、土地・建物の登記まで一度確認しておく。

酒販免許を前提に物件を選ぶのであれば、こうした一歩先の確認が、後から販売場を見直すリスクを減らすことにつながります。


酒販免許の種類や取得要件について知りたい方はこちら

酒類販売を始めたい方に向けて、酒販免許の種類や選び方、取得要件、申請手続きなどを分かりやすく解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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