【お酒の制度】お酒の税金はどう決まる?―日本酒・ワイン・ビールから見る酒税の仕組みと改革

様々な酒類を扱う現代の酒販店イメージ
目次

はじめに

2026年10月、ビール系飲料の酒税率が一本化されました。

ビールは税率が下がり、発泡酒などは税率が上がる――そんなニュースを目にした方も多いかもしれません。

でも、今回の酒税改革は、ビールだけの話ではありません。

実はその3年前、2023年10月には、日本酒とワインなどの醸造酒類の酒税率も一本化されています。

では、そもそもお酒にかかる酒税は、何を基準に決まっているのでしょうか。

アルコール度数でしょうか。

原料でしょうか。


製造方法でしょうか。

普段、お酒を買うときに、酒税そのものを意識する機会はそれほど多くないかもしれません。

この記事では、いつも飲んでいる日本酒やワイン、ビールなどを例に、現在の酒税の仕組みと、2017年度の税制改正から2026年まで段階的に進められてきた酒税改革を見ていきます。

酒税は、アルコール度数だけで決まるわけではない

酒税は、お酒の量を基準として課税される「従量税」です。

ただし、すべてのお酒に同じ税率がかかるわけではありません。

酒税法では、お酒を大きく、

  • 発泡性酒類
  • 醸造酒類
  • 蒸留酒類
  • 混成酒類

の4種類に分け、さらに清酒、果実酒、ビール、ウイスキーなど17の品目に区分しています。

そして、その分類や品目、アルコール分などによって税率が決まります。

たとえば、2026年10月現在の代表的な税率を見ると、次のようになります。

お酒の例酒税(1Lあたり)
清酒100円
果実酒(通常の非発泡性ワインなど)100円
ビール155円
焼酎25度250円
ウイスキー40度400円

清酒とワインは同じ100円ですが、ビールは155円です。

一方、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒類では、アルコール分に応じて税額が加算される仕組みが採られています。

つまり、日本の酒税は、単純に「アルコールが強いほど税金が高い」という仕組みではありません。

酒類の分類や品目、アルコール分などが組み合わさって税率が決まっています。

「担税力」って何?―なぜお酒によって税率が違う?

国税庁は、酒税について、酒類の消費の背後にある「担税力」に着目して課される税と説明しています。

「担税力」とは、簡単にいえば、税を負担することのできる経済的な力のことです。

お酒は生活必需品とは異なる嗜好品であり、その消費には一定の担税力があると考えられてきました。

ただし、

「アルコール度数が高いほど担税力が高い」

「よく売れるお酒ほど担税力が高い」

という単純な意味ではありません。

日本の酒税では、酒類の性質や製造方法などによって分類を設け、生産や消費への影響なども考慮しながら、それぞれ異なる税率が定められてきました。

その結果、歴史的には酒類によって税負担にかなりの差がありました。

酒税がなぜ日本の酒類行政と深く結びつき、酒類の販売や製造に免許制度が設けられてきたのかについては、こちらの記事でも取り上げています。

税率の違いが、新しい商品を生んだことも

ところが、酒類ごとの税率差は、税金をいくら負担するかという問題だけにはとどまりませんでした。

その違いが、商品開発にも影響するようになります。

最も分かりやすい例が、ビール系飲料です。

ビールより税負担の軽い発泡酒、さらに「新ジャンル」と呼ばれる商品が登場し、長い間、同じ売場にさまざまなビール系飲料が並んできました。

2017年度の酒税改正では、こうした類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響している状況を改めることも、改革の理由の一つとされました。

そこで、税収全体への影響にも配慮しながら、複数年をかけて酒類間の税率差を縮める改革が進められることになりました。

酒税改革は、2017年度から段階的に進められた

2017年度の税制改正で決められた酒税改革は、一度に行われたものではありません。

大きく見ると、

2020年

2023年

2026年

と段階的に税率が変更されてきました。

ビール系飲料については3段階、清酒や果実酒などの醸造酒類については2段階で税率差が縮められています。

そして、この改革で意外に知られていないのが、日本酒とワインの税率も一本化されたことです。

2023年、日本酒とワインの酒税は同じになった

2017年度改正前の税率は、

清酒 120円/L
果実酒 80円/L

でした。

2020年10月には、

清酒 110円/L
果実酒 90円/L

となり、さらに2023年10月には、

清酒 100円/L
果実酒 100円/L

となりました。

つまり、日本酒は段階的に減税され、ワインは段階的に増税され、最後に100円/Lで並んだわけです。

その他の醸造酒も100円/Lとなり、醸造酒類の基本税率は一本化されました。

ボトル1本で考えてみると、2020年から2023年の改正だけでも、750mlのワインなら、

67.5円 → 75円

720mlの清酒なら、

79.2円 → 72円

となります。

一本あたりで見ると大きな金額ではないため、普段ワインや日本酒を飲んでいても、酒税率そのものが変わったことには気づかなかった方も多いかもしれません。

そして2026年、ビール系飲料の税率も一本化

2026年10月には、ビール系飲料の税率についても改革の最終段階を迎えました。

改正前の350mlあたりの酒税は、代表的なものでは、

ビール 63.35円

発泡酒(麦芽比率25%未満) 46.99円


いわゆる新ジャンル 37.8円

と異なっていました。

これが2026年10月から、54.25円(1Lあたり155円)に一本化されました。

つまり、ビールは減税される一方、これまで税負担の軽かった発泡酒などは増税され、長年存在していたビール系飲料の税率差が縮小・整理されたことになります。

ビール、発泡酒、新ジャンルという商品の違いを意識して選んできた方も多いと思いますが、その背景には、こうした酒税率の違いもありました。

2026年の改正は、単に「ビールの税金が下がった」というだけではなく、2017年度から段階的に進められてきた酒税改革の一つの到達点と見ることができます。

ワインにも影響した「10度未満」から「11度未満」への変更

そして、2026年10月の改正は、ビール系飲料だけに関係するものではありません。

チューハイなどが含まれる「その他の発泡性酒類」についても、税率が1Lあたり80円から100円へ引き上げられました。

ここでいう「その他の発泡性酒類」とは、酒税法上の一つの「品目」の名前ではありません。

ビール・発泡酒以外の酒類のうち、一定の発泡性を持ち、アルコール分が11度未満のものをまとめた区分です。

そのため、一般に「チューハイ」と呼ばれる商品でも、酒税法上の品目はリキュールやスピリッツなどさまざまです。

一方、ワインも酒税法上は「果実酒」ですが、一定の発泡性を持ち、アルコール分などの条件を満たせば、この「その他の発泡性酒類」に含まれます。

そして2026年10月から、この区分のアルコール分の境界が、従来の「10度未満」から「11度未満」へ変わりました。

このため、これまでアルコール分10度以上で「果実酒」として扱われていた発泡性ワインのうち、一定のものは、2026年10月から「その他の発泡性酒類」に含まれることになりました。

現在の税率だけを見ると、果実酒もその他の発泡性酒類も1Lあたり100円です。

しかし、酒税法上どの区分に入るかが変わるため、品目表示などにも影響します。

つまり、先ほどのビール系飲料の税率一本化と、この発泡性ワインに関係する「10度未満→11度未満」という変更は、まったく別々に行われた改正ではありません。

いずれも、2017年度に決められ、2026年まで段階的に進められてきた酒税改革の中に位置づけられる変更です。

発泡性ワインについては、酒税上の「49kPa」、アルコール分「11度」、関税上の「3bar」という3つの境界から、こちらの記事で詳しく整理しています。

税率が同じになっても、「お酒の種類」が同じになるわけではない

ここで注意したいのが、税率と酒税法上の品目は別の話だということです。

現在、

清酒
果実酒
その他の醸造酒

はいずれも基本税率は1Lあたり100円です。

しかし、酒税法上は今もそれぞれ別の品目です。

原料や製造方法などによって品目が定義され、製造免許も品目ごとに考えることになります。

酒類によって製造免許の仕組みがどのように違うのかについては、こちらの記事で取り上げています。

最近目にする「クラフトサケ」のような新しいお酒を理解するときにも、この市場で使われる呼び名と、酒税法上の品目は必ずしも同じではないという点が重要になります。

この話は、改めて取り上げたいと思います。

酒税を徴収するだけではない、現在の酒類行政

酒税は、国の重要な税収の一つとして長い歴史を持っています。

一方、現在の国税庁は酒税を徴収するだけではなく、酒類の品質・表示、地理的表示(GI)、輸出促進、人材育成など、酒類産業の振興にも関わっています。

酒税を確保するための行政から始まり、現在では酒類産業そのものを支える役割も担うようになった経緯については、こちらの記事で整理しています。

まとめ

2026年10月の酒税改正では、ビール系飲料の税率一本化が大きく取り上げられました。

しかし、少し時間を遡ってみると、今回の改革はビールだけの話ではありません。

日本の酒税制度では、酒類をいくつかの種類や品目に分け、それぞれの性質や生産・消費の状況などを踏まえて異なる税率が設けられてきました。

その一方で、酒類間の税率差が商品開発や販売数量にも影響するようになり、公平性や中立性の観点から、その差を縮める改革が長い時間をかけて進められてきました。

2023年には日本酒とワインなどの醸造酒類が100円/Lに。

2026年にはビール系飲料が155円/Lに。


「その他の発泡性酒類」は100円/Lとなり、その対象となるアルコール分の範囲も11度未満へ広がりました。

ただし、税率が同じになったからといって、酒税法上のお酒の品目まで同じになったわけではありません。

普段何気なく手に取っている一本のお酒にも、その価格の中には酒税が含まれています。

「このお酒には、どのくらい酒税がかかっているのだろう?」

そんなところから見てみると、日本酒、ワイン、ビール、ウイスキーなどの違いが、いつもとは少し違って見えてくるかもしれません。


参考資料
本記事の作成にあたっては、主に次の資料を参照しています。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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