【酒販免許】人的要件とは?―「経験が必要」という意味ではありません

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はじめに:「人的要件」= 酒類販売の経験?

酒販免許を取得するには、大きく分けて以下の4つの要件をクリアする必要があります。

  • 人的要件
  • 場所的要件
  • 経営基礎要件
  • 需給調整要件

このうち「人的要件」と聞くと、

  • 「酒類販売の経験があるか」
  • 「お酒について十分な知識があるか」
  • 「酒販店を経営できる能力があるか」

といった、人の経験や能力に関する要件をイメージするかもしれません。

しかし、酒販免許でいう「人的要件」は、少し意味が違います。

人的要件で確認されるのは、申請者本人や法人の役員などについて、過去の免許取消しや一定の法令違反、税の滞納処分など、免許を付与できない事情がないかという点です。

実は、酒類販売の経験や知識・能力についての審査は、「人的要件」ではなく、別の「経営基礎要件」の中で行われます。

まずは、4つの要件が酒税法のどこに位置づけられているのかを見てみましょう。

酒販免許の4つの要件(酒税法第10条)

酒類販売業免許の要件は、酒税法第10条に定められています。

大きく整理すると、次のようになります。

酒税法第10条要件主に確認されること
第1号~第8号人的要件免許取消歴、一定の滞納処分、一定の法令違反・刑事処分など
第9号場所的要件販売場が酒類販売を行う場所として適切か
第10号経営基礎要件経験・知識・経営能力、資金、設備、財務状況など
第11号需給調整要件酒税の保全上、酒類の需給の均衡を維持するための要件

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ここで注目したいのが、「人」に関係することがすべて人的要件に含まれるわけではないという点です。

「人的要件」という言葉だけを見ると、人の経験や能力まで含まれるように感じますが、酒税法上の分類はそうなっていません。

まずは、第1号から第8号の「人的要件」が何を確認するものなのかを見ていきましょう。

人的要件は「人柄」や「適性」を審査するものではない

では、人的要件では何を確認するのでしょうか。

人的要件は、簡単にいえば、申請者などに、酒税法で定められた一定の欠格事由がないかを確認するものです。

人的要件でチェックされる主な内容(酒税法第10条第1号から第8号)

  • 過去に酒類の製造免許や販売業免許の取消処分を受けている
  • 一定期間内に国税や地方税の滞納処分を受けている
  • 酒税法など一定の法令に違反して処罰を受けている
  • 一定の刑事処分(拘禁刑等)を受けている

したがって、人的要件は、

  • 「この人は酒類販売業に向いているか」
  • 「経営者として優秀か」
  • 「お酒に詳しいか」

といった人物評価をするための要件ではありません。

法律で定められた一定の事由に該当していないかを確認するもの、と考えると分かりやすいでしょう。

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個人で申請する場合と、法人で申請する場合

個人の場合

個人で酒販免許を申請する場合は、申請者本人について人的要件が確認されます。

なお、申請者が営業に関して成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合には、その営業について代理権を持つ法定代理人についても一定の要件が確認されます。

通常の個人申請ではあまり問題になることのないケースですが、酒税法ではこのような場合も想定されています。

法人の場合

法人で申請する場合、酒販免許の申請者となるのは、代表取締役個人ではなく法人そのものです。

ただし、人的要件は法人だけを確認して終わりではありません。

その法人の役員についても、一定の欠格事由に該当しないか確認されます。

国税庁の申請手引では、免許要件誓約書について、監査役を含むすべての役員を記載することとされています。

そのため、既存法人で新たに酒販免許を取得する場合には、酒類事業を担当する役員だけでなく、法人全体の役員について確認しておく必要があります。

また、販売場に「支配人」がいる場合には支配人も確認対象となりますが、ここでいう支配人は、国税庁の手引上、支配人として登記された者に限られます。

「税金の滞納」もすべて人的要件ではない

人的要件を理解するときに、少し注意したいのが税金に関する要件です。

酒税法第10条の人的要件には、一定期間内に国税または地方税の滞納処分を受けたことに関する規定があります。

一方、申請時点での納税状況については、経営基礎要件の審査でも確認されます。

つまり、

過去の一定の「滞納処分」についての規定
人的要件

申請時点での納税状況
経営基礎要件

というように、同じ税金に関する事項でも位置づけが異なります。

「税金に関することだから人的要件」と単純に分けられるものではありません。

刑事処分などの経歴がある場合は個別に確認が必要

人的要件の多くは、通常の申請では特に問題にならないことが多いでしょう。

ただし、過去に免許の取消処分や滞納処分、一定の刑事処分(拘禁刑等)などを受けたことがある場合には、慎重な確認が必要です。

単に「過去に処分を受けたことがある」というだけで、酒販免許を取得できないと決まるわけではありません。

どのような処分を受けたのか、どの法令に基づくものなのか、いつ処分を受けたのかなどによって、酒税法上の取扱いが異なります。

そのため、該当する事情がある場合には、酒税法第10条の各号に照らして個別に確認する必要があります。

※ 2025年6月1日の刑法改正により、それまでの「懲役」と「禁錮」は廃止され、現在は「拘禁刑」に一本化されています。国税庁の現在の手引も、この改正を反映した表記となっています。

申請時には「免許要件誓約書」を提出する

酒販免許の申請では、人的要件を含む免許要件について、「酒類販売業免許の免許要件誓約書」を提出します。

国税庁の手引では、申請者、法定代理人、申請法人の役員、申請販売場の支配人などを「申請者等」とし、免許要件を満たしていることについて誓約書による誓約を求めています。

つまり、人的要件は税務署側だけで確認するものではなく、申請者側でも該当する事実がないかを確認したうえで申請することになります。

特に法人で申請する場合には、申請を担当する代表者だけでなく、役員についても事前に確認しておくことが大切です。

では、「酒類販売の経験」はどこで審査される?

ここまで見てきたように、人的要件は「酒類販売の経験があるか」を確認するための要件ではありません。

では、酒販免許についてよく聞く、

「酒類業界での経験が必要」
「酒類販売についての知識や能力が必要」

という話は、どこから出てくるのでしょうか。

これは、酒税法第10条第10号の経営基礎要件に関する審査です。

経営基礎要件というと、決算書や資金など財務面の審査をイメージしやすいのですが、それだけではありません。

申請者が酒類販売業を適正に経営するための経験や知識、能力を備えているかという点も、経営基礎要件の中で確認されます。

同じように、申請時点での納税状況や、破産手続開始の決定を受けて復権を得ていない場合なども、経営基礎要件に関する事項です。

つまり、

人的要件
一定の欠格事由に該当していないかを確認する

経営基礎要件
酒類販売業を適正に経営するための経験・知識・能力や、経営の基礎が備わっているかを確認する

という違いがあります。

酒販免許の要件を理解するときには、この二つを分けて考えることが大切です。

まとめ:人的要件は「経験」ではなく、「欠格事由の確認」

「人的要件」という言葉から、酒類販売の経験や知識を審査するものだと思われがちですが、酒税法上の位置づけは異なります。

人的要件は、酒税法第10条第1号から第8号に定められた、免許取消歴、一定の滞納処分、法令違反や刑事処分などの事由について確認するものです。

一方、酒類販売の経験や知識・能力は、第10号の「経営基礎要件」の中で審査されます。

また、法人で申請する場合には、法人だけでなく、その役員についても人的要件の確認が必要です。

多くの申請者にとっては特に問題にならない要件ですが、過去の処分歴など該当する事情がある場合には、内容や時期によって判断が異なるため、個別に確認する必要があります。


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当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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