【ワイン輸入シリーズ④】ワイナリーとの商談で確認したい9つのポイント(実務編)

ワイン輸入の商談中
目次

はじめに

シリーズ第3回では、輸入したいワイナリーが見つかった後、まず「取引できる相手かどうか」を確認するところから始まるという話をしました。

日本への輸出に前向きで、相性の良さそうなワイナリーだと分かったら、いよいよ具体的な条件のすり合わせに入っていきます。その入口になるのが、ワイナリーが提示する価格表(Price List)と、その後のやり取りです。

今回は、価格表で確認しておきたい項目を、実務的な視点も交えながらご紹介します。最初の商談ですべてを聞き出す必要はありませんが、早い段階で押さえておくと、その後の検討や交渉がぐっとスムーズになるはずです。

商談で確認したい9つのポイント

価格表(Price List

まずは基本となる価格そのものの確認です。

まず最初に確認したいのは、どの通貨建てか(ユーロ、米ドルなど)と、取引条件(FOBやEXWなど)です。

提示された価格の通貨や建値によって、実際の原価は大きく変わってきます。ここを起点に、輸送費や関税、酒税などを積み上げてワインの原価計算を行っていくことになります。

なお、価格表は年に1回、新ヴィンテージのリリースに合わせて更新されるのが一般的です。

取引条件(FOB・EXWなど)

取引条件(インコタームズ)は、「EXW」なのか「FOB」なのかによって、インポーター側が手配すべき輸送手配の範囲や、負担するリスク・保険の範囲が変わります。

  • EXW(Ex-Works:営業所渡し)
    ワイン業界では「Ex-cellar(セラー渡し)」とも呼ばれ、ヨーロッパの生産者に多い建値です。輸入者(買い手)側が、ワイナリーから港までの国内輸送、国際輸送の手配、保険などを手配・費用負担する条件です。
  • FOB(Free on Board:本船渡し)
    ニューワールドの生産者に多い建値です。輸出者が港で船に荷物を積み込むまでの費用とリスクを負担し、それ以降の海上運賃・保険料は輸入者が負担・手配します。
  • CIF(Cost, Insurance, and Freight)
    輸出者が指定仕向港(到着港)までの海上運賃と保険料を負担・手配します。ただし、費用負担が到着港までであっても、リスク自体は輸出港で船に貨物を積み込んだ時点で輸入者に移転します。ワインの生産者がCIFを提示するケースはほとんど見かけません。

見積り比較をする際は、必ず条件を揃えて考えるようにしましょう。

最低発注数量(MOQ)

MOQ(Minimum Order Quantity)は、一度の注文で最低限購入しなければならない数量です。

「1アイテムあたり◯◯ケースから」という単位で決まっている場合もあれば、「◯パレット以上」「金額ベースで◯◯ユーロ以上」といった条件になっている場合もあります。

自社の資金力や販売力、倉庫のキャパシティと照らし合わせて検討すべき、重要な指標です。

特に複数アイテムを扱いたい場合は、「1アイテムごとのMOQ」なのか、「全アイテム合計でのMOQ」なのかによっても、初回発注のハードルが大きく変わってきます。この点は価格表だけでは分からないことも多いので、担当者に直接確認しておくと安心です。

支払条件(Terms of Payment)

決済のタイミングと方法です。

かつては信用状(L/C)による決済もありましたが、現在のワイン輸入では、送金(Telegraphic Transfer/T/T)が主流です。取引における支払いサイトをどう設定するかが、資金繰りに直結する重要なポイントになります。

新規取引の場合は「前払い送金(出荷前の全額支払い)」を求められるケースが多いですが、取引を重ねて信頼関係を築くことで、交渉次第では、

  • 船積み後◯◯日以内の送金
  • インボイス期日から◯◯日以内の送金

といった条件に移行できる場合があります。

初回発注は、思っている以上に現金支出が先行するので、早い段階で確認し、資金計画に織り込んでおきましょう。

在庫状況・生産量

ブティック・ワイナリーやファインワインを扱う場合、彼らの年間生産量や販売可能な在庫(フリー在庫)の確認は必須です。

いくら品質が良く、価格条件が魅力的でも、継続的に数量を確保できなければ、ビジネスとして育てていくことが難しくなります。「このヴィンテージは何本作られていて、そのうち日本向けにどれくらい確保できそうか」を、できるだけ具体的に聞いておくと、その後の販売計画も立てやすくなります。

入数(6本・12本など)

1ケースに何本ワインが入っているか、6本入か12本入かという仕様のことです。仕入れるワインの価格帯や生産地にもよりますが、ヨーロッパでは12本入を使う場合も多いようです。

よほど大口の取引でない限り、輸入者側が仕様を選べることはあまりありません。ただ、6本入であれば、輸入時の箱のまま国内配送や飲食店・小売店への納品に使えるというメリットがあります。ケースの重さや取り回しの良さは、日々の業務にも意外と影響します。

現行ヴィンテージ

現在出荷しているヴィンテージの確認です。ワインはヴィンテージによって味わいや評価、そして現地価格が変わることがあります。

発注後、輸出者から注文内容を確認するためのProforma Invoice(プロフォーマ・インボイス)が送られてきたら、商品名・入数・価格に加えて、このヴィンテージも必ずチェックしましょう。当初サンプルで確認したヴィンテージと異なるものが届く、というトラブルを防ぐためです。

オーダーロットが小さい輸入者に対しては、セラーに残っている古いロットのワインが充当されることがあります。ワインのタイプにもよりますが、白ワインなどフレッシュな味わいが持ち味のワインの場合は、特に注意しておきたいポイントです。

クロージャーの種類(コルク・スクリューキャップなど)

ボトルの栓の仕様です。天然コルク、圧搾コルク、合成コルク(プラスチックコルク)、スクリューキャップなど、クロージャーの種類は多岐にわたります。

大手生産者の場合、同じワインでも市場によってコルクとスクリューを使い分けていることがあり、少量発注の場合は、その時々で在庫のある方が出荷されてくることもあります。日本の流通市場では、「今回はコルク、次回はスクリュー」といった場当たり的な変更は受け入れられにくいため、発注のたびに確認しておきたいポイントです。

リードタイム(注文から出荷までの期間)

注文が確定してから、現地のワイナリーで商品が出荷可能な状態(あるいは港へ出荷される状態)になるまでの期間です。生産者によってまちまちですが、目安として1か月程度は見ておくとよいでしょう。

収穫期やバカンスシーズン(特にヨーロッパの8月)は、通常より時間がかかることが多いので、この時期をまたぐ発注は、余裕をもったスケジュールを組んでおきたいところです。

実務のコツ:確認事項は「一覧」にしておくのがおすすめ

ここまで9つのポイントを挙げましたが、実際の商談では、これらを一問一答のように順番に確認する必要はありません。価格表や過去のやりとりから分かることも多く、不足している部分だけをピンポイントで質問すれば十分です。

ただ実務では、確認事項リストを1枚作っておくことをおすすめします。理由は2つあります。

1つは、確認漏れを防げること。特に複数のワイナリーと同時並行でやり取りをしていると、「あのワイナリーには支払条件を聞いたけれど、こちらのワイナリーには聞きそびれていた」ということが起こりがちです。

もう1つは、条件比較だけでなく、将来そのワイナリーへ追加発注するときにも役立ちます。建値やMOQ、リードタイムなどの条件を同じフォーマットで一覧にしておくと、過去の条件をすぐ確認できるため、実務の効率化にもつながります。

おわりに:条件確認はお互いの「認識合わせ」

今回ご紹介した9つの項目は、決して「少しでも有利な条件を引き出すための交渉術」ではありません。

目的は、お互いの前提条件を早い段階で共有し、認識のずれを防ぐことにあります。

条件確認を後回しにしたまま発注を進めてしまうと、「思っていたヴィンテージと違った」「支払サイトの認識がずれていた」といった行き違いが、取引が動き出してから発覚することになりかねません。特にヴィンテージやクロージャーの仕様は、発注を受ける営業サイドではなく、現場の出荷担当者の判断で変更されることもあるため、「前回聞いたから大丈夫」と思わず、都度確認する姿勢が大切です。

ワイン輸入は、一度きりの売買ではなく、長く続くパートナーシップです。最初の商談で条件を丁寧に確認しておくことが、安心して取引を始めるための土台となり、長く信頼関係を築いていく第一歩になります。


ワイン輸入実務ガイド

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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務など幅広く経験し、その現場経験を活かして、ワインビジネスを実務と法律の両面からサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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