【お酒の制度】酒蔵・ワイナリーのインバウンド免税とは?―「輸出酒類販売場」と2026年11月からの新制度

インバウンド客が酒蔵併設の売店で買い物しているイメージ画像
目次

はじめに

訪日外国人旅行者が増えるなか、街中の量販店や百貨店などでも、「Tax Free」の表示を目にする機会が増えました。

こうした一般的な免税店で免税になるのは、基本的には消費税です。

では、外国人旅行者が日本酒やワインを買った場合、そのお酒にかかっている「酒税」はどうなるのでしょうか。

実は、酒蔵やワイナリーなどの酒類製造者には、一定の要件のもとで、消費税だけでなく酒税も免税して販売できる制度があります。

それが「輸出酒類販売場」です。

この制度は、酒蔵ツーリズムの魅力を高め、外国人旅行者に日本のお酒を知ってもらうことなどを目的として、2017年10月に始まりました。

「輸出酒類販売場」という名前から、海外の事業者へお酒を輸出するための制度を想像するかもしれませんが、いわゆる「輸出酒類卸売業免許」とは別の制度です。

そして、この輸出酒類販売場を含む外国人旅行者向けの免税制度が、2026年11月1日から大きく変わります。

これまでは一定の手続きを行ったうえで購入時に免税する仕組みでしたが、今後は、いったん税金を含む価格で購入し、出国時に国外への持出しが確認された後に税相当額を返金する「リファンド方式」へ移行します。

今回は、そもそも「輸出酒類販売場」とはどのような制度なのか、一般のTax Freeとは何が違うのか、そして2026年11月から何が変わるのかを整理します。

外国人旅行者向けの「Tax Free」は、なぜ免税になる?

街中の量販店や百貨店、ドラッグストアなどには、「Tax Free」の表示を掲げている店舗があります。

外国人旅行者などが、こうした免税店で一定の要件を満たして商品を購入し、国外へ持ち出す場合には、消費税の免税を受けることができます。

これは、消費税が基本的に国内で消費される商品やサービスに負担を求める税だからです。

日本で購入した商品であっても、日本国内では消費せず、そのまま国外へ持ち出されるのであれば、日本の消費税を負担させないという考え方があります。

外国人旅行者だから一律に税金が安くなるのではなく、購入した商品を国外へ持ち出すことが前提となっているわけです。

お土産として日本酒やワインを購入する場合も同じです。

ただし、一般のTax Freeで免税になるのは基本的に消費税です。

日本国内で流通するお酒には、製造場から移出される段階で酒税が課されています。

そのため、たとえば外国人旅行者がお酒を扱う量販店で日本酒を免税購入した場合でも、通常は、酒税は商品価格に含まれたまま、消費税が免税ということになります。

では、日本で造られたお酒を日本国内では飲まず、そのまま国外へ持ち出す場合、酒税についてはどうなるのでしょうか。

ここで登場するのが、「輸出酒類販売場」です。

酒蔵やワイナリーでは「酒税」も免税にできる

輸出酒類販売場は、酒類製造者が外国人旅行者などの免税購入対象者に対して、一定の酒類を酒税免税で販売するための許可です。

たとえば、外国人旅行者がワイナリーを訪れ、そこでワインを購入して自国へ持ち帰る場合。

そのワイナリーが輸出酒類販売場の許可を受け、所定の要件を満たして販売すれば、消費税だけでなく、酒税についても免税の対象にすることができます。

ただし、酒税免税だけが独立して利用できるわけではありません。

輸出酒類販売場で酒税免税の適用を受ける酒類は、消費税についても輸出物品販売場制度による免税の対象となることが必要です。

そのため、酒税免税で販売するには、消費税の「輸出物品販売場」の許可に加えて、「輸出酒類販売場」の許可を受けることになります。

整理すると、次のような関係です。

制度主な役割
酒類製造免許酒類を製造するための免許。
製造場では、製造免許と同一品目の酒類を販売することもできる
輸出物品販売場の許可外国人旅行者などに消費税免税で販売するための許可
輸出酒類販売場の許可一定の酒類を酒税免税で販売するための許可

消費税の免税制度の上に、お酒については酒税の免税制度も重なっている、と考えると分かりやすいでしょう。

酒類製造免許については、こちらの記事で紹介しています。

どんなお酒でも酒税免税で売れるわけではない

輸出酒類販売場の許可を受けたからといって、その販売場に並んでいるすべてのお酒を酒税免税で販売できるわけではありません。

対象となるのは、輸出酒類販売場を経営する酒類製造者が受けている製造免許と同一品目の酒類で、一定の要件を満たすものです。

自己の製造場で製造した酒類だけでなく、自己の別の製造場で製造した酒類や、自己が製造した酒類と同一の商標(ラベル)を用いて販売する酒類も対象に含まれます。

一方、他社の銘柄の酒類を仕入れて販売している場合には、原則として酒税免税の対象にはなりません。

国税庁も、酒税免税の対象となる酒類と対象外の酒類が混在しないよう、区分管理や表示を行うことを求めています。

つまり、「ワイナリーの売店なら、そこにあるワインは全部酒税免税」という制度ではないということです。

なお、免税販売には、同じ免税購入対象者が同じ販売場で1日に購入する商品の販売価額の合計額が、原則として税抜5,000円以上であることなどの要件もあります。

酒蔵やワイナリーには酒類販売業免許も必要?

ここでもう一つ気になるのが、酒類販売業免許との関係です。

酒類を販売する場合には、原則として酒類販売業免許が必要です。

ただし、酒類製造者が製造免許を受けた製造場で、その製造場について製造免許を受けている酒類と同一品目の酒類を販売する場合には、別途、酒類販売業免許を受ける必要はありません。

たとえば、果実酒の製造免許を受けているワイナリーが、その製造場で果実酒を販売するような場合です。

一方、製造場とは別の場所に販売店を設けたり、製造免許の範囲を超える酒類を販売したりする場合には、酒類販売業免許が必要になることがあります。

輸出酒類販売場の話を考えるときも、「製造者だから販売免許は一切不要」と考えるのではなく、どこで、どの酒類を販売するのかを確認する必要があります。

なお、製造場とは別に設けられた併設売店で輸出酒類販売場の許可を受ける場合には、製造場と売店が近接していること、同一税務署の管轄区域内にあること、製造と販売が一体的に行われていることなどの要件があります。

そのため、酒類販売業免許を受けた売店であっても、必ず輸出酒類販売場として認められるわけではありません。

これまでは「購入するとき」に免税していた

2017年に輸出酒類販売場制度が始まってから、2026年10月31日までの制度では、外国人旅行者などの免税購入対象者であることを確認し、所定の免税販売手続きを行ったうえで、購入時点で消費税・酒税を免税して販売する仕組みになっています。

もちろん、免税で購入した後は自由に日本国内で消費してよい、というわけではありません。

免税販売された商品は国外へ持ち出すことが前提です。

つまり現行制度は、国外へ持ち出すことを前提として、実際の出国より先に免税販売する仕組みと見ることができます。

この仕組みが、2026年11月1日から大きく変わります。

2026年11月からは「持ち出したことを確認してから返金」

2026年11月1日から、外国人旅行者向けの免税制度は「リファンド方式」へ移行します。

新しい制度では、外国人旅行者なども、購入時にはいったん税金を含む価格で商品を購入します。

その後、購入日から90日以内の出国時に、税関でその商品を国外へ持ち出すことが確認されると、免税販売が成立します。

大まかな流れは、次のようになります。

税金を含む価格で購入
↓
購入記録情報を免税販売管理システムへ送信
↓
購入日から90日以内に出国
↓
税関で国外への持出しを確認
↓
販売者が税関確認情報を取得
↓
免税が成立し、税相当額を返金

輸出酒類販売場についても、消費税の免税制度とあわせて、このリファンド方式へ移行します。

つまり、対象となる酒類については、購入時には酒税相当額も含めて支払い、国外への持出しが確認された後に、消費税相当額とともに酒税相当額も返金されることになります。

これまでの、

「国外へ持ち出すことを前提に、先に免税する」

という仕組みから、

「実際に国外へ持ち出したことを確認してから、免税を成立させる」

仕組みへ変わるわけです。

なぜリファンド方式に変わる?

今回の見直しの背景には、免税制度の不正利用への対応があります。

国税庁によると、多額・多量に免税購入された商品が国外へ持ち出されず、国内で転売されたことが疑われる事例などが問題となっていました。

もともと外国人旅行者向けの免税制度は、日本国内で消費せず、国外へ持ち出すことを前提とした制度です。

今回の改正は、こうした制度の趣旨を踏まえ、実際の国外への持出しを確認したうえで免税する仕組みへ見直すものです。

変わるのは「お酒の免税」だけではない

ここまでお酒を中心に見てきましたが、2026年11月の改正は、輸出酒類販売場だけを対象としたものではありません。

大元となるのは、外国人旅行者向けの消費税の輸出物品販売場制度全体の見直しです。

街中の量販店や百貨店、ドラッグストアなどで見かける一般的な「Tax Free」も、2026年11月1日からリファンド方式へ移行します。

輸出酒類販売場については、この消費税の制度変更にあわせて、酒税についてもリファンド方式へ移行するという関係です。

つまり、お酒だけの制度改正ではなく、普段街中で目にするTax Freeの仕組みそのものが変わる中で、酒税の免税制度も一緒に変わることになります。

税関が返金するわけではない

「出国時に確認してから返金」と聞くと、空港の税関でその場でお金を返してもらう仕組みを想像するかもしれません。

しかし、税関が行うのは、基本的に商品が国外へ持ち出されることの確認です。

税関で確認された情報は、国税庁の免税販売管理システムに登録されます。

販売者はその税関確認情報を取得し、免税が成立したことを確認したうえで、外国人旅行者などへ税相当額を返金します。

返金については、販売者自身が行うほか、一定の事業者へ委託することもできます。

したがって、必ずしも酒蔵やワイナリーが、出国した旅行者一人ひとりを追いかけて直接送金しなければならない、という仕組みではありません。

免税販売にはシステムへの対応も必要

輸出酒類販売場の許可を受ければ、それだけで免税販売が完結するわけではありません。

現在も免税販売手続は電子化されており、購入記録情報を国税庁の免税販売管理システムへ送信する仕組みが必要です。

2026年11月以降は、これに加えて、出国時の税関確認情報を取得する仕組みにも対応する必要があります。

自らシステムを構築したり対応製品を導入したりする方法のほか、国税庁の承認を受けた送受信事業者へ情報の送受信を委託する方法もあります。

つまり、酒蔵やワイナリーがインバウンド向けの酒税免税販売を始める場合には、許可の取得だけでなく、実際に免税販売を運用できる体制まで考える必要があるということです。

既存の輸出酒類販売場についても、2026年11月以降に免税販売を続けるには、新しいリファンド方式への対応が必要です。

また、酒税免税については、消費税の購入記録情報に加えて、免税対象となる酒類の税率の適用区分や数量などを記録した「酒類購入記録情報」の提供・保存も必要になります。

酒蔵ツーリズムと「輸出酒類販売場」

輸出酒類販売場制度が始まった背景には、外国人旅行者に日本のお酒やその産地を知ってもらうという目的もあります。

酒蔵やワイナリーを訪れ、造り手の話を聞いたり、試飲をしたり、その土地の食や文化に触れたりする。

そして、気に入ったお酒を購入して自国へ持ち帰る。

海外へまとまった数量のお酒を輸出することだけが、日本のお酒を海外へ届ける方法ではありません。

日本を訪れた旅行者が産地でお酒と出会い、その一本を自国へ持ち帰ることも、日本のお酒が海外へ広がっていく一つの入口といえるでしょう。

「輸出酒類販売場」は、そんなインバウンドと日本産酒類をつなぐ制度の一つでもあります。

こうした酒蔵ツーリズムや日本産酒類の海外展開は、国税庁が進める酒類産業振興の取り組みにもつながっています。

「輸出酒類販売場」と「輸出酒類卸売業免許」は別の制度

最後に、名前の似た二つの制度を整理しておきます。

今回取り上げた「輸出酒類販売場」は、酒類製造者が外国人旅行者などに一定の酒類を酒税免税で販売するための制度です。

一方、「輸出酒類卸売業免許」は、酒類を海外へ輸出するための取引に関係する酒類販売業免許です。

名前にはどちらも「輸出酒類」と入っていますが、制度の目的も仕組みも異なります。

外国人旅行者が日本でお酒を買って自ら持ち帰ることと、日本の酒類事業者が海外の事業者へお酒を輸出することは、同じ「日本のお酒が海外へ出ていく」場面でも、制度上は分けて考える必要があります。

日本のお酒を海外へ販売する場合には、誰が輸出者になるのか、どのような酒販免許が必要なのか、通関や酒税はどうなるのかなど、また別の論点が出てきます。

このあたりは、あらためて整理していきたいと思います。

まとめ

外国人旅行者向けの一般的なTax Freeは、日本国内で消費せず国外へ持ち出す商品について、一定の要件のもとで消費税を免税する仕組みです。

お酒の場合、一般の免税店で購入しても、通常は酒税まで免税になるわけではありません。

一方、酒蔵やワイナリーなどの酒類製造者には、一定の要件のもとで、消費税に加えて酒税も免税して販売できる「輸出酒類販売場」という制度があります。

そして2026年11月1日からは、外国人旅行者向けの免税制度全体がリファンド方式へ移行し、輸出酒類販売場についても酒税の免税方法が変わります。

酒蔵やワイナリーにとっては、インバウンドの旅行者に日本のお酒を知ってもらう仕組みの一つである一方、実際に導入するには、許可だけでなく免税販売を運用するためのシステムや体制も必要です。

2026年11月の制度変更を機に、「Tax Free」と「お酒の税金」の関係をあらためて整理してみると、普段何気なく目にしている免税販売の仕組みも、少し違って見えてくるかもしれません。


参考資料
本記事の作成にあたっては、主に次の資料を参照しています。


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酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワイン輸入会社で輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面から酒販免許取得をサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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