【酒販免許】「資本等の額」とは?―酒税法第10条第10号「ハ」「ニ」を読み解く

酒販免許申請の手引き
目次

はじめに:経営基礎要件には2つの財務基準がある

前回の記事では、決算書の見方について解説し、その中で、酒販免許の経営基礎要件では、決算書上の純資産合計をそのまま使うのではなく、「資本等の額」を計算して判定することを説明しました。

では、なぜそのような計算が必要なのでしょうか。

酒税法第10条第10号では、「経営の基礎が薄弱であると認められる場合」が、酒類販売業免許の拒否要件の一つとされています。

国税庁(税務署)が公表している「酒類販売業免許申請の手引」では、その具体的な判断基準として、財務状況に関する次の2つの基準が示されています。

 最終事業年度の繰越損失が資本等の額を上回っている場合

 過去3事業年度すべてで、資本等の額の20%を超える欠損を生じている場合

今回は、この2つの基準を理解するために必要となる「資本等の額」の考え方を解説します。

実際の「審査項目一覧表」では、次のように整理されています。

国税庁の審査項目一覧表では、この4つの数字を使う

初めて見ると少し難しく感じるかもしれませんが、財務基準の判定で使う数字は、貸借対照表の純資産の部にある次の4つです。

  • 資本金
  • 資本剰余金
  • 利益剰余金
  • 繰越利益剰余金

まずは、それぞれが何を表しているのかを確認しておきましょう。

① 資本金とは

資本金は、会社を設立したり事業を行ったりするために、株主などから払い込まれた資金のうち、資本金として計上されている金額です。

会社の元手となる資本であり、会社の財務基盤を構成する重要な項目です。

② 資本剰余金とは

資本剰余金は、株主から払い込まれた資金のうち、資本金には計上されなかった部分などです。

代表的なものとして「資本準備金」があります。

資本金と同様に、会社の資本を構成する項目です。

③ 利益剰余金とは

利益剰余金は、会社がこれまでの事業活動によって得た利益のうち、会社の中に積み上げられてきた部分です。

ニュースなどで耳にする「内部留保」は、この利益剰余金を中心としたものを指して使われることが一般的です。なお、「内部留保」は会計上の正式な勘定科目ではなく、一般的な呼び方です。

ただし、利益剰余金が多いからといって、その金額の現金が会社に残っているわけではありません。
利益は、設備や商品在庫、売掛金など、さまざまな資産の形に姿を変えて会社の中に存在しています。

利益剰余金には、さらに次のような項目が含まれています。

  • 利益準備金
  • その他利益剰余金(別途積立金など)
  • 繰越利益剰余金

このうち、酒販免許の経営基礎要件で特に重要になるのが、次の「繰越利益剰余金」です。

④ 繰越利益剰余金とは

繰越利益剰余金は、過去の利益や損失の累積が反映される項目です。

利益が蓄積していればプラスになりますが、過去の赤字が積み重なっている場合にはマイナスになります。

酒販免許の経営基礎要件でいう「繰越損失」は、繰越利益剰余金がマイナスとなっている場合の、その金額(マイナス額)を指します。

そのため、国税庁の図では、④の数字が重要な意味を持っています。

なぜ「資本等の額」を計算するのか

国税庁では、会社の財務基盤を確認するため、貸借対照表の純資産合計ではなく、次の計算式で「資本等の額」を求めています。

一見すると、「利益剰余金を足した後に、その中に含まれている繰越利益剰余金を引く」という少し不思議な計算に見えます。

これは、③の利益剰余金には④の繰越利益剰余金がすでに含まれているためです。

財務会計上の利益剰余金には、利益準備金や任意積立金のほかに、まだ株主総会などで処分が決まっていない「繰越利益剰余金」も含まれています。

酒販免許の経営基礎要件では、この未処分の利益(または損失)を除外し、資本金・資本剰余金・利益準備金・任意積立金など、すでに処分が確定した純資本部分を基礎として「資本等の額」を算定します。

このように算定した「資本等の額」を、繰越損失や各事業年度の欠損額と比較することで、会社の経営基盤を判定します。

まとめ:まずは①~④の意味を理解しよう

酒販免許の経営基礎要件では、貸借対照表の純資産合計を見るのではなく、純資産の部にある①〜④の項目を使って判定します。

そのため、「資本等の額」を理解するには、まずそれぞれの項目が何を意味しているのかを知ることが大切です。

次回は、今回確認した①〜④の数字を使って「資本等の額」を実際に計算し、「ハ」の繰越損失の基準や、「ニ」の3事業年度連続赤字の基準について、具体例を用いながら順番に解説していきます。


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当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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