はじめに
2026年10月1日から、発泡性ワインの酒税上のアルコール分の境界が「10度未満」から「11度未満」へ変わりました。
この改正によって、10度未満の発泡性ワインの酒税が引き上げられる一方、10度以上11度未満の商品では、酒税額そのものは変わらなくても、酒税上の分類や輸入者ラベルの品目表示が変わる場合があります。
国税庁も、アルコール分10.5度のスパークリングワインを例に、この変更を説明しています。
ところで、発泡性のあるワインを輸入するときには、アルコール分だけを見ればよいわけではありません。
日本では、酒税法上「発泡性を有する」とされる基準と、関税上「スパークリングワイン」に分類される基準が異なります。
つまり、同じ一本のワインでも、酒税・表示・関税では、それぞれ確認する境界が違うのです。
今回は、2026年10月1日の酒税改正を入口に、
「49kPa」 「11度」 「3bar」
という3つの境界から、発泡性ワインを輸入するときに確認しておきたい酒税・表示・関税の違いを整理します。
発泡性ワインには「3つの境界」がある
最初に全体像を整理すると、次のようになります。
| 確認するもの | 境界 | 主に何が決まる? |
| 酒税法上の「発泡性」 | 20℃で49kPa(約0.49bar)以上 | 酒税法上「発泡性を有する」か |
| 酒税上の分類・表示 | 発泡性+アルコール分11度未満 | 「その他の発泡性酒類」に該当するか・品目表示 |
| 関税 | 20℃で3bar以上 | 関税上「スパークリングワイン」に分類されるか |
1bar(バール)は100kPa(キロパスカル)なので、49kPaは約0.49barです。
つまり、日本の酒税法では比較的弱い発泡でも「発泡性」として扱われます。
一方、関税上のスパークリングワインには、これよりかなり高いガス圧が求められます。
ここを一つずつ見ていきます。
まず確認するのは「49kPa」―酒税法上の発泡性
日本の酒税法では、20℃におけるガス圧が49kPa以上であるかどうかが、発泡性を判断する一つの基準になります。
49kPaは約0.49barです。
そのため、シャンパーニュのような強い発泡だけでなく、比較的穏やかな発泡のワインでも、酒税法上は「発泡性を有する」ものに該当することがあります。
国税庁の酒税法基本通達でも、20℃におけるガス圧が49kPa未満の酒類については、ガス入り酒類として取り扱わないこととされています。
ただし、49kPa以上だからといって、それだけで税率や品目表示が決まるわけではありません。
次に確認するのが、アルコール分です。
2026年10月から何が変わる?―税率と「11度」の境界
酒税法上「発泡性を有する」ことを確認したら、次に見るのがアルコール分です。
2026年10月1日から、「その他の発泡性酒類」の対象となるアルコール分の範囲が、
10度未満 → 11度未満
へ変更されました。
同時に、従来から「その他の発泡性酒類」に該当していた酒類については、酒税率が、
80,000円/kL → 100,000円/kL
へ引き上げられています。
この二つの変更が同時に行われるため、発泡性ワインへの影響はアルコール分によって異なります。
国税庁の資料をもとに整理すると、次のようになります。
| 発泡性ワインの例 | 2026年9月30日まで | 2026年10月1日以降 | 税額の変化 |
| 9.5% | その他の発泡性酒類 80,000円/kL | その他の発泡性酒類 100,000円/kL | 20,000円/kL増 |
| 10.5% | 果実酒 100,000円/kL | その他の発泡性酒類 100,000円/kL | 変わらない |
| 11.0% | 果実酒 100,000円/kL | 果実酒 100,000円/kL | 変わらない |
従来から「その他の発泡性酒類」に該当していた10度未満の発泡性ワインは増税となります。
たとえば9.5%の発泡性ワインでは、750mL瓶あたりの酒税は、
60円 → 75円
となり、1本あたり15円の増税です。
一方、10度以上11度未満の商品は少し事情が違います。
たとえば10.5%の発泡性ワインは、2026年9月30日までは「果実酒」として100,000円/kLでしたが、10月1日以降は「その他の発泡性酒類」に入ります。
ただし、この時点では「その他の発泡性酒類」の税率も100,000円/kLになっているため、酒税額そのものは変わりません。変わるのは、酒税上の分類と品目表示です。
10.5%の発泡性ワインであれば、果実酒 → その他の発泡性酒類となり、原則となる品目表示も、「果実酒」→「果実酒(発泡性)」へ変わります。
つまり、2026年10月の改正は、
10度未満 酒税が増える
10度以上11度未満 酒税額は変わらないが、分類・表示が変わる
と分けて考えると分かりやすくなります。
表示の変更には経過措置がある
ただし、10度以上11度未満の発泡性ワインについては、表示の変更に経過措置が設けられています。
国税庁の資料では、2027年3月31日までは、何ら手続をすることなく従前どおりの表示が可能とされています。
そのため、この期間中は、酒税上はすでに「その他の発泡性酒類」に該当していても、輸入者ラベルには従前どおり、「果実酒」と表示されている商品があり得ます。
2026年10月1日から直ちに、10度以上11度未満のすべての商品ラベルが「果実酒(発泡性)」に切り替わるわけではない、ということです。
輸入ワインのラベルを確認するときには、酒税上の分類が変わる時期と、実際の表示が切り替わる時期が必ずしも一致しないことにも注意が必要です。
なお、輸入ワインの輸入者ラベルには、品目だけでなく、アルコール分、内容量、原産国名、添加物、輸入者などの表示も必要です。
輸入者ラベルの表示事項や作成から税関への届出までの流れについては、こちらの記事で詳しく整理しています。

シャンパーニュなのに、品目は「果実酒」?
ここで少し意外なのが、アルコール分11度以上のスパークリングワインです。
たとえば、アルコール分12%のシャンパーニュ。
もちろん泡がありますし、一般的な意味でもスパークリングワインです。
ところが、日本の酒税法上の品目表示では、通常、「果実酒」となります。
「果実酒(発泡性)」ではありません。
これは、品目に続けて発泡性を表示する対象が、アルコール分11度未満の発泡性を有する果実酒等だからです。
2026年10月1日施行の国税庁告示でも、この対象が「アルコール分11度未満」と明記されています。
つまり、実際に泡があるかと、品目欄に「(発泡性)」と表示するかは、同じ話ではありません。
「微発泡ワイン」と「果実酒(発泡性)」も別の話
輸入者ラベルを見ると、品目:果実酒(発泡性)とは別に、品名:微発泡ワインなどと表示されている商品があります。
この二つも意味が異なります。
「果実酒(発泡性)」は酒税法上の分類・税率適用区分に関係する表示です。
一方、「微発泡ワイン」は、商品の性格を消費者に伝えるための商品説明として使われることがあります。
したがって、
品目:果実酒(発泡性)
品名:微発泡ワイン
という表示が同じラベルに並んでいても矛盾しません。
輸入では、さらに「3bar」という別の境界がある
ここからは関税です。
輸入ワインの場合、酒税とは別に関税分類を確認する必要があります。
関税上、スパークリングワインは2204.10に分類されます。
ここで重要になるのが、20℃で3barという基準です。
つまり、
酒税法上の発泡性 49kPa(約0.49bar)
関税上のスパークリングワイン 3bar
と、同じ泡のあるワインでも基準が大きく異なります。
フリザンテとシャンパーニュを比べてみる
ここで、制度の違いを見るために二つの商品を仮定してみます。
| フリザンテの例 | シャンパーニュの例 | |
| アルコール分 | 10.5% | 12% |
| ガス圧 | 2bar | 5bar |
| EU側の分類 | セミスパークリングワイン | スパークリングワイン |
| 日本の酒税法上の「発泡性」 | ○ | ○ |
| その他の発泡性酒類 | ○ | × |
| 日本での原則的な品目表示 | 果実酒(発泡性)※ | 果実酒 |
| 関税上のスパークリングワイン | × | ○ |
※アルコール分10度以上11度未満の発泡性ワインについては、表示に関する経過措置があります。
アルコール分とガス圧は、制度の違いを説明するための例です。また、「フリザンテ」という名称だけでEU法上の分類を判断するものではありません。
この表を見ると、
「果実酒(発泡性)」なのに、関税上はスパークリングワインではない
商品がある一方で、
関税上はスパークリングワインなのに、日本の品目表示は「果実酒」
という商品もあることが分かります。
発泡性ワインの輸入が少しややこしい理由は、ここにあります。
EUにも「スパークリング」と「セミスパークリング」の区分がある
輸入実務では、日本側の制度だけを見るのではなく、生産国でその商品がどのような商品として造られているのかも確認します。
EU法では、ワインについて「スパークリングワイン(sparkling wine)」や「セミスパークリングワイン(semi-sparkling wine)」などのカテゴリーが定められています。
EU規則では、スパークリングワインの一つの基準として、20℃で3bar以上のガス圧が定められています。
一方、セミスパークリングワインは、20℃で1bar以上2.5bar以下です。いずれも発酵によって生じた炭酸ガスによるものとして定義されています。
さらに、外部から炭酸ガスを添加したものについては、aerated sparkling wine、aerated semi-sparkling wineという別のカテゴリーがあります。
このため、EUのセミスパークリングワインに該当する商品は、
EUではセミスパークリング
日本の酒税法では「発泡性」
日本の関税では2204.10のスパークリングワインではない
という組み合わせになることがあります。
輸入実務では、輸出国側の商品カテゴリーをそのまま日本の制度に置き換えるのではなく、日本の酒税・表示・関税の基準にそれぞれ当てはめ直す必要があります。
関税上のスパークリングワインになると、税率も違う
関税分類が変われば、適用される関税率も変わります。
2026年の実行関税率表では、2204.10のスパークリングワインのWTO協定税率は182円/Lです。
一方、一般的な750mLのその他のぶどう酒(2204.21-020)は、WTO協定税率が15%または125円/Lのうち低い税率。ただし67円/Lを下回る場合は67円/Lとなっています。
750mL瓶に換算すると、
| 750mL瓶 | その他のワイン | 関税上のスパークリングワイン |
| WTO協定税率 | 15%または125円/Lの低い方 (最低67円/L) | 182円/L |
| 750mL換算 | 50.25~93.75円※ | 136.50円 |
※実際の税額は課税価格によって変わります。
ただし、実際の輸入では原産国やEPAの適用によって関税率が異なります。
たとえば2026年の関税率表でも、協定によって無税となる欄があります。
そのため、EPA等によって関税が無税となるワインを扱っている輸入者にとっては、3barによる関税分類の違いより、酒税上の分類や輸入者ラベルの表示変更の方が、日常の輸入実務では直接影響する場合もあります。
もちろん、関税が無税になる場合でも、関税分類そのものの確認が不要になるわけではありません。
10.5%だったフリザンテが11.0%になったら?
ここまでの違いを、実際の輸入に近い形で考えてみます。
2026年10月1日以降、ガス圧2barの同じタイプのフリザンテについて、アルコール分が10.5%から11.0%になったとします。
| 同じタイプのフリザンテ | 10.5% | 11.0% |
| ガス圧 | 2bar | 2bar |
| 酒税法上「発泡性を有する」 | ○ | ○ |
| 酒税上の分類 | その他の発泡性酒類 | 果実酒 |
| 酒税率 | 100,000円/kL | 100,000円/kL |
| 酒税(750mL) | 75円 | 75円 |
| 原則となる品目表示 | 果実酒(発泡性)※ | 果実酒 |
| 関税上の分類 | 変わらない | 変わらない |
※アルコール分10度以上11度未満の発泡性ワインについては、2027年3月31日まで従前どおりの表示が可能です。
2026年10月1日以降、アルコール度数は10.5%でも11.0%でも、税率は100,000円/kLで、750mLあたり75円です。
つまり、11度をまたいでも酒税額は変わりませんが、酒税上の分類と品目表示は変わります。
そしてガス圧が2barのままであれば、3barという関税上の境界はまたがないため、アルコール分が10.5%から11.0%になったことだけを理由に、関税上のスパークリングワインへ変わるわけではありません。
同じ銘柄でも、アルコール分は毎回確認したい
スパークリングワインにはノンヴィンテージの商品が多く、同じ銘柄だからといって、以前の輸入時と同じアルコール分とは限りません。
特に11度前後の商品を継続して輸入する場合には、以前の輸入時の資料だけで判断せず、輸入する商品について、その都度アルコール分を確認しておくことが大切です。
あらかじめ生産者に、11度が日本の酒税上の分類・表示の境界になったことを伝えておけば、アルコール分が11度をまたぐ場合にも、ラベルの表示変更に対応しやすくなります。
泡がどのように生じたかも確認する
もう一つ確認しておきたいのが、炭酸ガスがどのように生じたかです。
発泡性ワインの泡には、発酵によって生じた炭酸ガスによるものと、外部から炭酸ガスを添加して造られるものがあります。
日本の食品表示では、酒類に炭酸ガスを添加した場合には、食品表示基準に基づく添加物としての表示が必要になります。
国税庁の通達でも、炭酸ガスを加えた酒類については、発泡性表示の義務とは別に、添加物としての表示義務があることが明記されています。
そのため、輸入するワインについては、
その泡が瓶内二次発酵などの発酵によって生じたものなのか、外部から炭酸ガスを添加したものなのか
を確認する必要があります。
輸出者から商品資料や成分資料を取り寄せる際には、アルコール分やガス圧だけでなく、炭酸ガスの由来についても確認しておくと、輸入者ラベルを作成するときに判断しやすくなります。
発泡性ワインを輸入するときに確認したいこと
実務では、「スパークリングワイン」「フリザンテ」といった商品名だけで判断せず、少なくとも次の点を確認しておくとよいでしょう。
- アルコール分は何%か
- 20℃でのガス圧はどの程度か
- 泡は発酵由来か、炭酸ガス添加によるものか
- 輸出国ではどのカテゴリーの商品として扱われているか
- 日本の酒税法上、どの区分になるか
- 輸入者ラベルの品目をどう表示するか
- 関税上、2204.10のスパークリングワインに該当するか
- EPA等の適用を含め、実際の関税率はどうなるか
特に発泡性の弱いワインでは、商品名や外観だけでは日本での扱いを判断できないことがあります。
まとめ: 「49kPa」「11度」「3bar」を分けて考える
発泡性ワインの輸入では、「泡があるかどうか」だけで判断すると、酒税・表示・関税の関係が分かりにくくなります。
2026年10月1日以降は、次の3つを分けて考えると整理しやすくなります。
- 49kPa
酒税法上「発泡性を有する」か - 11度
「その他の発泡性酒類」に該当するか、品目表示をどうするか - 3bar
関税上「スパークリングワイン」に分類されるか
さらに、外部から炭酸ガスを添加している場合には、添加物としての表示も確認します。
そして今回の改正では、もう一つ押さえておきたい点があります。
2026年10月1日から、従来10度未満だった「その他の発泡性酒類」の酒税率は80,000円/kLから100,000円/kLへ引き上げられました。
一方、10度以上11度未満の発泡性ワインは、酒税額そのものは変わらないものの、新たに「その他の発泡性酒類」の範囲に入り、原則となる品目表示が変わります。
同じ「発泡性ワイン」でも、酒税・表示・関税では、それぞれ違う境界を見ている。
ここを分けて考えることが、発泡性ワインの輸入実務を整理するポイントです。
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