【酒販免許】「実務経験3年以上」は必須?―酒販経験と経営能力の考え方

ワイン売り場で品出ししている様子
目次

はじめに

酒販免許について調べていると、「酒販免許を取るには、3年以上の実務経験が必要」という説明を見かけることがあります。

これまで酒類業界で働いたことがない方にとっては、

「酒販経験が3年ないと申請できないの?」
「これからワインショップを始めたい人はどうすればいい?」
「飲食店で長くワインを扱ってきた経験は、酒販経験になる?」

など、気になるところではないでしょうか。

しかし、酒販免許における「3年以上」という基準は、すべての酒販免許に共通して求められる一律の要件ではありません。

また、3年以上という基準が示されている免許についても、単純に「3年以上なら○、3年未満なら×」と判断されるものではありません。

今回は、酒販免許で求められる「経験」とは何なのか、そして酒類販売業を営むための「経営能力」がどのように考えられているのかを整理します。

そもそも、なぜ「3年以上」という話が出てくるの?

酒販免許には、大きく分けて次の4つの要件があります。

  • 人的要件
  • 場所的要件
  • 経営基礎要件
  • 需給調整要件

前回の記事で取り上げた「人的要件」は、酒税法第10条第1号から第8号に定められた欠格事由に該当しないかを確認するものです。

一方、酒販経験や経営経験が問題になるのは、主に「経営基礎要件」の方です。

酒税法第10条第10号では、「経営の基礎が薄弱であると認められる場合」には、免許を与えないこととされています。

そして国税庁の法令解釈通達では、この「経営の基礎」について、資金や設備といった物的・資金的な面だけではなく、酒類販売業を適正に経営できる知識や能力があるかという人的な面についても審査することとされています。

つまり、「3年以上」という数字そのものが、酒税法に免許要件として書かれているわけではありません。

申請者に酒類販売業を適正に経営できる知識や能力があるか。

その判断基準の一つとして、一定の免許区分について具体的な経験年数が示されている、というのが制度上の位置づけです。

一般酒類小売業免許では「3年以上」などの経歴が一つの目安

一般酒類小売業免許について、国税庁の法令解釈通達では、申請者が「経験その他から判断し」、適正に酒類小売業を経営するための十分な知識・能力を有していることを求めています。

そのうえで、たとえば、

  • 酒類の製造業または販売業に引き続き3年以上直接従事していた
  • 調味食品等の販売業を3年以上継続して経営していた
  • これらの業務に従事した期間を通算して3年以上になる

などの経歴があり、さらに酒類に関する知識や記帳能力等を備え、独立して営業できると認められる場合には、原則として経営能力に関する基準を満たすものとして取り扱うとされています。

ここで注目したいのが、

「おおむね」
「経験その他から判断し」
「原則として」

という表現です。

「3年以上」という数字だけで機械的に合否を判定する仕組みではないことが分かります。

そもそも「3年以上」と書かれていない免許もある

さらに重要なのが、この3年という具体的な基準は、すべての酒販免許に置かれているわけではないことです。

たとえば、ワインビジネスで利用されることの多い免許を比べてみると、通達上の書き方には違いがあります。

免許区分通達上の経験年数に関する規定
一般酒類小売業免許「3年以上」等の具体的な経歴例あり
通信販売酒類小売業免許具体的な年数基準なし
洋酒卸売業免許「3年以上」等の具体的な経歴例あり
輸出入酒類卸売業免許具体的な年数基準なし
全酒類卸売業免許一般小売・洋酒卸とは異なる、より長い経歴基準あり

したがって、「酒販免許を取るには、酒類業界で3年以上の実務経験が必要です」と酒販免許全体について説明してしまうのは正確ではありません。

どのような経験が求められるかは、取得しようとする免許区分によって異なります。

ワインの輸入卸では「3年以上」という具体的な基準はない

特に、ワインを自社で海外から輸入し、国内の酒販店や飲食店などへ卸売りする際に利用される「輸入酒類卸売業免許」には、洋酒卸売業免許のような「3年以上」という具体的な経験年数の基準は示されていません。

ただし、これは「経験がまったく問われない」という意味ではありません。

輸入酒類卸売業免許についても、経験その他から判断して、適正に酒類卸売業を経営する十分な知識・能力を有していることが求められます。

3年以上の経験がなければ、どう審査される?

3年以上などの典型的な経歴に当てはまらない場合でも、それだけで直ちに要件を満たさないと判断されるわけではありません。

国税庁の手引では、その他の業での経営経験や酒類販売管理研修の受講状況なども踏まえ、酒類販売業を経営するための知識・能力を実質的に審査する考え方が示されています。

では、酒販経験が十分でない場合、これまでの職歴や経験はどのように見られるのでしょうか。

たとえば、食品や小売、営業、EC、飲食店などでの経験が、酒類販売業を営むための知識・能力を説明する材料になることもあります。

また、酒類販売管理研修やワインに関する資格などについても、「3年の経験」とは分けて考える必要があります。

こうした個々の経験や知識がどのように評価されるのかについては、こちらの記事で解説しています。

法人の場合、代表者に3年以上の経験が必要?

法人で申請する場合も、「代表取締役本人に3年以上の酒販経験がなければ申請できない」という一律の要件があるわけではありません。

法人の場合、酒販免許の申請では、監査役を含む役員全員について、これまでの職歴や担当業務などを記載した履歴書を提出します。

一方、法令解釈通達では、酒類販売業を適正に経営する十分な知識・能力を有する者、またはそのような者が主体となって組織する法人であることが求められています。

したがって、法人の場合は、代表者一人の「3年以上」という数字だけで判断するのではなく、役員の経歴や法人としての事業経験なども踏まえ、酒類販売業を適正に経営するための知識・能力を備えているかが審査されます。

ただし、「経験者の役員が一人いれば必ず認められる」といった一律の基準が公表されているわけではありません。

役員構成やそれぞれの担当業務、会社の事業経験などによって判断が異なるため、個別の確認が必要です。

まとめ:「3年」という数字だけで判断しないことが大切

酒販免許における実務経験については、「3年以上あるか、ないか」だけが問題になるわけではありません。

まず確認したいのは、取得しようとしている免許に、そもそも具体的な経験年数の基準が設けられているのかということです。

そのうえで、具体的な経歴例が示されている免許についても、その年数だけで機械的に判断されるのではなく、申請者の経験その他から、酒類販売業を適正に経営するための知識・能力があるかが審査されます。

酒販経験が短い、あるいは酒類業界で働いた経験がないからといって、それだけで酒販免許を諦める必要はありません。

一方で、典型的な経験年数を満たしていない場合に、他の経験や資格、研修などがどのように評価されるかは、取得する免許や申請者の経歴によって異なります。
具体的にどのような職歴や経験が判断材料になるのかについては、次の記事で詳しく見ていきます。

大切なのは、「3年」という数字だけを見るのではなく、取得したい免許の基準と、これまでの経験・知識を具体的に整理することです。

これから酒販ビジネスを始める場合には、まず「どの免許が必要なのか」を整理したうえで、自分の経歴がその免許の経営基礎要件の中でどのように評価されるのかを確認していくとよいでしょう。


酒販免許の種類や取得要件について知りたい方はこちら

酒類販売を始めたい方に向けて、酒販免許の種類や選び方、取得要件、申請手続きなどを分かりやすく解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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