【酒販免許】商品が販売場を通らなくても大丈夫?―仕入先から顧客へ直送する酒類販売

倉庫でワインをピッキングしているところ
目次

はじめに:販売したワインは、必ず販売場から発送する?

前回の記事では、酒販免許における「販売場」と「蔵置所」の違いについて解説しました。

端的には、

販売場は、酒類の販売を行う拠点。
一方、蔵置所は、酒類を保管する場所です。

そのため、販売場と商品の保管場所は、必ずしも同じである必要はありません。

では、もう一歩進めて考えてみましょう。

販売したワインは、必ず販売場や、前回取り上げた蔵置所などから発送しなければならないのでしょうか。

たとえば、販売した酒販店が、ネットショップで注文を受けた後、仕入先であるインポーターなどに出荷を依頼し、そこから購入者へ直接ワインを届けてもらう方法があります。

この場合、販売した酒販店には、ワインそのものが一度も届きません。

それでも酒類を販売することはできるのでしょうか。

今回は、これまで見てきた販売方法と比較しながら、「販売」と「商品の物流」は必ずしも一致しないという点から、酒販免許における販売場について、もう少し掘り下げてみます。

まずは3つの販売・出荷方法を比べてみよう

酒販店がワインを販売するとき、商品の流れにはいくつかのパターンがあります。

A 販売場から出荷する

もっとも分かりやすいのが、販売場に商品を保管し、そこから購入者へ発送する方法です。

仕入先→販売場(在庫)→(販売・在庫)→顧客

実店舗のワインショップだけでなく、自宅などを販売場としてネットショップを運営し、そこで商品を保管・梱包して発送する場合も、この形になります。

この場合、

  • 酒類を販売する場所
  • 商品を保管する場所
  • 商品を発送する場所

がおおむね一致しています。

B 外部倉庫から出荷する

次に、前回の記事でも取り上げた、外部倉庫を利用する方法です。

仕入先→販売場→(販売)→顧客
外部倉庫(在庫)→(出荷)→顧客

酒販店は仕入れた商品を外部倉庫に預け、ネットショップなどで注文を受けると、倉庫へ出荷を指示します。

この場合、商品は酒販店の在庫ですが、販売場には置かれていません。

つまり、「販売する場所」と「保管・発送する場所」が分かれています。

販売場と蔵置所を分けて考える必要があるのは、このようなケースです。

C 仕入先から顧客へ直接発送する

さらに、もう一つの方法があります。

酒販店自身が在庫を保管せず、注文を受けた後に仕入先へ発注し、仕入先から顧客へ商品を直接発送してもらう方法です。

販売場は商品を仕入先から(販売場を経由することなく)顧客へ直送

この場合、酒販店が販売したワインは、販売場にも、自社が利用する外部倉庫にも入りません。

商品だけを見ると、「仕入先から顧客へ直接販売しているように見える」かもしれません。

しかし、ここでは商品の動きと、売買取引の流れを分けて考える必要があります。

「売買取引の流れ(商流)」と「商品の流れ(物流)」は同じとは限らない

酒販店が、ワインインポーターから仕入れたワインを、飲食店へ販売するケースから考えてみましょう。

たとえば、上のパターンC「仕入先から顧客へ直接発送する」では、「売買取引の流れ」と「商品の流れ」は次のようになっています。

【売買取引の流れ(商流)】

実際の売買は、このような二段階で行われています。

インポーター →
酒販店(販売場)→ 
 飲食店

【商品の流れ(物流)】

しかし、実際の商品は販売場を経由していません。

インポーター → 飲食店

酒販店は、インポーターからワインを仕入れ、それを自社の商品として飲食店へ販売しています。

インポーターは酒販店から注文を受け、酒販店の指示によって、商品だけを飲食店へ直接発送します。

つまり、商品は酒販店を通らなくても、取引としては「酒販店が仕入れ、酒販店が販売している」ということです。

このように、売買取引の流れ(商流)と、商品の流れ(物流)は必ずしも一致しません。

直送だからといって、酒販店の「仕入れ」と「販売」がなくなるわけではない

ここは、酒販免許を考えるうえでも重要です。

「商品が自分のところに届かないなら、仕入れたことにならないのでは?」

と思うかもしれません。

しかし、酒税法上の記帳義務では、酒類販売業者は、酒類を受け入れた場合や払い出した場合について、数量、価格、年月日、取引先などを記帳することとされています。

また、国税庁の法令解釈通達では、この記帳について、「帳合取引」も含めて行うことが明記されています。

帳合取引と今回のような直送取引がすべて同じというわけではありませんが、ここで重要なのは、商品が自社を物理的に経由しないからといって、その仕入れや販売がなくなるわけではないという点です。

したがって、直送だからといって、「商品が販売場に入っていないので、仕入れも販売も記録しなくてよい」ということにはなりません。

自社が仕入れ、自社が顧客へ販売しているのであれば、現物を販売場で保管していなくても、その仕入れと販売を適切に管理する必要があります。

「誰から仕入れたか」と「商品をどこへ届けたか」も別の話

直送取引を考えると、酒税法上の帳簿で「取引先」と「商品の引渡先」が区別されている意味も分かりやすくなります。

たとえば、

  • インポーターが酒販店Aにワインを販売する
  • 酒販店Aが飲食店Bにそのワインを販売する
  • 商品はインポーターから飲食店Bへ直接届ける

という場合です。

インポーターにとって、売買上の取引先は酒販店Aです。

しかし、商品の実際の配送先は飲食店Bです。

そのため、「誰に販売したのか」と「どこへ商品を届けたのか」は必ずしも同じではありません。

実務上は、直送する商品には品名や数量だけを記載した納品書を添付し、仕入価格などが記載された取引書類は実際の取引先である酒販店へ送る、といった処理が行われることもあります。

商品の配送と売買取引を分けて管理する必要があるからです。

直送なら「仲介」になるわけでもない

もう一つ区別しておきたいのが、「販売」と「仲介(媒介)」の違いです。

たとえば、酒販店Aがインポーターの商品を飲食店Bに紹介し、実際の売買契約自体がインポーターと飲食店Bとの間で直接成立するのであれば、これは「仲介(媒介)」であり、A自身が商品を仕入れて販売しているわけではありません。

一方、 先に述べたように、

インポーター →
酒販店A(販売場)→ 
 飲食店B

という二つの売買が成立し、酒販店Aが自ら商品を仕入れて販売しているのであれば、商品がインポーターから飲食店Bへ直送されても、A自身の「販売」であることに変わりはありません。

大切なのは、「商品がどこを通ったか」だけで販売関係を判断しないことです。

誰が誰から仕入れ、誰が誰に販売しているのか。
直送取引では、この商流を確認する必要があります。

飲食店への直送でも、酒販店から飲食店への販売は「小売」

ここも、少し間違えやすいところです。

たとえば、

インポーター → (卸売)
酒販店→ (小売)
飲食店
インポーターから飲食店への直送パターン

という商流の場合、インポーターから酒販店への販売は、酒類販売業者に対する販売なので「卸売」です。

一方、酒販店からレストランへの販売は、酒税法上は「小売」に当たります。

商品がインポーターからレストランへ直接発送されるからといって、インポーターがレストランへ販売したことになるわけではありません。

小売か卸売かを考えるときも、商品の配送ルートではなく、誰が誰に販売しているのかを見る必要があります。

なお、同様に、酒販店が一般消費者へインターネット等を利用して販売する場合には、販売地域や販売方法によって通信販売酒類小売業免許が必要になる場合があります。

「直送だから一般酒類小売業免許」「直送だから通信販売酒類小売業免許」と決まるわけではなく、どのような相手に、どのような方法・地域で販売するのかによって必要な免許を検討します。

在庫を持たずに、小さく始める方法にもなる

仕入先から顧客へ直接発送してもらう方法には、酒販店自身が多くの在庫を抱えなくても事業を始められるという特徴があります。

特に、飲食店などの取引先から注文を受け、その都度インポーターなどへ発注する方法であれば、大きな倉庫を用意したり、あらかじめ大量の商品を仕入れたりする必要はありません。

実際に、店舗や多くの在庫を持たず、インポーターから飲食店へ商品を直送する形でワイン販売を行うケースもあります。

ただし、この方法を採るためには、仕入先が個別の直送に対応してくれることが前提になります。

仕入先側には、注文ごとに異なる配送先へ商品を発送したり、価格の分かる書類を商品に同梱しないよう対応したりする手間も生じます。

そのため、在庫を持たないから簡単に始められるというよりも、仕入先との取引関係や物流体制まで含めて成り立つ販売方法と考えた方がよいでしょう。

飲食店向けに、在庫を持たずにワインを販売するケースについては、別の記事でも詳しく紹介しています。

まとめ:「販売する場所」と「商品が動く場所」は分けて考える

ここまで、3つのパターンを見てきました。

A 販売場から出荷する
販売と保管・発送が、ほぼ同じ場所で行われます。

B 外部倉庫から出荷する
販売場と、商品の保管・発送場所が分かれます。

C 仕入先から顧客へ直送する
販売場には商品を保管せず、商品が販売場を経由することなく顧客へ届けられます。

こうして比べてみると、酒販免許における「販売場」が少し違って見えてくるのではないでしょうか。

販売場は、必ずしもワインを置いておく場所でも、ワインを発送する場所でもありません。

商品を別の場所に保管したり、仕入先から顧客へ直接発送したりする場合でも、誰が酒類を仕入れ、誰に販売し、その取引をどこで行い、管理しているのかを考える必要があります。

前回の記事では、販売場と蔵置所を分けることで、「販売」と「保管」は別のものであることを見てきました。

今回の直送取引では、さらに一歩進んで、「販売」と「物流」も別のものであることが分かります。

酒販免許の「販売場」を考えるときには、商品がどこに置かれ、どこから発送されるのかだけではなく、その酒類販売の取引がどこで行われているのかという視点から考えることが大切です。


酒販免許の種類や取得要件について知りたい方はこちら

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酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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