はじめに
会社を設立して酒販ビジネスを始めようと考えたとき、「まず会社を作れば、あとは酒販免許を申請すればいい。」と思われる方も多いかもしれません。
しかし、実際には、酒販免許の申請を見据えて会社を設立するのであれば、設立前から考えておきたいことがあります。
例えば、定款の事業目的、資本金、販売場、資金計画などです。
これらは会社設立そのものにも関わりますが、酒販免許の取得をスムーズに進めるためにも重要なポイントになります。
今回は、新設法人で酒販免許を申請する場合に、会社設立前から準備しておきたいことを整理してみます。
会社設立準備と酒販免許申請準備は同時進行で
法人を設立して酒類を販売するには、その法人名義で酒類販売業免許を取得する必要があります。
酒販免許を法人名義で申請するには、法人の登記事項証明書や定款などの書類が必要になります。そのため、基本的には会社設立後に酒販免許を申請する流れになります。
つまり、
会社設立
酒販免許申請
免許交付
営業開始
という流れになります。
ただ順序としてはこの通りですが、会社設立後から酒販免許の準備を始めると、営業開始まで思った以上に時間がかかることがあります。
そのため、会社設立前から酒販免許申請を見据えた準備を進めておくことが大切です。
まず考えるべきは「事業計画」
ここで、会社設立の手続に入る前に、一度立ち止まって考えておきたいことがあります。
それは、「どのような酒販事業を行いたいのか」という事業計画です。
例えば、
- ワインショップを開業したい
- EC販売を中心にしたい
- 飲食店へ卸売したい
- 海外からワインを輸入したい
などによって、必要な免許も資金も大きく変わります。
つまり、
事業計画が決まる
必要な資金が見えてくる
会社設立の内容が決まる
という順番で考える方が自然です。 その事業計画をもとに、会社名や定款の事業目的、資本金など、会社設立の具体的な内容を決めていきます。
資本金だけではなく「開業資金全体」を考える
事業計画が決まれば、次は資金計画です。
会社設立では資本金をいくらにするかが話題になりがちですが、それだけで開業できるわけではありません。
例えば、
- 会社設立にかかる費用
- 酒販免許取得にかかる費用
- 店舗や事務所の準備費用
- 初回の商品仕入れ
- 広告宣伝費
- 営業開始後の運転資金
など、営業開始前から様々な資金が必要になります。
そのため、「資本金をいくらにするか」ではなく、営業開始までに必要な資金をどのように確保するかという視点で考えることが大切です。
開業資金は、資本金だけで考えるものではありません。会社設立から営業開始までを一つの流れとして考え、必要な資金全体を見積もることが大切です。
事業計画は融資でも酒販免許でも重要です
新設法人では、事業計画書や収支計画を作成する場面が少なくありません。
開業資金を自己資金だけでまかなう場合もありますが、日本政策金融公庫などから融資を受けて開業するケースも少なくありません。
借入があること自体が、酒販免許の審査で問題になるわけではありません。
日本政策金融公庫などへ融資を申し込む際には、事業計画書の提出を求められることがありますが、酒販免許の申請でも、開業間もない事業者では、事業計画や収支計画をもとに経営基盤が確認されます。
提出先や目的は異なりますが、「どのような事業を行い、どのように継続していくのか」という基本的な考え方は共通しています。
そのため、会社設立、融資、酒販免許を別々に考えるのではなく、一つの事業計画として整合性を持たせておくことが大切です。
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定款の事業目的には、酒販事業を適切に定めておく
酒販免許では、定款の事業目的に酒販事業を行うことが分かる内容が記載されているかも確認されます。そのため、会社設立時から酒類の販売など、予定している事業内容に応じた目的を定めておくことが大切です。
また、ワインの輸入も行うのであれば、実際に予定している事業内容に応じて、酒類の輸出入に関する目的なども検討します。
会社を設立してから「酒販免許を取りたい」と考えるのではなく、会社設立の段階から、これから行う酒販事業を定款の事業目的に反映しておくことが大切です。
資本金も事業計画とのバランスが大切
酒販免許には、「資本金○○万円以上」という基準はありません。そのため、少額の資本金で会社を設立することもできます。
しかし、酒販免許の審査では、資本金の額だけではなく、開業資金全体や収支計画とのバランスを踏まえ、継続して事業を営めるだけの経営基盤があるかどうかが確認されます。
そのため、事業計画に対して資本金が極端に少ない場合には、資金計画との整合性について説明が必要になることがあります。
具体的な金額の基準はありませんが、資本金そのものではなく、事業規模とのバランスという視点で考えることが大切です。
代表者・役員の体制も重要
新設法人には、会社としての過去の決算実績がありません。
そのため、事業計画や資金計画だけでなく、代表者や役員がどのような経験を有しているかなども、経営基盤を判断する資料の一つになります。
会社設立の段階から、酒販事業を誰がどのような体制で運営していくのかも考えておくことが大切です。
販売場は会社設立と並行して考える
酒販免許では、販売場が非常に重要です。会社を設立しても、販売場が決まらなければ酒販免許の申請には進めません。
酒販免許の申請では、本店所在地と実際に酒類を販売する場所(販売場)が一致している必要はありません。
本店は横浜、販売場は別の市区町村というケースも認められます。そのため、会社設立時には本店所在地だけでなく、「どこを販売場とするのか」もあわせて考えておくことが大切です。
ただし、注意しておきたいのは「契約の名義」です。 例えば、会社設立前から代表者個人が契約していた物件をそのまま販売場として使う場合、契約者が個人名義のままになっていることがあります。
酒販免許は法人が申請者となるため、販売場の使用権限についても法人との関係が整理されている方が、申請手続を進めやすくなります。
一方、これから新たに物件を契約するのであれば、はじめから法人名義で契約しておくと、後から名義を切り替える手間がかかりません。
また、賃貸物件の場合は、酒類販売場として使用できるかどうかについて、賃貸借契約書の内容や、必要に応じてオーナーの承諾なども確認しておきたいところです。
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法人口座なども準備しておく
法人口座の開設など、会社設立後でなければ進められない手続もあります。営業開始時期から逆算し、会社設立後に必要となる手続もあらかじめ整理しておきましょう。
営業開始日から逆算して準備する
酒販免許は申請してすぐ交付されるものではありません。
そのため、営業開始予定日が決まっている場合には、そこから逆算して、会社設立や販売場の準備、酒販免許申請のスケジュールを考える必要があります。
例えば、
事業計画
会社設立準備
会社設立
酒販免許申請
審査
営業開始
という流れをイメージしておくと、慌てず準備を進めやすくなります。
なお、販売場の契約や法人口座の開設は、この一本の流れとは別に、それぞれ独自のタイミングで動く要素です。酒販免許の申請準備とあわせて、早めに着手しておくと安心です。
チェックリスト:会社設立前に確認しておきたいこと
□ どのような酒販事業を行うか整理した
□ 必要な免許を確認した
□ 資本金と資金計画を考えた
□ 融資の必要性を検討した
□ 定款の事業目的を確認した
□ 販売場の候補と契約時期・契約名義を検討した
□ 会社設立後の法人口座開設の準備を確認した
□ 酒販免許の申請に必要な書類を確認した
□ 営業開始日から逆算してスケジュールを考えた
まとめ
新設法人で酒販免許を取得する場合、申請そのものは会社設立後になります。
しかし、酒販免許をスムーズに取得するための準備は、会社設立前から始まっています。
事業計画、資金計画、定款、販売場、役員体制などをあらかじめ整理しておくことで、会社設立後の酒販免許申請もスムーズに進めやすくなります。
会社を設立すること自体が目的ではありません。
酒販免許を取得し、継続して酒類販売業を営める体制を整えることが、本当のスタートです。
酒販免許の種類や取得要件について知りたい方はこちら
酒類販売を始めたい方に向けて、酒販免許の種類や選び方、取得要件、申請手続きなどを分かりやすく解説しています。
酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。
当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。
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