はじめに:「売れる状態」を「売れる」に変えていく
シリーズ第9回 では、「輸入ワインの商品情報はどう作る? ― ワインの魅力を伝えるために ―」と題して、ワインを実際に販売するために必要な商品情報の整理についてご紹介しました。
ラベルや通関の手続きが整い、いつでも販売できる状態になったとしても、それだけでワインが自動的に売れていくわけではありません。
インポーターの営業・販促活動は、一般消費者向けのプロモーションとは少し異なります。
販売先は酒販店や飲食店などのプロであり、「広告で認知を広げる」よりも、「商品を理解してもらい、実際に試飲して納得してもらう」ことが重要になります。
そのため、販促活動は大きく分けると、
- 商品の魅力を伝える資料を整えること
- ワインを実際に味わってもらう機会をつくること
の二つが中心になります。
酒販店や飲食店のプロに、そのワインの存在を知ってもらい、味わいに納得してもらい、実際に採用してもらう。そこまで伴走してはじめて、ワインは「売れる商品」になります。
今回は、インポーターの営業活動の土台となる「販促資料」についてと、ワインの魅力を直接伝える「ワインを確かめてもらう機会」について、実務の視点からご紹介します。
営業活動を支える販促資料― 過不足ない「商品シート」設計
ワインの営業活動で欠かせないのが、商品を紹介するための資料です。
A4用紙1枚程度に、ボトルの外観画像とスペックが美しくまとまっていると、営業先でもそのままバイヤーやソムリエの社内検討資料として活用されやすくなります。
生産者情報とワイン情報は分けて管理する
生産者のストーリーや歴史は、個別のワイン情報とは切り離して別の資料にする方が使いやすいです。
客先によっては、旧知の生産者情報を持参する必要のない場合があるのと、個別のワイン情報がすべて含まれていると、更新が追いつかないなどの問題が生じやすいからです。
ワイン情報に含めておきたい項目
個別のワインシートには、以下の情報を網羅しておくと、流通の場面で必要となる情報が一通りそろった、使いやすい資料になります。
■ 基本情報
ワイン名、生産者名、ヴィンテージ、原産地呼称(A.O.C./D.O.C.等)、生産国・地域、タイプ(赤・白・ロゼ・泡など)
■ 物流・規格情報
JANコード、容量、栓の種類(コルク・スクリューキャップ等)、ボトルサイズ・重量、ケース入数、ケース外寸
■ 付加情報:
評価誌のスコア(パーカーポイント等)、有機JAS認証、栽培・醸造のこだわり、テイスティングコメント
カタログと価格表は「動」と「静」で使い分ける
カタログの運用はインポーターによって様々です。
年1回の総合カタログ発行にとどめ、日々のヴィンテージ変更や価格改定は「別紙の価格表(プライスリスト)」で対応するケースもあれば、季節ごとにカタログを出すケースもあります。
一方で、ワインはヴィンテージが変わると、たとえ同じワインで金額変更がない場合でも、お客さんに周知して納品するなど、他の商品とは異なる商品特性があります。
いずれにせよ、カタログと価格表が「最新の在庫と価格」と常に連動している状態を保つことが、受発注のトラブルを防ぐ基本です。
ワインの魅力をどう伝えるか ― 味わいを確かめてもらう機会をつくる
ワインは、カタログだけでは魅力を伝えきれない商品です。
飲食店や酒販店は、実際に試飲し、「自分のお客様に勧められるか」を確認したうえで採用を判断するケースも少なくありません。
そのため、ただ資料を整えて渡すだけでなく、実際に試飲して納得してもらう場を作ることも営業の大切なステップになります。
客先への持参営業の限界
数本のボトルを持参して飲食店や酒販店など客先を訪問し、その場で試してもらう営業スタイルもありますが、一度に運べる本数や移動時の温度管理、スパークリングワインでは、ガス圧が落ちたり、動かすことで泡が吹きこぼれたりする可能性があるなど、品質管理や効率の面で限界があります。
自社試飲会を定期開催する
そこで一度に多くのラインナップを最適な状態で試してもらうため、定期的な「自社試飲会」を企画するインポーターは多いです。
対象を「プロ限定:酒販店・飲食店・メディア関係者」として無料開催し、さらに当日の来場者特典価格などを設けることで、ワイン注文の成約を高める工夫をします。
外部の合同試飲会の活用
自社試飲会だけでは、「新規顧客」の集客に限界がある場合は、各国の商務部が主導する国別試飲会や、業界団体主催の合同試飲会(Wine Japan等)への出展が有効です。
出展料、自社のポートフォリオ(取扱ワインの傾向)と来場客層がマッチしているかなどを総合的に見極めて出展先を選びます。
生産者来日イベントの企画
海外の造り手(生産者や輸出マネージャー)が来日するタイミングは、最大の販促チャンスです。
近年は、ワイナリーの繁忙期を避けて来日し、国別試飲会に参加したり、同行営業(アテンド)に積極的な海外生産者が増えています。
実際に造り手と触れ合う機会は、営業の後押しとして大きな力を持つことが多いため、こうした機会はできるだけ有効に活用したいところです。
あわせて、来日のタイミングでキャンペーンやフェアを企画するのもおすすめです。
まとめ:資料と試飲の両輪で、ワインを広める
輸入したワインをブランディングするには、そのワインに関する詳細な資料と、味わいを確かめてもらう試飲機会の両方が不可欠です。
逆に言えば、味わってもらったワインの美味しさを、生産者情報やワイン情報で説明できることが、着実にファンを育てる基盤になります。
ワイン輸入実務ガイド
海外で見つけたワインを日本へ輸入・販売したい方に向けて、ワイナリー探しから商談、国際輸送、通関、日本語ラベル、販売準備まで、ワイン輸入の実務を順番に解説しています。
- ワイン輸入の全体像を解説
- 「輸入酒類卸売業免許」は本当に必要? 販売先から考える酒販免許の選び方
- 輸入したいワイナリーが見つかったら、最初に確認したいポイント
- ワイナリーとの商談で確認したい9つのポイント(実務編)
- このワインは本当に売れる? ― 価格表から始まる輸入判断
- 「フォワーダーとは?」― 国際輸送を支える物流のパートナー ―
- オーダー後こそ輸入者は忙しい ― 船が着く前に進める通関準備と必要書類 ―
- 輸入ワインの検品とは? ― 入荷時に確認すべきポイント ―
- 輸入ワインの商品情報はどう作る? ― ワインの魅力を伝えるために ―
- ワインは誰に、どう売る? ― インポーターの販売戦略と価格設計の考え方 ―
- 輸入したワインを知ってもらうには? ― インポーターの販促活動 ―
- 輸入実務を任せるという選択肢― 自分が見つけたワインを日本で販売するために ―
- 「リーファーか、ドライか?」― 輸入ワイン輸送の品質管理 ―
- 輸入できなかったノンアルコールワイン ― SO2基準の改正で変わったこと ―
- 「オーガニックワイン」は日本でもそのまま表示できる? ― 有機JAS制度と輸入ワイン ―
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