【酒販免許】開業間もない事業者でも取得できる?―税務署は「何を信用の土台」として審査するのか

酒販免許審査イメージ
目次

はじめに

これまでの記事では、酒販免許の経営基礎要件について、法人の決算書や「資本等の額」をもとにした財務基準を中心に解説してきました。

では、「まだ開業したばかりで決算書がありません。」という場合はどうなるのでしょうか。

例えば、

  • 個人事業としてワインショップを開業する場合
  • 新たに株式会社を設立して酒販事業を始める場合
  • 既に事業を営んでいる会社が、新たに酒販事業を始める場合

など、これまで酒類販売を行っていなかった事業者が、新たに酒販免許の取得を検討するケースがあります。

このようなケースでは、決算書がないことだけを理由に酒販免許が取得できないわけではありません。

税務署は、その事業者が継続して酒類販売業を営めるだけの経営基盤があるかどうかを、事業の形態に応じて確認しています。

税務署が見ているのは「決算書」だけではありません

ここで誤解されやすいのが、「経営基礎要件=決算書の審査」というイメージです。

もちろん、長年事業を営んでいる法人であれば、過去の決算書は重要な判断材料になります。

しかし、決算書そのものが目的ではありません。

税務署が確認したいのは、「この事業者は、酒類販売業を継続して営めるだけの経営基盤を備えているか」という点です。

そのため、決算書が存在しない開業間もない事業者では、事業計画や資金計画など、その時点で確認できる資料も踏まえて経営基盤が審査されます。

つまり、決算書は「経営基盤を確認するための資料」の一つに過ぎないということです。

「信用の土台」は事業の形態によって異なる

では、決算書がない場合、税務署は何を基準に判断するのでしょうか。

分かりやすく言えば、その事業者が「何を経営の土台として事業を始めようとしているのか」を見ていくことになります。

例えば、次の3つでは、税務署が確認する対象が異なります。

区分経営基盤を考える際の中心となるもの
個人事業主事業主本人の資金状況・職歴・事業経験
新設法人会社の資本金・資金計画と、代表者・役員の経験や経営体制
既存法人が新たに酒販事業を始める場合既存事業の実績や財務状況、新たな酒販事業の計画・運営体制

「開業間もない」「新たに酒販事業を始める」といっても、その時点ですでに持っている事業実績や経営基盤はそれぞれ異なります。

そのため、経営基礎要件を考える際にも、その事業者が現在どのような基盤を持ち、その上でどのように酒販事業を始めようとしているのかを見る必要があります。

事業形態が違っても、共通して確認されること

酒販免許の審査では、事業の形態によって提出する資料や確認の仕方が異なります。

その中でも経営基礎要件では、酒類販売業を継続して営めるだけの経営基盤があるかどうかが重要になります。

個人事業主、新設法人、既存法人では、それぞれ置かれている状況が異なるため、経営基盤を説明する際の着眼点にも違いがあります。

ケース1 個人事業主として開業する場合

例えば、

  • 自己資金は十分にあるか
  • 現実的な収支計画になっているか
  • これまでどのような仕事に携わってきたか
  • 継続して事業を営めるだけの経験や知識があるか

などが重要な確認事項になります。

つまり、「本人が事業を継続できるか」が審査の中心になります。

ケース2 個人が新たに法人を設立する場合

一方、株式会社などを新設して申請する場合には、会社そのものにはまだ実績がありません。

しかし、その会社を経営する代表者や役員には、それまでの職歴や経験があります。

そのため、

  • 資本金
  • 事業計画
  • 資金計画
  • 代表者や役員の経験

などを総合的に確認し、会社として継続的に事業を営めるかどうかが判断されます。

つまり、会社だけを見るのではなく、その会社を支える人の実績も重要な判断材料になります。

ケース3 既存法人が新たに酒販事業を始める場合

これまで別の事業を営んできた会社が、新規事業として酒類販売を始める場合もあります。

このケースが個人事業主や新設法人と大きく異なるのは、申請の時点ですでに会社としての事業実績や決算実績があることです。

そのため、これまでの財務状況を確認するとともに、

  • 新たな酒販事業の事業計画
  • 必要となる資金とその調達方法
  • 酒販事業を担当する人員や運営体制

などを含めて、新しい事業を継続して営めるかを考えていくことになります。

また、既存法人が酒販事業を始める場合には、必ずしも現在の会社そのもので免許を申請するとは限りません。

事業内容やグループ全体の方針によっては、酒販事業を行うための新会社を設立し、その新会社を申請者とする方法も考えられます。

この場合、新会社自体には過去の決算実績がありませんので、既存法人そのもので申請する場合とは、経営基盤の説明の仕方も変わってきます。

既存法人の免許申請については、こちらの記事で詳しく解説しています。

共通しているのは「継続して事業を営めるか」という視点

ここまで見てきたように、経営基盤を確認する際の着眼点は、事業者の状況によって異なります。

しかし、税務署が最終的に確認したいことは共通しています。

それは、

「この事業者は、継続して酒類販売業を営めるだけの経営基盤を備えているか」

という点です。

決算書がある会社なら決算書を見ます。

決算書がない事業者なら、事業計画や資金計画、これまでの経験などを確認します。

つまり、確認する資料は違っても、審査の目的は変わらないのです。

まとめ:見る資料は違っても、見ているものは同じ

開業間もない事業者だからといって、酒販免許が取得できないわけではありません。

重要なのは、決算書があるかどうかだけではなく、その事業者がどのような経営基盤のもとで酒販事業を始めようとしているのかという点です。

個人事業主であれば事業主本人、新設法人であれば会社の資本や資金計画とそれを経営する人、既存法人であればこれまでの事業実績や財務状況と新たな事業計画というように、それぞれ確認できる背景は異なります。

しかし、その根底にある審査の目的は共通しています。

「酒類販売業を継続して営めるだけの経営基盤があるかどうか」

決算実績の有無や事業の形態によって、その経営基盤を説明する方法は変わります。

次回からは、それぞれのケースについて、経営基礎要件をどのように考えればよいのかを、もう少し具体的に見ていきます。


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酒類販売を始めたい方に向けて、酒販免許の種類や選び方、取得要件、申請手続きなどを分かりやすく解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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