ワインビジネスを始める前に知っておきたい酒類販売業免許「4つの基本要件」

酒販免許申請手続きをネットで調べる男性
  • 「海外のワイナリーからワインを直輸入して販売したい」
  • 「こだわりのワインをネットショップで販売したい」

そう思い立って国税庁のホームページを開き、「免許申請の手引き」を開いたものの、並んでいる法律用語や専門用語に、思わず画面を閉じてしまった方も多いのではないでしょうか。

お酒を販売するために必要な「酒類販売業免許」を取得するには、酒税法に定められた複数の要件を満たす必要があります。

ところが手引きは細かいうえに分かりにくく、「結局、自分は要件を満たせるのか?」という肝心な答えに、なかなかたどり着けないのが実情です。

そこでワインビジネス(小売・卸売)への参入を目指す方に向けて、酒販免許の審査で確認される「4つの基本要件」を分かりやすくかみ砕いて解説します。

まず初回は、「4つの基本要件」の全体像を把握するところから始めてみましょう。

目次

要件1:【人的要件】「だれが」売るのか?不適格とみなされないための基準

人的要件では、申請者や法人の役員等について、過去の酒類販売業免許の取消しや一定の法令違反・刑罰、税の滞納処分など、酒税法第10条第1号から第8号までに定める欠格事由に該当しないことが確認されます。

チェックされる主なポイント

過去の免許取消しや法令違反などがないか:
人的要件では、過去に酒類販売業免許等の取消処分を受けていないか、一定の法令違反により罰金刑に処せられていないか、拘禁刑以上の刑に処せられていないかなどが確認されます。これらは一律に同じ期間が定められているわけではなく、欠格事由ごとに要件が異なります。

税金について滞納処分を受けていないか:
免許の申請前2年以内に、国税または地方税について滞納処分を受けている場合も、人的要件に該当します。単に税金の支払いが遅れたことと、法律上の「滞納処分を受けたこと」は同じではないため、区別して考える必要があります。

人的要件は、申請者だけを確認するものではありません。
法人で申請する場合にはその役員、一定の場合には法定代理人や販売場の支配人についても、該当する欠格事由がないか確認されます。

人的要件で確認される欠格事由や、申請時に提出する誓約書については、「酒類販売業免許の『人的要件』を深掘り!」で詳しく解説しています。

要件2:【場所的要件】「どこで」売るのか?営業場所のリアルな境界線

2つ目は、酒類を販売する「販売場」についての基準です。税務署では、販売場の位置や区画、他の営業主体との関係などを、図面や契約書等をもとに確認します。

あわせて、販売場とは別に酒類を保管する場合には、その保管場所や物流の流れについても整理しておく必要があります。

ネット通販(通信販売酒類小売業免許)の場合

ネット通販では、実店舗を設けず、自宅を販売場として申請できる場合もあります。ただし、自宅であればどこでも販売場にできるわけではありません。酒類販売業に使用できる場所であるか、販売業務を行う場所をどのように確保するかなどを確認する必要があります。

販売場とは別に酒類を保管する場合

ワインの輸入や卸売では、外部倉庫を利用するケースも多く、到着したワインをどこで保管・管理するのかをあらかじめ決めておく必要があります。

販売場で保管するのか、自社倉庫を使用するのか、あるいは委託倉庫を利用するのかによって、必要となる届出や提出書類が異なるため、事前の確認が欠かせません。

販売場とは別の場所に販売目的の酒類を保管する場合は、蔵置所に関する手続も確認する必要があります。
詳しくはこちらの記事で解説しています。

マンション・賃貸物件で確認したいこと

分譲マンションや賃貸物件を販売場とする場合は、管理規約や賃貸借契約書の内容も確認します。「居住専用」などの定めがある場合には、その物件を酒類販売業に使用できるか、所有者や管理組合の承諾が必要かなどを事前に確認しておくことが大切です。

飲食店に小売を併設する場合の注意点

飲食店に小売販売場を併設する場合は、飲食店として酒類を提供する部分と、小売販売を行う部分を区分し、それぞれの売上や在庫を区別して管理できる体制を整える必要があります。

具体的な区分方法は、店舗の構造や運営方法によって異なります。

物件の契約やリフォームをした後に問題が判明すると、レイアウトの変更や追加対応が必要になることがあります。場所の確保や店舗レイアウトについては、できるだけ早い段階で確認しておくことが大切です。

販売場として認められるための考え方や、自宅・賃貸物件・飲食店などでの注意点については、「酒類販売業免許の『場所的要件』を深掘り!」で詳しく解説しています。

要件3:【経営基礎要件】「お金と経験」は十分に備わっているか?

3つ目は、申請者に酒類販売業を安定的・継続的に経営できるだけの経営基盤や能力があるかを確認する「経営基礎要件」です。財務状況だけでなく、これまでの経歴や経営能力なども確認されます。

資金面―事業を継続できる財務基盤があるか

個人の場合は、預貯金の通帳残高や借入金の状況などで「資金力」が見られます。法人の場合は、最終事業年度の繰越損失や、直近3事業年度における欠損額などが確認されます。

個人・法人ともに、納税状況についても確認されます。なお、人的要件における「滞納処分」と、経営基礎要件として確認される納税状況とは、分けて考える必要があります。

経験・経営能力―適切に事業を運営できるか

酒類販売業を適正に経営するために必要な知識や能力があるかが確認されます。酒類の製造・販売業に従事した経験は、その判断材料の一つになります。

免許申請では、個人の場合は申請者本人、法人の場合は監査役を含む役員全員について、履歴書の提出が求められます。履歴書に記載されたこれまでの職歴や担当業務などは、酒類販売業を適正に経営するための知識や能力があるかを判断する際の資料にもなります。

ただし、法人の役員全員に酒類業界での経験が必要という意味ではありません。これまでの経歴や知識、経営能力などを踏まえ、酒類販売業を適正に運営できるかが確認されます。

酒類業界での経験が十分でない場合でも、それだけで免許を取得できないというわけではありません。
これまでの職歴や経営経験、酒類に関する知識などを踏まえ、酒類販売業を適正に運営できる知識・能力があるかが確認されます。

財務状況や経歴・経営能力について、個人と法人の違いも含めて「酒類販売業免許の『経営基礎要件』を深掘り!」で詳しく解説しています。

要件4:【需給調整要件】免許の種類によって異なる販売上の基準

最後の4つ目は「需給調整要件」です。これは、酒税の保全上、酒類の需給の均衡を維持する必要があるという観点から設けられている基準です。

現在の酒類販売業免許では、通信販売酒類小売業免許で販売できる国産酒類の範囲や、全酒類卸売業免許・ビール卸売業免許の免許可能件数などに、この考え方が表れています。

なお、これとは別に、免許申請では、どのような酒類を、どこから仕入れ、誰に、どのような方法で販売するのかといった事業内容を具体的に説明する必要があります。

免許の種類によって確認内容が異なる

需給調整要件の具体的な内容は、取得する免許の種類によって異なります。

たとえば通信販売酒類小売業免許では販売できる国産酒類の範囲に制限があり、全酒類卸売業免許・ビール卸売業免許では免許可能件数が定められています。

免許の種類によって異なる需給調整要件については、「酒類販売業免許の『需給調整要件』を深掘り!」で詳しく解説しています。

まとめ:まずは自分に関係する要件を確認することから

酒類販売業免許を取得するには、これら4つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 「酒類業界の経験が少なくても申請できる?」
  • 「自宅マンションでネットショップを開業できる?」
  • 「法人が赤字決算だけど大丈夫?」

一見難しそうに見える要件でも、申請者の状況や目指す免許の種類によって、確認すべきポイントは異なります。

まずは、ご自身に関係する要件を一つずつ整理していくことが大切です。各要件の詳しい内容については、個別の記事で解説していますので、気になる項目からご覧ください。

酒販免許の種類や取得要件について知りたい方はこちら

酒類販売を始めたい方に向けて、酒販免許の種類や選び方、取得要件、申請手続きなどを分かりやすく解説しています。


酒類販売業免許の申請では、必要書類の収集や申請書類の作成に加え、販売場や事業計画など、申請内容に応じた準備が必要です。

当事務所では、ワインの輸入・流通に携わってきた行政書士が、販売方法や仕入れ、物流などを伺いながら、実際の事業を見据えた免許申請をサポートします。申請を準備する過程が、これから始める事業を整理する機会になるよう、一緒に考えていきます。


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この記事を書いた人

横浜の酒類販売業免許専門の行政書士。
「桜並木行政書士オフィス」を運営。
20年以上にわたり、ワインインポーターで輸入貿易実務や販促・企画業務などを経験。現場経験と法律の両面からワインビジネスをサポートします。

■保有資格
J.S.A.ソムリエ
WSET® Level 3 Award in Wines

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