- 「海外のワイナリーからワインを直輸入して販売したい」
- 「こだわりのワインECサイトや実店舗を立ち上げたい」
そう考えたとき、多くの方が最初に「ワインの免許を調べよう」とされます。
しかし、実はここに大きな落とし穴があります。お酒の販売免許は、「今、売りたいもの」だけで申請してしまうと、将来のビジネスの可能性を狭めてしまうことがあるのです。
後から「しまった!」と後悔しないために、ビジネスを組み立てる段階で必ず整理しておくべき5つのステップを解説します。
1. 【何を売るか】扱う「お酒」の種類
「本当に輸入ワインだけでいいですか?」
まずは扱うお酒の種類を具体的にイメージします。ここで大切なのは、「将来のビジネス展望」までを視野に入れておくことです。
- 海外のワイナリーから直輸入する「輸入ワイン」だけでスタートするのか
- いずれは日本のワイナリーの「国産ワイン」もラインナップに加えたいのか
- ワインと相性の良い「海外のクラフトビール」や「ウイスキー」も併せて売りたくなる可能性はあるか
実は、お酒の販売免許(特にインターネットで全国に販売する「通信販売酒類小売業免許」など)は、国税庁(税務署)の規定により、扱えるお酒の種類に厳しいルールがあります。申請時に想定するビジネスを念頭に置いて緻密に組み立てないと、「取扱う酒類が限定される(条件が付く)」形で免許が交付されてしまう場合があるのです。
「ビジネスが軌道に乗ったから、次は国産ワインやクラフトビールも扱おう!」と思ったとき、免許の条件に阻まれて売ることができず、再度大変な手続き(条件緩和申請など)を迫られる……というケースは少なくありません。
だからこそ、スタート時点で「先々まで見据えたライセンス設計」が必要不可欠になります。
2. 【どこから買うか】仕入先の想定と「具体性」の壁
お酒の種類が見えたら、次は「どこからそれを仕入れるか」
ここで多くの方がつまずくのが、「ビジネスとしての具体性(確実性)」を国税庁(税務署)に証明しなければならないという点です。
「輸入ワインでスタートして、いずれは国産ワインやクラフトビールも扱うかもしれない。念のため全部盛り込んで申請しよう」ということは、残念ながらできません。税務署に対して、「私たちはこの仕入先から、これこれこういうお酒を実際に仕入れる計画が進んでいます」という客観的な証拠を示す必要があるからです。
その証明として、申請書類に添付を求められるのが「取引承諾書(仕入承諾書)」などです。これは、仕入先となる海外のワイナリーや国内の卸業者から、「免許が取れたら、この会社にお酒を卸します(取引します)」という合意をもらう書類です。
ここで特に注意すべきなのは、以下の実務的なポイントです。
仕入先ごとに書類が必要
「将来的にビールも扱うかも」と申請に盛り込むのであれば、ワインだけでなく、そのビールの仕入予定先からも取引承諾書をもらう必要があります。
海外生産者とのやり取り
海外のワイナリーから直接仕入れる(輸入する)場合、日本の税務署が求める形式の承諾書を現地に説明し、サインをもらわなければなりません。あらかじめ取引先の目途が立っている場合は別ですが、数社に問い合わせて価格表や取引条件を確認したり、サンプルを取り寄せて商品ラインナップや味わいから取引先を検討したりしていると、ここであっという間に数ヶ月のタイムロスが発生することになります。
「仕入先」と「扱う酒類」の完全な一致
承諾書に書かれている内容と、申請書に書くビジネスプランに少しでも矛盾があると、税務署からの厳しい指摘(補正)が入ります。
つまり、将来の展望を広げることは大切ですが、「今、その仕入先と本当に交渉を進められるか?(承諾書をもらえるか?)」という現実的なラインを見極めて、申請の範囲を決める必要があるのです。
3. 【誰に売るか】販売先の形態と免許のルート(後編で詳述)
仕入先の目途が立ったら、次は「誰に(どのようなルートで)売るか」を明確にします。
- 一般の消費者向け(ネット通販や実店舗など)
- 飲食店向け
- 他の酒販業者向け(卸売り)
この「販売先」によって、目指すべき免許の種類(小売業か卸売業か)が完全に分かれるため、ビジネスの根幹となる部分です。
4. 【どこで売る・保管するか】販売場と倉庫の「場所的要件」(後編で詳述)
お酒を扱う「場所」も、税務署が最も厳しくチェックするポイントの一つです。
自宅、賃貸オフィス、外部倉庫、あるいはレンタルオフィスなど、どこを販売場にするかによって必要な書類や物件の契約条件(賃貸借契約書の特約など)が変わってきます。物件を借りる前の段階から知っておくべき注意点があります。
5. 【いくらで回すか】初期の資金計画と「財政的基礎」(後編で詳述)
最後は、ビジネスを持続・運営していくための資金計画です。
酒販免許の審査には「財政的基礎」という要件があり、直近で税金の滞納がないか、ビジネスを健全に継続できる見通しがあるかという、資金的な安定性も審査の対象になります。
前編のまとめ
まずは「何を」「どこから」のすり合わせから
今回は、ワインビジネスを始めるための5つのステップのうち、特にライセンス設計の土台となる「1. 扱うお酒の種類」と「2. 仕入先の想定」について解説しました。
「将来の展望(攻め)」と「手続きの具体性(守り)」のバランスをどう取るか。ここが最初で最大の思案どころになります。
次回(後編)は、残りの3つの要素「誰に売るか」「どこで売るか」「資金計画」について、実務的な注意点とともにお届けします。
もし、「自分のやりたいワインビジネスはどんな形だろう?」と迷われた方は、当事務所の【目的別で探す】もひとつの目安にしてみてください。
酒類販売免許の手続きは、公的書類の収集をはじめ、要件を満たしているかどうかの税務署との事前確認、そして申請書一式の作成など、想像以上に時間と労力がかかります。
当事務所では、ワイン業界に詳しい行政書士が自ら、お客様が本業の準備に専念できるよう、面倒な行政手続きをトータルでサポートいたします。
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